ラッキーチャチャチャ、フィーバー!! じゃーんじゃん出してネ☆ アタシ、夢夢ちゃん! 地球の平和とホールの出玉を守る正義の味方だヨ、よろしくネ☆ 

 

 

 

……ゴメン、このテンションもう無理だわ。アタシ、言うても五十路だもの。とっくに閉経しちゃってるもの。1992年の初代フィーバーパワフルに出ていた当時は20代前半のピチピチギャルだったアタシも、今はもうオバサン。アタシがオバサンになってもディスコに連れていくなんて言ってた彼氏も、今じゃすっかりハゲ上がったパチプロ崩れのオッサンになり下がっちゃったわ。昔と変わらず、国分寺のモナコってパチ屋でジグマやってるわ。そんなアタシといえばSANKYOの事業企画部で超ベテランスペシャルOLとして働きつつ、たまにパワフルの新作が出たら森高千里のコスプレで撮影よ、そこだけは当時と変わってないわね。

 

変わったのは仕事内容ね。初代パワフルの頃、つまり今から25年以上前は7図柄がテンパイした時に「リーチ!」って叫んだり、客が大当りした時だけ「頑張ってネ!」なんて心にもないセリフを吐いたり、例の森高コスに着替えてちょっと媚を売るポーズを取るだけでOKだった。これだけで、月収80万。麻雀物語に出て来る女みたいに最終ラウンドでパイオツ丸出しにする必要も無しで、賞与を含めて年収一千万オーバー。オッケーバブリー、激アツの時代だったわ。

 

雲行きが怪しくなってきたのは「かっとびリーチ」とか「ヒップアタックリーチ」みたいに、客が当たってもいないのにアタシがカラダを張る仕事が増えてきた頃かしら。昔はSANKYOの人たちも景気が良かったせいかアタシにも優しかった。でも、アタシが年齢を重ねるごとにフーゾクの常連みたいに要求がエスカレーション(ともさかりえ)。ファインディングにも関わらずギャラは大幅ダウン。つまり、ガンバレルーヤ並みに体を張る仕事は増える一方なのに、生活はだんだん質素なものにグレードダウンしちゃったという訳。完全に弾けちゃったのよね、オールフルーツバブルが。アンラッキーチャチャチャ、石井明美よ。ランバダ踊っちゃうぞコノヤロー。

 

思えばアタシも、あの頃は若かった。アンダルシアに憧れて、地下の酒場でバラを咥えて踊ってた頃にSANKYOのそこそこ偉い人に抱かれて、正確に言うと五反田の安ホテルで一晩で4回も中に出されて、なし崩し的な感じでパチンコ業界入り。昼間はパチ屋で大当りが終わった客に「もう1回、お願い! ウフフ」とおねだりして、夜は五反田の安ホテルでSANKYOの偉い人に同じセリフを吐いて、一晩に3回ほど中に出される。そんな生活で月に80万。楽な時代だったわ。

 

今は、当時と何もかもが違うわね。変わっていないのはアタシのハードSM並みの過激な仕事ぶりだけ。みんな、「超かっとびリーチ」って見たことある? アタシがどこからともなく超高速でブッ飛んで来て、大当り図柄である7を直撃させるというエガちゃんやエスパー伊東クラスの体を張ったリーチ演出なんだけどね、あの撮影、マジで命懸けだから。下請けの映像制作会社の下っ端スタッフがダイソーで買ってきたビニール紐で身体をグルグル巻きにされたアタシが、撮影現場の天井から宙吊りにされて、そのまま巨大扇風機のスイッチON(サンセイ)。髪の毛は乱れに乱れ、顔面は頬のたるんだ肉がプルンプルン揺れるという未曽有の衝撃映像をカメラで上手に撮影して、後は何事も無かったかのようにCGで編集。見事に30歳近く若返ったアタシが7をゲットする映像に仕上がるという訳よ。こういうの何て言うのかしら? パネマジじゃなくてビデマジ? まあどうでもいいわ、こんな話……。

 

あとさ、アタシの他にも余計な女が二人いるじゃん? ナナちゃんとジャムちゃんだっけ? アイツら要らなくね? いつの間にか増殖しているミスマリンちゃんよろしく勝手に増えてっけど、ぶっちゃけギャラの取り分が減ったのはアイツのせいだとアタシは睨んでる。あやしいゾ! たぶん、あの女たちも偉い人に中に出されてる。五反田の安ホテルでスペシャルフィーバーされちゃってる。間違いないっ!

 

でもね、アイツらはアイツらで大変らしい。ナナちゃんもアラフォーなのに、今もメイド喫茶でバイトしながらパチンコライターやってる。昼間は萌え萌えキュン、美味しくなあれ! とか言いながらオムライスの上にケチャップでわざと「FEBAR」とか書いて、客から「フィーバーは『FEVER』って書くんだよ!」とツッコまれるのがお約束というドジッ娘メイドを演じて小銭を稼いで、夜は五反田の安ホテルでSANKYOの偉い人に「大きくなあれ!」とか言いつつバナナの皮をむいて、最終的にはメロン超え。ちょっと自分でも何を言ってるのかよくわかんないけど、彼女も大変。

 

ジャムちゃんは元・バンドギャル。名前の由来はたぶん『JUDY AND MARY』の頭文字から取ってると思う。自身のバンドで有名になるために上京してきたけど、全く売れないどころか、当時の彼氏も有名バンドの女ボーカルに寝取られたらしくて、とにかく悲惨。今の彼女の口癖は「ジュディもマリーも大嫌い!」だもの。何があったのかしら……。その他のことについてはあまり何も喋らないけど、ウワサでは五反田の安ホテルでフロント業務のバイトしてるらしい。もうムチャクチャでごじゃりまするがな。

 

ぶっちゃけ、もうこんな仕事はいい加減ヤメたい。身体もメチャメチャキツいし、何より手取り16万円でこんな仕事は引き受けていられないわよ。でも彼氏が月に平均して22万ほどヤラれてるパチプロだし、アタシが働いて彼を支えてあげるしかないのよ。少し酔ったみたいね、喋り過ぎてしまったわ。でも、カネが全てじゃないなんて、キレイには家無き子(アタシの隣で犬も絶叫)。

 

 

そんなこんなで、今日もアタシは普段通り働く。お盆休みで賑わうホールの中で、パチンコぐらいしかやることが無い孤独な客に小銭を落とさせるために、アツいリーチの数々を見せてやる。そして、たまには当ててやる。それが今も昔も変わらない、日本昔話のようなアタシの仕事。アンタらもそれぞれの人生、悔いなく過ごしなさいね。今日も外は暑そうだから、熱中症にも気をつけるようにね。ああもうっ、アツいアツいっ!!