と言っても、天符の作成が完了した時点で、9割方は組み立てが終わっているので、後は、仕上げという感じである。
まず、本体に前回完成した天符ユニット、裏板、ぜんまいのねじ巻きを取り付ける。(画像1)
夜用天符を上にして皿ねじ3本で本体中板に固定。(画像2)
ぜんまいに、ぜんまい軸を差し込む。
それから裏板を皿ねじ6本で固定し、ぜんまい軸にねじ巻きを付ける。(画像3)
続いて、天符ユニットの高さを調節する。
マニュアルを見ると、晝(昼)用と夜用の各テンプの軸の下端と盗人金が、連携するという事が解った。
軸についている爪は、通常雁木車と連携して脱進を行う。腕時計でいうアンクルの爪と雁木車の関係である。しかし二挺天符なら、どちらかのテンプを有効とした時、もう一方のテンプを無効にしなければならない。雁木車から先は共同の機構だからだ。
では、どうすれば良いか?答えは、有効で無いテンプの爪と雁木車を切り離すというシンプルな方法であった。
盗人金によって、どちらか一方のテンプを持ち上げ、爪を雁木車と切り離し、もう一方のテンプは自重で下がり、雁木車と爪が連携するという事を行うのだ。
つまり今回のテンプの高さ調節は、晝用テンプが作用している時は夜用テンプが持ち上がって雁木車と爪が離れ、夜用テンプが作用している場合は晝用テンプが持ち上がって雁木車と爪が離れる様にする。テンプの軸がそれぞれ下がった状態で盗人金とテンプ軸下端の幅が約1mm位になる様に糸かけの高さを調整するのだ。
程良い高さになるとちゃんと晝と夜が切り替わる。
最後に、針(時針)を取り付ける。(画像4)
晝用テンプが動いている時は卯の刻から、つまり上半分を指し、夜用テンプが動くのは酉の刻、つまり下半分である。
と言う事は、調度夜用テンプから晝用テンプに切り替わった瞬間が卯の刻となる。
切り替わった瞬間は盗人金が「ガチャリ」と音を立てるので、その時に、三の輪を指で押さえ、針を卯の刻(明六つ)を指す様に取り付ける。
現在の定時法と照らし合わせると、卯の刻である夜明けは、「日の出」の35分前、酉の刻である日暮れは「日の入り」の35分後となる様だ。
正しい和時計で在れば、その晝と夜の時間を計算しなくてはならないのだが、そこは私、テンプの調速も、晝夜の切り替わりも適当だった。
とりあえず、これで二挺天符式和時計の完成である。(画像5、6。画像5は実際に動かした状態、画像6は側面。)
明け方頃に晝用テンプ切り替わって、正午頃に真上位を指し、夕暮れ時に夜用テンプに切り替わり、日付が変わる頃に真下位を指したが、数日で狂ってくる。
当然、日々昼夜の長さは変化するし、テンプの調速も晝夜の2つ分が正しくないといけないので難しい。
結局、私は二挺天符式和時計でありながら、テンプの速度を同じ位にして、普通の定時法の時計と同じ様な使い方をする様な調整の仕方になった。(ギミックのみで二挺天符が全く無意味‥)
それにしても、このテンプが奏でるチクタクというゆったりとしたリズムが何とも心地良い。時計で有りながら時に縛られるのが愚かしく感じる程、まったりとリラックスした時間が流れる。
考えてみると、現在採用されている会社も多々有る「サマータイム」の様な生活はこの不定時法に近いのではないだろうか。(厳密には違うが。)明るくなれば仕事を始めて、暗くなれば家で休む。そんな当たり前の自然な在り方。忘れていた何かを思い出させてくれる付録だった。