元々私は、ドレスウォッチが好きである。デイトも無いシンプルなモデルで、ムーブメントが個性的なモノや複雑なモノに魅力を感じるのだ。
夏時計に選択した時計自体そうだが、実はあまり興味が無かったジャンルなのである。(ただし「PATEK PHILIPPE」の「Nautilus 5712/1A」のムーブメントやJaeger-LeCoultreのアラームムーブメントに関しては別である。)
特にダイバーズウォッチは全く興味の外であった。私が海に潜る事が無いのが最大の理由だが、時計としても私にとっては面白味に欠けたのだ。
如何に堅固であろうとも、サイズが大きい(私にはあまり似合わない)、シースルーバックでは無いからムーブメントも見えない、フォーマルでは使えない、との理由である。
しかし、「Breguet」の「TRADITION 7027」というカジュアルは勿論ビジネスやフォーマル(慶弔時)でも通用する有る意味オールマイティな時計と「PIERRE KUNZ」の「CUPIDON」というカジュアルのみならずパーティ等でも強い存在感を持つ時計を持っている。
ドレスコードが有る場ならどちらも十分相応しい存在だと思う。
だからこそ、初めてダイバーズという時計に興味が沸いたのだろう。私が持つ時計には無いモノを持っている様な気がしたのだ。
それは、今までそれ程意識していなかった「ケース」に対する拘りである。Breguetのケースの装飾コインエッジ等は確かに美しい。しかし、水気を嫌う時計を水中で使用するという無謀な挑戦から生まれたダイバーズのケースはやはり、機能に基いて作られた機能美に溢れたモノには違い無い。装飾とは違うモノだ。
ムーブメントに関しても全く興味が無かったのだが、ここ数年は違う。BLANCPAINはFIFTY FATHOMSにオリジナルの新型ムーブメントを搭載してきたし、Jaeger-LeCoultreも「ATMOS」(「ATMOS」の投稿参照)の機構を応用した水深計を持った「Master Compressor Diving Pro Geographic」(画像参照)を発表したりと、マニュファクチュールらしい独自性の有るムーブメントを開発している。
という訳で、気になった「ダイバーズウォッチ」について少し調べてみた。
ダイバーズウォッチとは元来明確な規定が無かったのだが、「SEIKO」が自社のダイバーズウォッチに設けた規格がJIS及びISOになったと言う話だ。
日本(JIS)では分かりやすく言うと、「BAR」表記は防水時計だが、ダイバーズウォッチではない。ダイバーズは「m」表記がなされている。
では、ISOに基くダイバーズウォッチの国際規格を列記しよう。
ISO6425
1.定義 ダイバーズウォッチは少なくとも水深100mの潜水に耐え、且つ時間を管理するシステムを有する時計をいう。
2.要求事項 ダイバーズウォッチとして次の性能を有している事が要求される。
・回転ベゼルまたはデジタル表示装置のような「タイムプリセレクティング装置」を備えており、不慮の回転防止又は誤作動防止が施されていること。回転ベゼルの場合は60分まで設定出来る目盛が有り、5分毎の目盛については特に目立つものであること。
・次の表示については、暗所においても25cmの距離から目視可能でなければならない。
*時刻表示(分針は時針よりも、遥かに見易くなくてはならない)
*タイムプリセレクティング装置のセット時刻
*腕時計が動いている事を確認出来る表示
*電池駆動の腕時計においては、電池寿命の表示
・規格ISO764の規定に従い、ダイバーズウォッチは耐磁性を有していなければならない。(3の試験参照)
・規格ISO1413の規定に従い、ダイバーズウォッチは耐衝撃性を有していなければしていなければならない。(3の試験参照)
・耐塩水性試験を行った後、ケース又は付属品に重大な変化が認められず、可動部分は正常に機能し続けなければならない。
・水中試験においてタイムプリセレクティング装置及びランプのスイッチ等、水中で機能する機構は正常に作動しなければならない。また凝縮試験でガラスに曇りが認められてはならず、機械的機能に異常が有ってはならない。(水中における信頼性試験)
・付属品の耐外力性試験を行ったとき、時計部品のいずれもが外れたり、位置ずれを起こしてはならない。竜頭及び他の操作部材の耐外力性試験を行ったとき、凝縮試験でガラスに曇りが認められてはならず、腕時計は正常に機能しなければならない。
・耐温度衝撃性試験を行ったとき、凝縮試験でガラスに曇りが認められてはならず、腕時計は正常に機能しなければならない。
・空気加圧での気密性試験を行ったとき、50μg/minを超える空気流量が有ってはならない。
・水中加圧での水密性試験を行ったとき、凝縮試験でガラスに曇りが認められてはならず、腕時計は正常に機能しなければならない。
・混合ガス潜水用の時計は、付属書(今回は割愛させて頂く)に規定の混合ガスを含む大気強度試験を行い、機能異常が無い事を確認しなければならない。
3.試験 ダイバーズウォッチとして、次の試験を行い性能を検査する。
・タイムプリセレクティング装置:耐塩水性試験と、水中における信頼性試験において機能異常がないか試験する。
・視認性試験:拡大器具を使用せず目視により検査する。
・耐磁性試験:規格ISO764の規定に従い、直流磁界4800A/mで止まりの有無、残留影響を検査する。
・耐衝撃性試験:規格ISO1413の規定に従い、1mの高さから自由落下衝撃(シャルピー試験機による)で機能異常が無いか試験する。
・付属品の耐外力性試験:バンドを締めた状態で、バンド部に200Nの外力を加える。
・空気加圧での気密性試験:△p=2barの空気加圧を行い、その時計内に進入する空気の流量を調べる。
・耐塩水性試験:30g/ℓの塩化ナトリウム水溶液に浸し、18~25℃で24時間保持する。この試験後、ケースと付属品について、錆び等の変化を検査する。可動部分特に回転ベゼルは、その機能の正常性を検査する。
・水中における信頼性試験:18~25℃で水深30±2cmの水中に50時間浸漬させる。全ての機能が正常に作動するかどうかを試験する。その後凝縮試験で検査する。
・耐温度衝撃性試験:水深30±2cmで40℃±2℃10分間、5±2℃10分間、40±2℃10分間の試験を行い、凝縮試験で検査する。
・外部操作部の耐外力性試験:(L+0.25L)/10barの加圧水中で外部操作部材に5Nの外力を加えた状態を維持し、凝縮試験で検査する。
・水中加圧での水密性及び強度試験:△p=(L+0.25L)/10barの加圧を2時間、次に0.3barの加圧を1時間行い、凝縮試験で検査する。
・凝縮試験:40~45℃の熱鉄板上に時計を載せ、ガラス面に18~25℃の水滴を垂らし、1分後水滴を拭き上げ、ガラス内の曇りの有無を確認する。
4.表示 ダイバーズウォッチの表示は次の通りとする。他の言語による同等用語も許容される。
・英語:diver's watch Lm(Diver's Lmも可)
・仏語:montre plongeur Lm又はmontre de plongée Lm
以上である。
何だか妙に難しい内容になってしまった。次回に続く。