外は、心の中で流す別れの涙のような雨。
儚くも咲き乱れる桜の花びらを、残酷なまでに叩いている。
こんな日に、僕は思い出す。
あの日の君の笑顔は、春の雨のせいか、どこか淋しげだった。
そんな君を笑わせたくって、精一杯おどけてみせた。
凛として美しい君の横顔は、笑うとくしゃくしゃになった。
それがなんだか花のようで、嬉しかった。
安っぽいたとえなのかもしれないけれど。
笑顔を取り戻した君は、またすぐに真面目な顔でこう言った。
「晴れたら桜の花を見にいこうね」
不意のお願いに返す洒落た言葉も、
男らしい決め台詞も見つからなかった僕は、
あの日、何と答えたのだろうか。
容赦なく打ち付ける春の雨に耐え忍ぶ、
淡い幸せの色をした花弁を見つめ思う。
守れなかった約束の事を。
泣きそうにも見えた君の微笑みを。
そして悔やんでしまう。
君の心に流れていた涙を、ただ見過ごしてしまった事を。
背を向けて一瞥もせず歩く君に、何の言葉もかけられず、
ただただ、雨に濡れていただけの僕を。
もしも明日晴れたら、
ひとりでも、桜の花を見に行こうか。
そして君の笑顔を真似してみようか。
目が眩む程の眩しい空の下で、
手のひらをすり抜ける、舞い散る花びらと戯れながら。
注:砂肝先生はたまに「おいおい、キャラ違くね?」という事を
書きたくなる人なので、スルーしてあげて下さい。