さて、「Jaeger-LeCoultre」といえば「Reverso」と称される程その認知度は高い。新作である「Reverso Squadra Hometime」を大阪旅行で見たのは「大阪旅行3」の投稿のとおりだ。
では知らない方に「Reverso」と呼ばれるJaeger-LeCoultreを代表する時計について簡単に説明しよう。
Reversoが開発されていた当時の腕時計は、風防のガラスが脆く、腕時計をしたままで激しいスポーツなどをすると割れてしまう事が多かった。特に「ポロ」という競技でよく破損したようだ。頑丈なガラスの開発ももちろんだが、風防自体を保護する事を主体に置き開発されたのがReversoである。ラテン語の回転という意味で、文字盤が反転し隠れるギミックだ。(写真1)「世紀の反転」と言われている。以降Reversoは角型時計の代名詞としてその存在を揺るぎ無いものにした。
保護のための裏面も時代とともに、単なる保護でなく装飾の意味合いを強めていった。エングレービングや細密画を施したり宝石を散りばめたりと装飾としてもその魅力を十分発揮した。(現代でも基本的なスタイルは当時と変わることなく受け継がれている。)
更に、裏面にも別の顔を持った文字盤を取り付けた「Reverso Duo」(写真2。左が表面、右が裏面。)も大人気となった。ひとつのムーブメントで両面の時計を動かすことも素晴らしいが、TPOで使い分けることが出来る。表の時間(顔)と裏の時間(顔)を上手に使いこなす事が余裕ある刻の過ごし方ではないだろうか?
そしてReverso生誕75周年である昨年に発表された脅威のモデルが、「Reverso grande complication à triptyque」(写真3・4)である。値段は日本円にして4500万くらいだろうか。
Jaeger-LeCoultreの現在の持ちうる技術を結集して製作した記念Reversoである。驚くなかれ、この時計、表裏の2面に加えスライドさせる部分の裏側のもう1面を利用することで驚愕の種類の表示を可能にした常識外の時計である。
表面では「時」「分」「ナイト&デイ(24時間)」「エリプス・イゾメーター・エスケープメント(新型脱進機)によるトゥールビヨン(秒)」で基本的な表示のシンプルなもの。裏面では「天空図」「黄道十二宮」「日の出」「日の入り」「近時差」という天文時計。そしてもうひとつの面で「月」「日」「曜日」「閏年」のパーペチュアルカレンダーと「ムーンフェイズ」を表示。
しかも、第3面に至るまでを全て1つのムーブメントで動かすことに成功している。(第3面は、ムーブメントのある本体からピンを出しケースキャリア内蔵のレバーを操作する事でパーペチュアルカレンダーを進めているそうだ。)
PATEK PHILIPPEの「5002」も両面時計として驚くべきものであったが、この時計のアイデアには勝てないだろう。
ムーブメントは多次元に存在する宇宙を統括している。輪列を想像するだけで頭がおかしくなりそうだ。
もちろんこれを手にできる方は世界でも限られている。(75周年に因んで限定75個)
私のような庶民ではお目にかかる事もできないかもしれない。しかし、これはあくまでReversoのひとつの形に過ぎない。私は1面のみのシンプルなモデルもReverso Duoのように両面も十分Reversoを堪能できると思っている。ふたつの表情がReversoの売りなのだ。一粒で二度美味しいReverso、皆も如何だろうか?レディースモデルも豊富である。女性にもお勧めだ。