



アンクルをガンギ車の横に組み込み、アンクルの軸を支えるアンクル受けで固定しネジを締める。非常に小さな穴なのでかなり苦労した。(写真1)
「この状態で香箱の角穴ネジを半回転回し、アンクルを軽くゆっくり動かすと途中から反対側に独りでに動く。動かない場合はアンクルのホゾが折れている可能性がある。」とマニュアルに載っている。祈るような気持ちでそっとアンクルの先を動かすと‥反対側まで動く。が、独りでに動いたのか全然解らない。何回か繰り返すも、間違っているのかどうかよくわからない。まあ大丈夫だと思って次へ。
今度はテンプの固定である。テンプ(テン輪やひげゼンマイなど)とテンプを固定するテンプ受けは始めから一体となっているのだが、ここにもマニュアルに注意書きが。「ひげゼンマイ及びテン輪(金の輪)には絶対に触らないこと。」
当然ながらテンプ受けをピンセットで持っての作業となるのだが、ひげゼンマイが下に伸び、慎重に作業しても、テン真(テンプの中心の軸)が大きく揺れる。4番車の下にテン輪を滑り込ませながら直径1mmに満たない細かな穴にテン真を組み込まなくてはいけないだけでなく、アンクルの先に振り石を差し込まなければならない(写真3が拡大した図)ため、テンプを少し回す様な感じで入れなければならない。はっきり言って、キズミで見てもよくわからなかった。しかし、テンプが動き、アンクルとガンギ車も規則正しい動きを始めたのでどうやら適当に入れたのだがうまくいったようだ。(いい加減である。)
そのままテンプ受けをネジで固定した状態が写真3。だいぶ目に疲れも出て来ている様で写真もかなりピンボケになってきた。姿勢が悪くなるのか腰もかなり痛くなった。
アンクルとは、テンプとカンギ車との間にある脱進機を構成する部品のひとつだ。錨(アンカー)の型をしていることからこう呼ばれる。2つのツメがガンギ車を交互に進め、テンプの振動を調整する。このアンクルを組み込んだ機構をアンクル脱進機と言う。テンプは調速を行なう部分。輪列、ガンギ車、アンクルと伝わってきた主ゼンマイの動力を、テンプの中心にあるひげゼンマイと共に規則正しい速度に変換する働きをしている。
余談だが、数年前NHKハイビジョンスペシャルで放映された「独立時計師たちの小宇宙 スイス・超複雑時計の世界」という番組、この中で振動するテンプと脱進機を収めたキャリッジが回転することによって、重力の影響を平均化する超複雑機構のトゥールビヨンの組み立てを行うアントワーヌ・プレジウソ氏を見ることが出来た。1000万円を越える機構なのだが、プレジウソ氏はその極小の部品を組み立てる際、机を噛んで顔を固定しながら作業していたのだ。今回テンプだけでこれだけの難度ということが解った。天才時計師がここまでせねば作れないトゥールビヨンとは一体どれほどのものなのか映像を見ても想像が付かない。
さて、組み立てに戻ろう。次は伝え受けを組み立て地板に組み込む。
伝え受けにツメレバーを組み込み、伝え車をツメレバーの間に挟み込みながら伝え受けの穴石に軸を入れる。伝え押さえで伝え車を押さえながらネジで固定。裏返し、伝え受けの穴からツメレバーがちゃんと伝え車を挟んでいるか確認する。なるほど、時計のパーツの穴は、中の部品が正常な位置にあるか確認できるようにわざわざ開けてあるということを初めて知った。正常な状態だったので、地板に組み込みネジで固定した。このとき、香箱の角穴ネジを時計回りに回すと「ジリジリ」という音がして伝え車が回るとOK。(写真4)
ちなみに伝え車は巻き上げ機構のひとつで、回転角度に関係なく動力伝達の中間的役割を果たす歯車だ。
次でムーブメントが完成(予定)である。