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「Antiquorum」。相当の時計好きで無い方には聞き慣れない名前かもしれない。
Antiquorumは1974年にジュネーブで創業した、時計専門のオークションを取り仕切る会社である。現在は世界の主要都市に支店を持ち、年間約10回のオークションを開催している。

世界でも愛好家が垂涎する様なユニークピースやアンティーク等貴重なモデルが取扱われる。中には博物館クラスの逸品が登場する事もしばしば有る。
当然落札価格も尋常では無い。有名なところでは、「PATEK PHILIPPE」の「1415HU」(画像1)が約5億円、同じくPATEK PHILIPPEの「Calibre 89」(画像2。左右は同一の物で、表と裏の文字盤である。)が約6億円で落札されて話題となった。

こう見るとオークションでは、世界3大時計ブランドの中でもやはりPATEK PHILIPPEが強いという印象が有る。製作された年代に拘らずちゃんと資産としての価値が有ると認められている様に感じる。

PATEK PHILIPPEとは少々違い、アンティークモデルが非常に人気を博しているのが私の好きな「Breguet」である。(PATEK PHILIPPEはアンティークのみならず現行でもプレミアの付くモノが有る。)
特に初代アブラアン・ルイ・ブレゲの作品は贋作も多く、真偽を見分けられないレベルのモノが多いが、本物と確定したモノは高額で取引されている。「時計15」の投稿では、ナポレオン・ボナパルトの第1婦人であるジョゼフィーヌの時計が1億4300万で落札された事を述べた。

そして9月17日にニューヨークで開催されるAntiquorumのオークションでも沢山の時計が出品されるが、特に目を惹いたのはBreguetのクロックであった。
それが、「Breguet 癸押廖「Pendule sympathique(パンデュール・サンパティーク)」、通称シンパティックと呼ばれるクロックである。(画像3)

シンパティックは、1795年にBreguetの祖であるアブラアン・ルイ・ブレゲが発明し、1798年に初披露された。同調機能を有するクロックとウォッチのペアである。
同調機能とは、クロックにウォッチを設置する台座が設けて有り、ウォッチを設置すると、クロックが指し示す時間に自動的に合わせる機能である。現代的解釈をすると電波時計の様なモノを想像して頂くと良い。電波の発信源がクロック、電波の受信が台座にウォッチを設置した状態という感じだ。
これを歯車やゼンマイのみで行っているのだから恐れ入る。どうやって正確に同調を行っているのか、仕組みは私も解らない。
更にこれが発展し第2世代となると、設置する事で同調並びにウォッチのゼンマイの巻上げが可能となり、そして1991年に誕生した第3世代では第2世代の機能に加え、ウォッチが懐中時計から腕時計へと小型化された。

今回出品されるBreguet 癸欧蓮◆Tiffany & Co.」とコラボレーションの様だ。1996年製の第3世代のシンパティックである。
クロックはパワーリザーブは8日でアニュアルカレンダー、ムーンフェイズ、バイメタル温度計、イクエーションオブタイム、パワーリザーブインジケーター、ルモントワールを備えているらしい。
ウォッチは、レギュレータートゥールビヨンでパワーリザーブインジケーターが付いている様だ。

機能だけを見ると究極の実用時計だが、悲しいかな、価格が余りに高額な事と繊細過ぎて故障しやすいらしいので、実はあまり実用には向いていない。
まあ実用云々はさて置き、癸欧魯▲屮薀▲鵝Ε襯ぁΕ屮譽欧療刑妖発明のひとつを形にした逸品という事は間違い無い。この時計がいくらで落札されるのか非常に興味深い。

私はシンパティックを見た事が無いのだが、実は日本にもシンパティックが展示されている博物館が有るらしい。いずれはその博物館も訪問してみたい。