朝から家の中はバタバタしていた。
ユイ
「朝からイッコさんもヒロさんも、バタバタしてますね。」
ヒロ
「ユイ、自分のアジサイの鉢、縁側から取り込んでくれ。」
ユイ
「そうか。台風情報がありましたね。」
イッコは台所へ行ったり、おにぎりを作ったり、工房を片付けたり。
ヒロも、普段はのんびり屋なのに、雨戸を閉めたり、庭の鉢を移動したりと忙しい。
ユイも家中を、台所へ行ったり、縁側へ行ったり、工房へ行ったりと落ち着かない。
ヒロ
「ユイ、さっきから行ったり来たりしてるけど……なんか楽しそうじゃないか?」
イッコ
「子どもは台風が来るって聞くと、はしゃぐもんだよ。」
ユイ
「そうなんですか?……なんだか血が騒ぎます。」
ヒロ
「そんなもんなのか?……でも、お前、邪魔。」
イッコ
「あんたも子どもの頃は、はしゃいでたでしょう。」
ヒロ
「……ギャフン。」
しばらくして。
ヒロ
「だいたい片付いたな。窓も閉めたし。」
ユイ
「だいたい片付きました。」
イッコ
「家の中が暗いね。雨戸閉めたから。」
ヒロ
「停電対策も万全だ。ろうそくも用意したし、充電式バッテリーも満タン。」
イッコ
「これなら安心だね。」
ユイ
「絶対、大丈夫です。」
ヒロ
「なんだ、その自信。」
ユイ
「台風、進路が変わって行っちゃいました。」
ヒロ
「本当か?」
イッコ
「えっ、本当?」
ヒロが雨戸を開ける。
ガラガラガラ……
ヒロ
「……晴れてる。」
イッコ
「雲ひとつないね。」
西日が縁側いっぱいに差し込み、庭を優しく照らしている。
ユイ
「夕暮れの日差しが縁側に当たって、とてもきれいですね。」
ヒロ
「今までの準備は何だったんだ……。」
しばらく三人で夕日を眺める。
昔は台風が来るだけで、胸がワクワクしました。
大人になると、そのワクワクは「何事もなく過ぎてほしい」という願いに変わります。
そんな少し懐かしくて、少し笑える「縁側ホイ」です。
最後のオチまで読んでいただけたら、きっと「あるある」と笑っていただけると思います。
続きは note でお待ちしています。
