~昨日の続きッス。~
シンちゃんは、それから暫くして上司のムラさんと喧嘩して、
ある日突然会社を辞めてしまいました。
僕はその後も何度か彼の自宅に電話をかけていました。
(当時はまだ携帯電話を持つのは主流ではありませんでした)
その後、彼が結婚した事、引越しをした事、新しい仕事の事などを、
昔よりも少しだけシッカリとした口調で話してくれたのを、
嬉しいような、それでいてほんの少しだけ寂しいような気持ちで、
それでも一言一言をしっかりと聞いていたのを覚えています。
そして1995年。
第40回有馬記念。
当日の朝、僕は昨晩見た夢の事について、ずっと思いを巡らせていました。
その「夢」を再現します。
職場で弁当を食べていた僕の元へ、事務所の扉を開けて、
何かを我慢しているような妙な笑顔を浮かべてやってきたシンちゃん。
そして開口一番、
「砂肝ちゃぁーん、有馬記念何が勝ったか知ってる??」
僕は一番人気で、最強の牝馬といわれた一頭の名を挙げました。
「んー?やっぱヒシアマゾンが勝ったんじゃない?」
シンちゃんは、相変わらずの笑顔で首を横に振るばかりです。
「じゃぁ、(ナリタ)ブライアンだろ??どっちかで決まるだろ」
シンちゃんは今にも大笑いしそうな表情で、やはり首を横に振るばかり。
僕は、
「何だよ、勿体ぶんなよなー!つーか、知ってんなら教えてくれよ!」
と彼を急かしました。
彼は待ってました、と言わんばかりの表情で、こう言ったのです。
「勝ったのは(マヤノ)トップガンだよぉ、砂肝ちゃん!」
そこで僕は雷に打たれたかのように、カッと目を覚ましました。
しばらく会っても、電話もかけていなかったシンちゃん。
そして今日は馬券を買いに行こうか、行くまいか迷っていた矢先の夢。
これは、きっと金欠の僕をシンちゃんが助けてくれようとしているんだ!!
都合よく解釈した僕は、その年最後の勝負をするために、
その朝、立川のウィンズへと向かう気満々でした。
(もうちょい、続きます)