実際の献体を利用した賛否両論の展覧会で有名だ。
この献体は何処までI.C(Informed Consent=説明と同意)がなされているのか不明であったり、献体を医学の発展に利用しているというよりは展覧会という金儲けに利用していると取られても仕方が無い。
どうしても医学と倫理は隣り合わせであり、今までも多くの議論がなされてきた。献体をお金を取って不特定多数の方に見せるのは倫理的にどうなのだろうか。例えば貴方の身内が献体となって皆の前に晒されるのは耐えられるだろうか?
しかし医学は医師の知識技術が上達しただけでは限界があるとも思う。私達が、自分の身体を熟知し健康を心掛ける事が一番重要だと思う。
という訳で、否定意見もあるが、知識として見ておいて損は無いと考え、人体の不思議展を見に行ってきた。
ここに展示されている人体は全てプラストミックという加工を施してある。ホルマリン等に代わる最新技術の画期的な保存法で、身体を構成している水分と脂肪分をプラスチックなどの合成樹脂に置き換え、顕微鏡レベルでの細胞組織の構成を殆ど保ったまま標本を作製する事が可能。
匂いも無く弾力性に富み、直に触れて観察する事も可能。更に常温で半永久的に保存出来るらしい。正式な名称は「Plastination」という保存法である。(プラストミックは人体の不思議展のみの名称である。)
入ってすぐにプラストミック加工された全身標本が並ぶ。筋肉、骨格、血管、臓器。それらが私達の目にも解りやすく展示されている。
確かに臭いは無く、ミイラのような乾いた感じも無い。
各パーツに細分された標本や、病気に侵された部位の標本等も展示。確かに勉強にはなる。
ちょっと見るに耐えれなかったのは、胎児の標本だった。
話は変わって、この展覧会で嫁が脳年齢と骨密度の検査を実施した。(無論有料。)
結果、30歳の嫁の脳年齢は22歳であった。「人並み以上の若さを保っている脳」と診断され非常に喜んでいた。
骨密度については「骨密度指数(スティフネス値)」が79であった。骨の丈夫な20歳の平均値に比較すると87%に相当、同年齢の平均値に比較すると88%に相当。少し骨密度が減少しているようだ。
私は興味が無かったので調べなかった。
私がこの展示会を見て感じた、人間とは、命とは、からだとは・・はっきり言って答える事が出来ない。永い年月を掛け進化した生物の一つとしての完成度の高さには驚いた。自然によって成し得た結果か、はたまた神の気紛れで作られた偶然の産物かは解らないが。
勉強になった事は多い。人体を走る動脈を理解すれば止血等には役立つだろう。口から肛門までの消化器官を知っておれば、胃潰瘍等の病気についても理解が深まる。臓器の位置を把握しておれば、急な腹痛の原因も解る場合がある。スポーツ選手なら、筋肉の効率良い使い方等にも生かせるかもしれない。
この展覧会を見た方は結構多いだろうが、見られた方は皆心肺蘇生法は正しく行えるだろうか?前に取り上げた「AED」は正しく使用出来るだろうか。
最低限、心肺蘇生法位は知っておいて貰いたいと思う。それが、献体を利用して人体の不思議を目の当たりにした者の責任ではないだろうか。
心臓の形を見て、心臓の位置を見る。どうして胸部の左側ではなく胸骨を圧迫するのか理解出来るはずだ。
私も折角見た貴重な標本を、唯の興味で終わらせるのではなく、生かしていきたいと思う。
画像1 標本9種
画像2 富山展チケット
画像3 嫁の脳年齢及び骨密度結果(写真サイズは大きいので注意)
画像4 富山展広告