お盆に起きたちょっと不思議な話。


1週間前、祖母が永眠しました。

幼い頃から、私の面倒をよく見てくれた祖母でした。


お葬式にはなんとしても駆けつけたかったのですが、生後一ヶ月の赤ちゃん連れで、飛行機での移動は難しく、参列は叶いませんでした。


(飛行機や車を含めると片道6時間はかかる上に、この猛暑……。苦渋の決断でした)




初ひ孫に会えるのを楽しみにしていた祖母

出産直後、祖母は私に電話をくれて

「早く、ひ孫に会いたいわぁ。会えるまでは、あの世へ行けないね。生きる目標ができた」

と笑っていました。


元気そうに話していたので、絶対に会わせてあげられるものだと思っていました。


ところがお盆前に祖母の容体は急変。

そのまま帰らぬ人となりました。




後悔してもしきれない

小学生の頃、学校から帰るとすぐおばあちゃんの家へ遊びに行きました。

ガラガラと音を立てて引き戸をあける。いつも鍵は開いている。少し湿った匂い。

「おかえり」と京都訛りの優しい声。


おばあちゃんの家のこたつで眠るのが好きでした。

おばあちゃんの作る、ちょっと塩辛いお漬物が好きでした。

鳥の名前、お裁縫のコツ、おばあちゃんは私にたくさんのことを教えてくれました。


なのに、私は何もお返しできていない……。

それどころか、葬儀すら参列できなかったのですから。


申し訳なくて悔しくて。

「飛行機の距離だろうと、もっと会いにいっていればよかった」

気付いた時には、もう遅いのです。




大きな羽音のお客さん

祖母が亡くなって1週間が経った日の夜。

お風呂から上がると、リビングから

バタバタ!バタバタ!

と乾いた音が聞こえてきました。


天井を見上げると、大きなトンボがいるではありませんか!


「いつの間に家に入ってきたんだろう!?」「トンボが室内に入ってくるなんて初めてだ」と驚く夫。

昆虫が苦手な私は「怖いよ〜はやく捕まえて!」「今日このまま、1階で寝るのやだぁ」と半泣きに。


結局その夜は、トンボを捕まえることはできませんでした。


「トンボと同じ空間にいるのは怖いけど……刺したりしないから大丈夫よね滝汗


そのまま、リビング横の和室で、赤ちゃんと一緒に眠りにつきました。


バタバタとうるさい羽音で、眠れないんじゃないかと心配しましたが、夜中は意外にも静かでした。


授乳のために起きて、ふと天井をみると、トンボは台所のシーリングライトのフチに、じっと止まっておりました。


そのとき、トンボへの恐怖心はなぜか消えていて

「あぁ、おばあちゃんが見に来てくれたのね」

と、心の中に浮かびました。



トンボのメガネは瑠璃色メガネ

49日までは魂はこの世にあると言われています。

きっと、祖母はトンボになって、私とひ孫をひと目見に来てくれたのではないかな?

宗教とか、霊感とか、疎い私ですが、なんとなくそう思うのです。


朝になり、夫にそのことを話しました。

「ふーん」という反応でしたが、ポリ袋でそっとトンボを捕まえ、玄関から外に逃がしてくれました。

昨日の夜にはあんなに苦戦して捕まえられなかったのに、朝にはやけにあっさり捕まりました。


「トンボ、どうなった?」

「空に飛んで行ったよ」

「そっか…よかった」



トンボのメガネは瑠璃色メガネ

青いお空を飛んだから

飛んだから



祖母がよく歌ってくれた歌。

一晩だけ、一緒に子守りをしてくれたのかもしれません。



ありがとうおばあちゃん。初めての子育ては大変だけどなんとかやってるよ。安心してお空へ旅立ってね。