「PATEK PHILIPPE」はその代表格で、世代を超えて受け継がれていく時計を作り続けている。
世代を超える、つまり100年以上使用出来る時計という意味でも、こういった時計は素晴らしい。実際、アンティークウォッチには100年以上前に製作されたにも拘わらず、現在も良好に可動するモノも少なくない。
勿論ウォッチ(腕時計・懐中時計等)だけでなく機械式のクロックにも同様の事が言える。こちらはパーツが大きい分腕時計より更に永い寿命を持つだろう。
さて、「本9」の投稿で、「万歳自鳴鐘」という和時計を紹介した。通称「万年時計」と呼ばれる時計である。性能・機能ともに優れた時計であり、和時計の最高峰でも有るが、残念な事に実際に1万年の時を刻む事は無かった。(当時の設計では仕方が無いのだが。)
では、現在の技術の粋を集めて、時計を作ったならどれ位の期間動く時計が作れるのだろうか?
そのプロジェクトを実際に立ち上げたのがスーパーコンピューターの先駆者と言われるダニエル・ヒリス率いる「THE LONG NOW FOUNDATION」である。
そしてそのプロジェクトこそが「The 10,000 Year Clock Project」である。
この「The 10,000 Year Clock」は、全長18mでシンプル且つ極めて精巧に動く機械式時計だ。(画像1~3、プロトタイプ。画像1は本体の画像、画像2は各部機構、画像3はダイヤル機構。本作とは機能が違うらしい。プロトタイプは現在ロンドンの「Science Museum」に展示。)
寧ろ時計というよりは機械式コンピューターと言った方が的を得ている。(成程、確かに機械式腕時計もプログラムによって時刻を表示するコンピューターと言える。)
時刻、日、年、世紀、千年、歳差、太陽系儀、チャイムを備える。
尚、歳差とは、地球の自転軸の首振り運動を表示する機能であり、また、太陽系儀は水星、金星、地球、火星、木星、土星の肉眼で視認できる惑星(及び地球)の軌道運動を表示する機能である。
温度差で動力を巻き上げるとの事らしく「Jaeger-LeCoultre」の「ATMOS」(同名の投稿参照)の様な仕組みを持っているのだろう。
更に、自動で定期的にメンテナンスも行う様プログラムされている。
チャイムは、毎日正午に鳴る仕組みとなっており、毎回異なるメロディを奏でると言う。その種類は350万以上らしい。これも緻密なプログラムに基づき設計されている。これは世界最も遅いコンピューターとの事だ。
この様な機能を備えながら、1万年の時を刻み続ける様に作られた時計である。
尚、アメリカ合衆国ネバダ州のグレート・ベイジン国立公園隣接のワシントン山の地下に設置予定となっている。
(無論致命的な故障やエラーが無ければだろうが。)例え人類が滅んでもこの時計は自身でメンテナンスを施しながらゆっくりと動き続けるのだろう。
私が時計を好きな理由である「憧れ」や「夢」が詰まったThe 10,000 Year Clock。貴方は1万年後の世界に何を見るだろう?私は、このプロジェクトが成功し、この時計が1万年後の瞬間を刻むと信じている。(THE LONG NOW FOUNDATIONのHPのURLは、http://longnow.org/ である。こちらで詳細を見る事が出来る。)
そして、より一層私の周りの時計が愛しい存在だと改めて認識した。これからも共に時間を刻んでいきたいものだ。