コメントによると、女性陣は「MARINE」コレクションが好みのようだ。確かに従来のBreguetの意匠を取り込みつつスポーティでフレッシュな感じが良い。私自身デザインは非常に気に入っている。
男性陣は逆に「CLASSIQUE」コレクション(TRADITION含む)が好みのようだ。こちらはデザインは勿論だが、やはり「Breguet」という時計ブランドに対する各々の価値が付与されるのだろう。歴史を感じさせる作り込みもCLASSIQUEならではだろう。見た目だけでなく手間を惜しまない作りこそに魅力があると思うのだ。
そして私は男性だった。デザインだけでなくムーブメントや歴史、Breguetの持つ意匠には抗えられない魅力がある。
たとえ現在のBreguetが「SWATCH GROUP」であったとしても、アブラアン・ルイ・ブレゲが発明した数々の意匠は脈々と受け継がれているのだ。
よって私の中での候補は「CLASSIQUE 5207」、「CLASSIQUE 5237」、「TRADITION 7027」に絞られた。
(MARINEは私が金持ちであれば即購入しただろう。それ程デザインは申し分無い。しかしムーブメントや値段を考慮すると・・私にとっては高額な商品であった。残念である。)
候補の内のCLASSIQUE 5237は古典的クロノグラフの中でもトップクラスの美しさだと思う。シースルーバックから覗く「Lemania 2310(ベース)」もクロノグラフムーブメントの傑作のひとつだ。プッシャーの手応えも良いし、複雑に絡みあうパーツは時計という小さな宇宙を感じさせてくれる。
・・しかし、それだけあってこの時計は私の候補の中でも最も高額である。またOHも10万円を超えるという話である。流石に今Breguetのクロノグラフには手を出せる余裕が無い。貧乏が恨めしい。
という訳で価格・OHも考慮に入れると残るは、CLASSIQUE 5207とTRADITION 7027である。
この2つはどちらも甲乙付け難い魅力を持っている。
CLASSIQUE 5207はシンプルなBreguetフェイスだが他にはない独特のエキセントリックダイヤルであり、派手ではないのに強烈な個性と存在感を持っている。機能もパワーリザーブインジケーターとレトログラード秒針という時計好きには堪らない組み合わせ。それを中央に一直線上に配置する事で複雑な機能ながらも上品で見やすい配列に仕上がっている。因みに文字盤をオフセンターに配置するエキセントリックダイヤルも往復運動を行うレトログラード機構もブレゲ氏の発明であり、このダイヤルも「癸横沓牽機廖焚菫釭院謀銈らインスピレーションを受けて作られたのだろう。(詳しいモデルは解らないが。)
TRADITION 7027は「Souscription」と呼ばれたブレゲ氏の時代の時計にインスピレーションを受けて誕生した。
基は貴族ではなく比較的大衆向けに作られた時針のみの1本針懐中時計で、時計注文時に価格の一部を支払い、商品受け取り時に残りを支払うという頭金のような独自の予約システムで販売された時計である。
当時は、時計製作を依頼され完成させても代金を全額貰えず踏み倒される事が多かったと聞いた事がある。その為このようなシステムを考案したのだろう。
この時針1本針は「モントレ・ア・タクト」と呼ばれる触って凡その時刻を知る事の出来る機構に生かされている。(「フォーマル2」の投稿参照)「癸僑牽后廖焚菫釭押砲惑慳未縫皀鵐肇譟Ε◆Ε織トを備えた懐中時計である。表面はオフセンターでスモールダイヤルの時分針を持つ。
このスモールダイヤルとムーブメントの配置がTRADITION 7027で再現されているのだ。
センターバレルにシンメトリームーブメント、パラシュート、ブレゲひげゼンマイ、バイメタル切(風)フリースプラングテンプ、グルネイユ‥
時計に興味が無い方には全くどうでも良い事柄を並べてみたが時計好きだったら本当に堪らない。また興味が無い方でも時計の動きが手に取るように解るので見ていて飽きない。
欲を言えば背面にモントレ・ア・タクト風の1本針を設けて頂きたかった。私にとってはグッと魅力が増す。
CLASSIQUE 5207もTRADITION 7027も値段を考えても損は無い時計だと思える。時計の歴史を2世紀早めたと云われるブレゲ氏の伝統を感じさせられる逸品だ。非常に悩んだ。
次回、購入した時計を紹介したい。