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「時計35」の投稿で、「Swatchgroup」の会長であるニコラス・G・ハイエック氏と「Gérald Genta」の創始者であるジェラルド・ジェンタ氏という偉大な2名が亡くなったという事を述べた。

そして、私が愛読している雑誌「Chronos」(「本」の投稿参照)の最新号を読んで大きなショックを受けた。
また一人私の尊敬する人物がこの世を去った事を初めて知った‥

その人物はジョージ・ダニエルズ氏である。イギリスの時計師であり、「Breguet」研究の第一人者として知られる。そして「DE VILLE HOUR VISION」の投稿でも述べたが、「OMEGA」で採用された脱進機「CO-AXIAL」を発明した、現代の時計師の中でも最も尊敬される人物であろう。

私自身、ダニエルズ氏の時計は憧れの逸品と言えた。
ダニエルズ氏が手掛けた時計か、OMEGAを購入する以外にCO-AXIALを搭載した時計を手にする事は出来なかった。その為OMEGAの功績は非常に大きい。現在では、自社のベースムーブメントとしてDE VILLE HOUR VISIONに搭載されたCO-AXIALを組み込んだ「cal.8500」系の量産に成功し、誰もが手軽にCO-AXIALを手にする事が出来る様になった。今ではCO-AXIALにアニュアルカレンダーやクロノグラフ機能を載せた時計も発売されている。

因みに、OMEGAはCO-AXIALの最大の利点として耐摩耗性に優れメンテナンス間隔が長いと述べているが、個人的には耐摩耗性が高い事は認めるが結局オイルの寿命は変わらないのでメンテナンスの間隔が長いと言える程では無いと思う。(勿論通常のレバー脱進機より短いという事は無いだろう。仮にオイルが劣化せず、消耗するのみであれば、圧倒的にメンテナンス間隔は長くなる筈。)
なので私は、メンテナンス云々より、ジョージ・ダニエルズ氏という現在の時計界を代表する天才が発明した脱進機を唯一手に出来る事自体がOMEGA最大の売りだと思うのだ。

さて、上ではOMEGAが唯一と記載したが、実はダニエルズ氏には弟子の時計師がおり、その弟子が今も独立時計師として同軸脱進機(CO-AXIAL)を搭載した時計を手掛けている。「ROGER W. SMITH」のロジャー・スミス氏だ。独立時計師の作品となるとやはり価格は高額だ。(画像1、2。画像1が表面、画像2が裏面。日本に正式に輸入されている訳では無いが、現在の為替で凡そ800万円程度らしい。)ダニエルズ氏の正統な流れを汲む同軸脱進機を搭載している。雰囲気もクラシカルでイギリスらしさも有る。(私達が手軽に入手出来るのはOMEGAという事は変わり無い。)

ダニエルズ氏の事は残念だったが、今後はOMEGAとスミス氏にはそれぞれのアプローチで同軸脱進機を発展させて欲しいと思う。それが偉大な発明を遺したダニエルズ氏へのオマージュとなるだろう。

今、時計界も世代交代の波が押し寄せているのかもしれない。ダニエルズ氏の逝去を悼み、謹んで御悔やみ申し上げる次第だが、スミス氏を筆頭に新しい力で時計界が更に発展する事と期待している。