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「精工堂チャレンジキット(その1~その5)」の投稿でORIENTの腕時計を製作したが、いよいよ残っていたもうひとつのチャレンジキット2の組み立てを開始した。
前回のムーブメントが入門編であれば、今回のムーブメントこそが基本編である。
「ETA2824-2」。現在、スイスメイドの腕時計で最も多くのメーカーに利用されているベースムーブメントのひとつがこれである。
時計のムーブメントを制作する上で重要なポイントがいくつかある。当然汎用性が高いものが良い。希少性を求めるユーザーには有難味が無いのであまり好かれない理由になるのだが、エボーシュとして他社に供給できる量産品も必要なのだ。汎用性が高いという事はベースとして優秀でなければならない。そしてそこから各メーカー毎に様々なオリジナリティを付与できる発展性も持っていないといけない。
また量産するからには、個々のムーブメントの性能のばらつきが少なく安定した品質を保てるという点、それを安価で行えるという点も大事なポイントだと思う。
希少性の高いマニュファクチュール(完全自社製作)のムーブメントは、その作り込みや開発した技術等私達を楽しませる要素が多い。しかし当たり前だがその分開発に費用が掛かる。メーカー独自の不具合が発生する可能性もある。そしてムーブメントのパーツが独自のモノであれば、故障した際に修理もままならない。それ故高価で維持にも金が掛かる。エボーシュメーカーのムーブメントは、広く利用されるだけの信頼と、豊富なパーツが存在する。修理やOHが容易に行えるのだ。
ETAというメーカーはこれらの点が非常に優れている。このメーカーが無かったら時計を製作できないブランドも多いだろう。また自社製作を余儀なくされ、時計の金額が上昇する。比較的安価で購入できる時計が無くなる可能性もあるのだ。(現在、この問題が実際に起こりうる状態らしい。ETAのムーブメントをSWATCHグループ以外には提供しないという話が出ている。)

ETA2824-2はETAのムーブメントでも最も多く利用されているのではないだろうか?3針のセンターセコンドでデイト表示。腕時計で最もよく見るスタイルなのだ、当然かもしれない。(確証はないが。)

さて、前回のORIENTのムーブメントは3針センターセコンド・ウィークデイト表示。今回のETAは3針センターセコンド・デイト表示。ORIENTの方がウィーク表示がある分難しいのでは?と思ってしまうが、やはりETAの方が難しい。ORIENTは、ローターでゼンマイを巻き、竜頭で時刻を合わせるという時計だった。ETA2824-2はローターは勿論、竜頭でもゼンマイを巻く「手巻き」が可能なのだ。この手応えこそ機械式時計にしか存在しない味であり、時計に命を吹き込む作業でもある。哀しいかな、前回のORIENTのムーブメントにはこれが足りなかった。
(余談だが精工堂のHPを見てみると、ORIENTのムーブメントを手巻き、シースルーバックに改造するキットを開発中との事。これは嬉しい。是非販売して頂きたい。URLはhttp://www5.ocn.ne.jp/~seikodo/index.htm

ではそろそろ組み立ての内容に移ろうと思う。
写真1と2がETA2824-2の地板(表と裏)である。前回同様、既にルビーが埋め込まれている状態なので、必要な作業は組み立てだけである。これに歯車等を配置していく。この穴や丸く削った所に綺麗にパーツが収まるよう設計されている。これによって、歯車等が巧く重なり、時計の厚みを減らしたりパーツとパーツが接触しないようになっている。組み立てる際に何処にパーツを配置すればよいかも解りやすい。

写真3がキチ車とツヅミ車を重ねたもの。極小の歯で噛み合うようになっていた。サイズ比較に横に1円玉を置いてみた。豆知識だが1円玉の直径は2cm、重さ1gである。

キチ車とツヅミ車を重ねたまま地板に置き、その中に竜頭の巻き真を差し込む。一番初めの作業だが、これがまた難しい。キチ車とツヅミ車が巻き真に当たってずれるのだ。何度も置き直してやっと通る。

小鉄レバーを置き、小鉄レバーの突起に合うようにオシドリを置く。綺麗に合うと竜頭とオシドリもピッタリ合う位置に収まる。続けてカンヌキを置く。カンヌキの細くなった部分がツヅミ車の溝に綺麗に嵌るように。
裏押さえを置いてネジで固定する。これも難しい作業だった。
重なる巻き真・ツヅミ車・小鉄レバー・オシドリ・カンヌキに更に裏押さえを重ねて、それらを固定するのだが、重ねてネジを回そうとすると、下のパーツが動き、正しい位置からずれるのだ。何度も置き直してやっと固定完了。裏押さえとオシドリの突起が綺麗に合い、カンヌキが遊ばないよう、カンヌキと裏押さえが重なっている端の部分を下へずらす。これで竜頭が2段引きできるようになる。
写真4が裏押さえを取り付けた状態である。この写真ではツヅミ車が見えないが、カンヌキを指している赤線の裏にある。

今回はここまで。巻き真の固定の時点で既にかなり難易度が高いと感じた。また今回付属してきた組み立てマニュアルだが、ORIENTのマニュアルより内容が荒い。進みが非常に早いのだ。ORIENTを組み立てているからなんとか解るが、ETAから挑戦していたら理解できず組み立ては不可能だと思う。(私の脳では。)
ORIENTを作った事が無駄でなかったのはマニュアルを理解できた事だけではない。ピンセットでパーツを持ったり、精密ドライバーでネジを固定したりする操作は今回の方がスムーズだ。前回はピンセットで摘んだりするにも時間を要したので少しは進歩しているのかもしれない。

次回へ続く。