詐欺の手口は年々巧妙化しています。

日々、新しい詐欺の手法が出来ているため、周知される前に被害に遭った方もいるでしょう。

特に、相手の優しい心に付け込んだ詐欺は非常に非道なものです。

これによって高額なお金を盗まれてしまえば、ショックであるとともに、返金されない事実を絶望的に感じるかもしれません。

そこで、この記事では詐欺に遭った時に被害額を返金してもらえるのか、お金を取り戻すために必要な方法について解説します。

 

 

■詐欺事件で盗まれたお金は取り戻せる?

 

近年、「架空請求詐欺」「オレオレ詐欺」「還付金詐欺」「ロマンス詐欺」など、あらゆる名前の付いた詐欺の手法が横行しています。

自分自身は被害に遭わないと思っていても、巧妙な手口に引っかかってしまい、多額の金額を取られてしまうことも少なくありません。

そんな時、不安になるのが詐欺に遭った時のお金の行方です。

もし、多額の金額を盗まれてしまった場合は戻ってくるのでしょうか?

 

・振り込め詐欺なら「振り込め詐欺救済法」対象に

詐欺といってもあらゆる手法がありますが、騙し取られた方法が振り込め詐欺の場合は「振り込め詐欺救済法」対象になります。

日本では、年々増加する振り込め詐欺の被害者救済手段として2008年に法律を施行しました。

この振り込め詐欺救済法の中には、オレオレ詐欺、還付金詐欺、融資保証金詐欺、架空請求詐欺、未公開株詐欺、ヤミ金融など、人の財産を害する犯罪行為によって預金口座への振り込みが使われた詐欺が対象です。

この法律によって、振り込め詐欺の被害に遭ったことに気が付いた場合、最寄りの警察と手続きを行った銀行に対して、被害に遭った事実を届け出ると申請手続きができます。

 

・組織犯罪なら「被害回復給付金支給制度」

組織的な犯罪によって多くの人から財産を奪っていた場合、組織の人間が逮捕されても犯罪で得た利益や追徴が禁止されていました。

そのため、犯人逮捕で安心できても、奪われた金銭を取り戻すことはできなかったのです。

2006年に組織犯罪処罰法が改正されたことで、詐欺や出資法などで財産犯罪などの行為で犯人が財産を得た場合、刑事裁判によって犯人からはく奪した犯罪被害財産を金銭化して事件の被害者に給付する制度ができました。

これは、外国の裁判などではく奪された犯罪被害財産を日本が譲り受けた場合も同じように返還されます。

 

・少額でも多くの人が被害に遭っている場合は「消費者団体訴訟制度」

「消費者団体訴訟制度」は、内閣総理大臣によって認定された消費者団体が代わりに事業者に対して訴訟できる制度です。

民事では、被害者側の消費者が加害者側の事業者に対して訴えられますが、情報量、交渉力、時間、労力などを考えると被害の回復の方が大きなダメージになりがちです。

しかし、認定された消費者団体が権限を持っていること、消費者からの情報提供などで被害状況を収集して分析し、調査できます。

差し止め請求の対象は、景品表示法、消費者契約法、特定商取引法、食品表示法などです。

 

・一人でも訴訟できる「少額訴訟制度」

詐欺に遭った金額が60万円以下の場合は、少額訴訟制度を利用できます。

少額訴訟制度は、訴訟額の制限が60万円以内ですが、判決までの時間が即日となっているので、通常の訴訟と比較すると時間や費用の負担が少なくなります。

弁護士に手続きなどを依頼することもなく、自分だけで準備できる制度です。

必要なのは訴訟手続き手数料、裁判所からの書類の郵送費だけなので、1万円以内でできます。

少額訴訟は、審議が1回だけなのでその日に判決が下されます。

相手の住所宛に直接送達し、弁済されない場合は財産の差し押さえなどの申し立てが可能です。

 

 

■詐欺事件で盗まれたお金は戻ってこない場合もある!?

詐欺で多額の現金が盗まれた場合、上記の方法で取り戻せる場合もあります。

しかし、被害を受けているにもかかわらず、お金が返金されないケースも存在しています。

なぜ、返金されないのでしょうか?

 

・投資詐欺なら「ポンジスキーム」を使うため

ポンジスキームとは、金融や投資詐欺の手法の1つです。

チャールズ・ポンジという詐欺師が使っていたことが名前の由来で、日本では出資金詐欺などがこの手法に該当します。

金融商品、投資などで利益の還元、配当金を誘い、多くの被害者から資金を集める詐欺手法です。

出資者から集金し、運用しているように見せかけて一部を着服します。

残ったお金を出資者に横流ししているだけなので、何一つ運用しておらず減っていく一方になっていく仕組みです。

ポンジスキームの場合、存在していない運用先ということになり、利益の還元や配当金はないので受け取ることができません。

しかし、新たな出資者がいなければ資金がないので、元本保証、固定月利、高利回り、少額投資可能などの誘い文句で出資者を集めます。

その結果、出資者が集まるほど消滅に向かっていきます。

高額な金額を奪われてしまうだけでなく、被害を回復するのが難しいほどの高額になってしまい、返金できないという結果が待っています。

 

・手元に残さないため

詐欺をしている側は、ギャンブル、投資、借金返済、生活費などの目的でお金を必要としています。

そのため、詐欺で得たお金をすぐに使ってしまう可能性も高いです。

このような理由から、手元にお金を残していないため、返金請求しても返せるお金持っていないケースも少なくありません。

 

・海外からの詐欺で身元が特定できないため

日本に限らず、海外を拠点にした詐欺事件も多く発生しています。

このような場合、国によっては身元の特定が困難になりやすく、相手が特定されていないことには被害額を返金するのは難しいでしょう。

2018年には、国連の医師を名乗る人物から、貧困な子どものために料理を振る舞って欲しいとメッセージを受けた女性が、詐欺に巻き込まれる事件が起こりました。

レシピを教えるつもりでいた女性でしたが、料理を運ぶ資金を用立てて欲しいとメッセージを受け、最初は断りましたが国連から支払うという言葉を鵜吞みにして送金してしまったのです。

要求がエスカレートしたことで被害を警察に相談したものの、この手の詐欺では99%お金が戻ってこないと言われてしまいました。

結論として、この被害者となる女性は警察に被害届を提出後、自分で経済金融犯罪委員会(EFCC)に連絡し、事件から3年後に被害金の一部を受け取ることができました。

このような海外を拠点にした詐欺は、捜査が難航しがちなため、容易にお金を取り戻すことができないのです。

 

・立件できないため

被害に遭った方からすれば「絶対に詐欺だ」と思うことであっても、詐欺罪に該当するには「人を欺いて財物を交付させた」時です。

会話の中で嘘や大げさな言い回しを詐欺だと指摘することもありますが、これだけでは詐欺に該当しません。

詐欺として立件するには、騙すために嘘をついて錯覚を起こさせること、被害者が嘘を信じこんで騙された状態であること、金品を渡していること、渡した財産が加害者に渡ることで成立します。

特に被害者を欺く嘘を証明するのが困難な場合が多く、立件が難しいケースが多いです。

なぜなら、詐欺師は直接電話や顔を合わせてやりとりして証拠を隠しながら行うからです。

立件できなければ、示談などで返金も求められないもどかしさもあります。

 

 

■詐欺師から返金してもらうためにできることは?

 

詐欺師はその場だけやり過ごすのではなく、計画的に詐欺をしているため、証拠を残さない手口が多いです。

そのため、立件できない、返金できないという事態に陥りやすいのですが、泣き寝入りせずに返金してもらう方法はないのでしょうか?

ここでは、返金してもらうための方法について解説します。

 

・詐欺に遭った被害をまとめる

詐欺に遭った場合は、まず被害の状況を知るために証拠を集めてみましょう。

詐欺師が騙していることが証明できれば、詐欺罪が立件されて返金のための交渉もできます。

詐欺師の名前、住所、電話番号、メールアドレス、使っている銀行口座の情報、今までのやりとりの内容、電話の内容を録音したもの、購入した商品やその情報などが有効です。

これらの内容は、早い段階で詐欺に気が付いていないと相手に消されてしまったり、証拠が残らない方法でやりとりされたりしてしまいます。

疑わしいと感じた時点で全て情報を保存したり、スクリーンショットしたりするくらいの意識を持っておきましょう。

特にインターネット上でのやりとりは、相手が削除してしまうと残りません。

できるだけ被害をまとめておくようにしましょう。

 

・犯人が特定できる内容を知る

詐欺師が語っていた名前、住所、電話番号などが全て噓だったということが発覚すれば、絶望的に感じるかもしれません。

しかし、返金してもらうためには相手の身元を知るしか方法はありません。

特定できる情報として、最も有力なのが氏名や住所です。

身元の特定によって、弁護士が詐欺師と直接返金交渉したり、訴訟を起こしたりできるので非常に重要な内容です。

国内に限らず、国外であっても身元に関する情報を集めておき、何も情報がない場合は早い段階で調査会社に依頼して証拠を集めてください。

 

・金額に応じて訴訟を起こす

騙し取られたお金を返してもらうには、金額に応じて訴訟を起こすことです。

民事訴訟には通常訴訟、少額訴訟があります。

一般的な訴訟であれば通常訴訟ですが、60万円以下の返金を求める場合には少額訴訟となります。

民事訴訟は当事者同士で争うことになり、被害者への返済を要求して救済するのが目的です。

刑法で詐欺に該当すれば、詐欺師を罰することが優先され、被害者への返金は目的となりません。

このような違いを知ってから訴訟などの方法を検討してみましょう。

 

・警察への被害届も忘れない

詐欺に遭ったと確信できた場合は、警察に被害届を忘れずに提出しましょう。

被害届の提出によって詐欺師逮捕に向けた捜査が始まり、捕まれば被害回復給付金支給などの制度の対象になります。

また、詐欺師との示談で返金請求もできます。

もし、民事不介入となってしまった場合捜査は行われず、刑事事件と認定されても逮捕できる確証はありません。

しかし、上記で紹介した事例のように、警察への被害届で返金されたケースもあるので必ず届け出ましょう。

 

・海外の犯罪事務局にも伝えておく

日本と同じように、海外にも特殊な金融犯罪を取り締まる場所があります。

国際的な詐欺を中心とした犯罪は、ナイジェリアを中心にしていることが多いとされています。

しかし、日本に住んでいる私たちにしてみれば国を特定できないこともあるでしょう。

そのような場合は、経済金融犯罪委員会へ連絡してみてください。

これはナイジェリア政府、省察、国際警察などの協力を得て金融関連の犯罪を撲滅する目的で結成された組織です。

海外となると解決までの道のりが遠く感じますが、できる限りのことをしてみてください。

 

 

■返金を求めるなら法律事務所へ!

詐欺に遭った場合、警察への相談はもちろんですが、ここで返金に関する手続きや方法を教えてもらうことはできません。

詐欺に対しての返金を求めるなら、法律事務所へ相談してください。

法律事務所への相談は返金のためのアドバイスをもらえるだけでなく、代わりに詐欺師とのやりとりをしてもらえるので精神的な負担がありません。

被害に応じた返金方法や手続きに関する内容を知れるので、短時間で返金までの手続きが完了できます。

早めの相談で二次被害も防げるので、返金関連は法律事務所へ依頼しましょう。