Baccaratは1764年にフランスで創業したクリスタルブランドである。当時のフランス国王ルイ15世は、バカラ村にガラス工房設立の許可を出し、Baccaratの歴史がスタートした。
ルイ18世からグラスの注文を受け、以来Baccaratはフランスを代表するクリスタルガラス工房として名を馳せた。
メインはグラスを筆頭としたホームウェアだが、家具等室内装飾品でも有名だ。更にビジュー等のアイテムやオーナメントにも力を入れ、クリスタルガラスの美しい輝きをあらゆる方面で商品化している。
フランスのトラディショナルな生活様式が著名なアーティストによって洗練された作品に生まれ変わり、世界中の人々を魅了する至高の美しさを持つ日常生活品に昇華させた。「フィリップ・スタルク」を筆頭に、様々なアーティストが創造した作品は「Art de Vivre collection」として私達を楽しませてくれる。(フィリップ・スタルク氏の作品は主に「DARKSIDE collection」である。)
そして、Baccaratの代名詞とも言える最も有名なグラスこそ、私が「東京旅行11」の投稿でいずれ欲しいと述べた「HARCOURT」である。(画像1)今回機会に恵まれ、1客だけだが購入させて頂いた。
HARCOURTはアルクール伯爵に依頼され1841年に完成し、現在もBaccaratの定番のモデルとして人気を博している。(HARCOURTの名前は依頼主である伯爵の名前である。)広く平らにカットされた6面の側面と構築的なデザインが特徴。6面が流麗な模様を創り出している。真上から見ると、その6面のカットが花弁や雪の結晶を彷彿とさせるパターンを描く。(画像2)
HARCOURTはシリーズとして様々なグラスが存在するが、中でも私が購入したワイングラスは、形状が聖杯に酷似しているという事から、1917年、ローマ法王ベネディクト15世の意向によって、バチカンの教皇庁に正式に採用されたという。
聖杯とは「Chalice」、つまり伝説にも上がる聖遺物として名高い「Jesus Christ」の「最後の晩餐」で使用された杯の事である。ホーリーグレイルとも呼ばれる。
これに由来して、キリスト教では最後の晩餐に倣って「聖餐」という儀式を行う。聖餐時に使用する杯も当然Chalice、つまり聖杯(聖餐杯)である。
HARCOURTは形状そのものが、既に宗教的にも格式が高く、気品に満ちていたという逸話であろう。
しかし、何度もブログで述べているが、私はアルコールが苦手なので、ワイングラスとしてHARCOURTを使用する事はまず無いだろう。容量もMILLE NUITSとは比べ物にならない程少ない。しかも1客しかないので、今のところは完全なインテリアでしかない。しかし存在感は十分だと思う。
フィリップ・スタルクのDARKSIDE collectionはHARCOURTを基に創られる作品が殆どである。暗黒面と称するその前衛的なコレクションは、宗教的には少々冒涜と考えられるかもしれないが、デザイン、アイデアは本当に秀逸だ。画像3は「HELL」、画像4は「AÏE」、画像5は「BLACK ANGEL」、画像6が「UN PARFAIT BOXED SET OF 6 BLACK GLASSES」である。
「B bar Roppongi」は今年5周年を迎える。5周年を記念して発表されたオリジナルカクテルが「LUX!」である。(画像6)これもグラスにHARCOURTを用いている。Baccaratの「光」と「煌き」の象徴であるシャンデリアの輝きをイメージしたらしい。アニスとマンダリンの香りのコントラスト、ほろ苦い甘さのハーモニーが楽しめるそうだ。アルコール好きの方は是非。