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さて、前回述べたとおり今回は自動巻き機構の組み立てだ。

「自動巻き地板」に2種の「伝え車」と2種の「切替え車」を配置する。
「自動巻き受け」でその4枚の歯車を固定する。
これが写真1。裏返すと写真2である。

これによって初めて判ったのだが、「ETA2824-2」の自動巻き機構には切替え車を用いる方法を選んだようだ。
私もさして詳しくないのだが、自動巻き機構にはこの「切替え車」を用いた機構以外に「ツメレバー」を用いた機構や「遊動車」を用いた機構等様々な機構が存在する。
思い出してみると、「ORIENT」の製作時(「精工堂チャレンジキット その3」の投稿参照)はツメレバーを用いていた。ORIENTとETAは自動巻き機構に採用した機構も違うという事が判った。
無論、私程度の知識では機構に対する優劣は判らない。

切替車は、逆方向の力が加わると下の歯車が空回りする構造になっているらしく、常に一定方向しか下側の歯車に力を伝える事ができないようになっている。これによって、ローターが正回転でも逆回転でも同方向に力を伝える事ができ、ゼンマイを巻く事ができるという事だ。

因みに、ORIENTでつかわれていたツメレバーは「SEIKO」が考案したマジックレバーと呼ばれるモノだと思う。歯車をはさむ様にツメを配置するのだが、左右どちらに加わった力でも、片方のツメが滑り、もう片方のツメは歯車を回す事ができる様になっているので、ローターが正回転でも逆回転でもやはり同方向に力を伝える事ができるのだ。

それにしても文章では説明が難しい。詳しく知りたい方はやはり実際に時計を組み立ててみるか、時計に関する書物を読むしかないかもしれない。

裏返した写真2の状態を本体に取り付ける。ちょうどテンプの上に収まる。この状態が写真3。
本当はこのまま地板を裏返し、文字盤面の製作に移るのだが、今回は自動巻き機構の組み立てという事で先にローターも取り付ける。自動巻き地板中央の穴が丁度ローターの取り付け位置となる。ローターを取り付けネジで固定した状態が写真4。
これで自動巻き機構の完成だ。

このように構造は比較的簡単な自動巻き機構だが、動く事で絶えずゼンマイを巻く為、巻き過ぎにより破損する事がないよう、各ブランドはその調整に心血を注いでいる。
香箱内のゼンマイは一定以上巻かれるとゼンマイがそれ以上巻かれないように滑って負荷がかからないようにするリミッター機能が備えられている。自動巻きの時計を竜頭で巻く場合はどれだけでも回せるのはこの為。手巻きは一定以上巻くと抵抗があり巻けなくなるものが殆ど。(巻き止まりの有無で表現される。)
そのリミッターの匙加減が難しいらしい。ゼンマイが滑りすぎるとゼンマイの巻き上げ効率が下がり、動力不足で時計の動く時間も短くなり精度も落ちる。しかし、ローターの動きを完全にゼンマイに伝えると巻き過ぎて、ゼンマイを切ってしまう。普段はしっかりゼンマイを巻かないといけないが、ゼンマイがいっぱいに巻かれた状態では、ゼンマイをこれ以上巻けないようにしなくてはいけないのだ。これには特殊なグリスを塗布しているそうだが、永年の経験がものを言うのだろう、技術者のノウハウがあってこそより効率の良い、壊れない時計が完成するのだ。
私は唯組み立てるのみでオイル塗布を行っていない。組み立て以外にも時計には職人の技が至る所に溢れているのだ。商品として売り出すには組み立てるだけでは全然足りないと理解した。

次回ムーブメント完成予定。