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男子厨房に入るべからずも昔の話。女性はもちろん、男性も最近では料理をすることが多いだろう。私もたまに料理を行うことがある。今はともかく独身の頃は頻繁に料理したものだ。
しかし、女性と男性の料理には大きな違いがある。繊細さや大胆さなど料理の姿勢はもちろん違うが、一番違うのは道具への関心ではないだろうか?
女性も当然良い道具を使って調理している方が楽しいだろう。しかし、私の場合は、気に入った道具でないと料理する気が起こらない。もっとも生来怠け者ではあるのだが。
中でも「包丁」は料理の基本であり、最重要な道具だろう。
ということで、独身時に買った包丁について。

和包丁は素晴しいものが沢山ある。流石は「刀」という素晴しい武器を生み出した国である。しかし、私は和包丁を選ばなかった。
理由は2つ。1つは基本的に良く切れる美しい和包丁は片刃なのである。実は私は左利きで、右手用の包丁だと上手く使えないばかりか、包丁自体の切れ味も損ねてしまう。世の中は、人数の多い右利き用にできている。そして、左利き用のものは特注になり、値段・時間ともに多くかかる。左利きには不便だと思う。洋包丁は両刃なので左利きでも普通に使用可能なのだ。(ただし、右手寄りに製作されている。)
2つめは単純に気に入ったデザインがなかったということだ。板前御用達の和包丁などは、似合わないし、他のキッチンアイテムとも合わない。

それで購入したのが、「ダマスカス鋼の包丁(牛刀)」だ。(写真1)
ダマスカス鋼は木目状の模様を持つ鋼素材の名称である。 鋼材が生産されたのはインドのウーツであるが、それがシリアのダマスカスで刀剣等に加工されたのでダマスカス鋼として世界に知られるようになった。
インドの一部地域に由来する鉄鉱石を原料とし、その特殊な不純物の組成から、坩堝内で製鋼されたインゴット内にカーバイドの層構造を形成、これを鍛造加工することにより表面に複雑な木目の縞模様が顕れる。刀剣用の高品質の鋼材として珍重されたが、遅くとも19世紀初頭までにその伝統的な製造技術は失われた。その後の学術的な研究により、ほぼ完全な再現に成功している。
しかし、太古のダマスカス鋼は製造方法などが一切残っていない謎の合金と考えられ、ダマスカスの剣は、「柔らかくしなる、錆びない、切れ味が落ちない、鉄をも斬る」等と伝えられている。これらの伝承からファンタジーなどに用いられることが見受けられる。ロールプレイングゲームなどでもたまに見かける「伝説の武器」だ。
本当のダマスカスの刃がどんなものかはわからない。しかし、私の購入した包丁も美しい模様と確かな切れ味、十分に満足できる品だ。現在一度も研いでいないが、切れ味が落ちた感はない。錆びも大丈夫だ。

余談になるが、日本刀の流麗な刃紋も鋼と鉄など違う金属を鍛え合わせることにより浮かび上がる。また、杢目金(モクメガネ)と呼ばれる、今から約400年前江戸時代に生まれた金属の色の違いを利用して木目状の文様を創り出す日本独自の特殊な金属加工技術も存在する。刀の鍔等に用いられたようだ。これも歴史が途絶えたものらしい。現在では技術を復活させ、結婚指輪として売り出しているようだ。
私の勝手な憶測だがこれら総てのルーツはダマスカス鋼ではないのだろうか?

結婚してからは嫁用に、「PORSCHE DESIGN」のTYPE301という三徳包丁を買った。(写真2)
名車911を開発したフェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェ氏は、「FormFollows Function(機能が形態を決める)」というコンセプトに基づき、1972年にPORSCHE DESIGNを設立。無駄を省いた機能美を全面に打ち出しているところがドイツらしい。
切れ味はやはりダマスカスの方が圧倒的に良い。しかしデザインでは、こちらに軍配だろう。ほとんど突起のない、刃先と柄の境を無くした一体成型デザインは本当に洗練されている。柄の形状も計算されていて美しいし、持ちやすい。これも満足のいく代物だ。

本当は、多種の包丁を用途に合わせて使っていきたいところだが、予算と収納スペースによって断念。
2本ともこのような万能包丁を選んでしまった。もっと夫婦共々料理の腕が上達すれば、新しい包丁の購入を考えてみようと思う。