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毎度の某宝飾時計店で催されたフェアに行って来た。
今回は、「SEIKO」の高級時計ブランドである「Grand Seiko&CREDORフェア」であった。(画像1)
今回は「日記6」の投稿で紹介した「CREDOR SPRING DRIVE SONNERIE」や「CREDOR NODE 叡智」(同名の投稿参照)といった言わばSEIKOの究極のモデルは見る事が出来なかった。

何と言っても今回のメインは「CREDOR」ではなく「Grand Seiko」であったからだ。
今回の目玉は岩手県のに有る「雫石高級時計工房」の大平晃氏が来場しGrand Seikoの新作「MECHANICAL HI-BEAT 36000」(画像2、3。画像2は表面、画像3は裏面。)のムーブメントであるCal.9S85の分解・調整・組み立ての実演を見る事が出来るのだ。(画像4、Cal.9S85の分解展示。画像5、Cal.9S85の大型デモンストレーションムーブメント)

会場内は思った以上に来客が多くかなり混雑していた。実演を見に来た方が殆どである。
時計製作の実演をマイクロスコープにて拡大して全員に見える様にしてあり、同時にCal.9S85の優れている点、開発された理由等の特徴を細かに説明して頂いた。

私にとっては殆ど、知っている知識で少々退屈であったが、逆にあまり詳しくない方には難しい内容にも感じられるので丁寧で判り易い説明をされていたと思う。

さて、まずはその新作であるCal.9S85について私の意見を述べよう。はっきり言うと個人的にはあまり魅力を感じないのだ。何故か?
まずその前に実用時計とそうでない高級時計を考えて頂きたい。Grand Seikoは実用時計であり、CREDORは高級時計とか呼ぶのが相応しいだろう。(実際にSEIKOでもGrand Seikoは実用時計の最高峰、CREDORは特選腕時計と位置付けている。)
実用時計とは精度や強度を追求したモノで代表格が「ROLEX」であろう。正確な時間と対衝撃、耐水、耐磁等に優れた時計であろう。
確かに、ケースも優れているし精度も良い。気兼ね無く使う時計という意味でも適していると思う。

勿論私にも実用時計というジャンルは必要だ。唯、実用を主に考えるのであれば別に機械式時計を選ぶ必要が無いと考えてしまう。何せクォーツの方が高精度だからだ。

雑誌「Chronos」等ではハイビートは外乱に強いし、当然刻みが細かくなる為精度が安定すると有る。今回のMECHANICAL HI-BEAT 36000は36000bph、つまり1時間に36000回チクタクと振動する。私の時計はロービートと言われる21600bphなので、随分と差が有る。しかしクォーツは32768回の振動を1秒で行う。精度が安定するのは当たり前なのだ。つまり実用を重視するならクォーツがベストでは無いだろうか、と私は考えている。
では、逆に機械式時計には何を求めるか?それは工芸美であったり、歴史に裏打ちされた伝統であったり、職人の作り込みであったり‥と実用が中心ではなく、その時計というモノにどれだけの満足感が得られるか、だと思う。またロービートの方が、精度の調整が当然シビアなのでその点も職人の手仕事に掛かっているというのも良い。

SEIKOでは、10振動のハイビートにするに当たってデメリットとなる動力源と耐久性の問題を解決する為、強力な動力ゼンマイ(画像6、新材料によるゼンマイの説明)とMEMSという鍍金を繰り返して成形する技術を用いたガンギ車とアンクル(画像7、MEMSによるガンギ車の説明)を新たに開発した。これで時計として相応しい性能を有する事が可能になった点は評価出来るが、この技術を従来の機械式時計に応用すれば更に高性能になると考える。ハイビート化とどちらが魅力だろうか?
そして、SEIKOでは既に限定では有るが12振動というもう一つ上のモデルを発表している。どうせSEIKOの技術を世界に知らしめるならこの12振動を量産して欲しかったと思う。12振動は現在SEIKOと「AUDEMARS PIGUET」のみで、モデルの発表はSEIKOの方が早い。初の量産となればちゃんと日本の技術のアピールになると思う。このMECHANICAL HI-BEAT 36000がこの為の布石だと信じたい。

とまあ辛口な意見だが、時計としてはMECHANICAL HI-BEAT 36000も十分素晴らしい完成度だ。唯、私がGrand Seikoで選ぶならSPRING DRIVEかCal.9F67の8振動の機械式、またはクォーツになると思う。

そして、大平晃氏の実演作業が始まる。次回に続く。