
新たな月探査機の打ち上げが目前に迫っている。NASAは18日(日本時間19日)、新型の月探査機を載せたロケットをケネディ宇宙センターから打ち上げる。
今回打ち上げられる月探査機は2機。1機はルナー・リコナイサンス・オービタ(Lunar Reconnaissance Orbiter:LRO)という月周回探査機で、1年以上をかけて月表面の地形を記録する。今回はこれまで十分な調査が行われていなかった月の両極付近についても記録されることになっている。
もう1機はそのLROに結合されているエルクロス(Lunar Crater Observation and Sensing Satellite:LCROSS)という月クレーター観測機で、乗用車ほどの大きさがある。月の南極付近にある影の濃いクレーター内に突入後、衝突によって飛散した月表面の物質を分析して、氷の有無を調査する。クレーターへは10月に突入する予定で、衝突によってできる穴の大きさは深さ約4.5メートル、直径約30メートルに達すると予想されている。
LROには、高精度の気温計測器や月表面の放射能を測定する機器、将来のミッションで予定されている月面着陸に適した地点を特定する機器などが搭載されている。
NASAゴダード宇宙飛行センターでLROプロジェクトに関わっているリッチ・ボンドラーク氏は、「今後1年をかけて、月の表面全体を網羅した高解像度の地図を作成する」と話す。
今回は特に、月の両極付近が詳しく調査される。両極周辺にあるクレーター内部は、常に太陽光が当たらない「永久影」と呼ばれる部分があるため、地表付近でも水分が氷の形で存在する可能性がある。もし両極付近に氷が存在すれば人類の長期滞在が可能となり、基地を建設する最有力候補地ともなる。
NASAゴダード宇宙飛行センターでLROプロジェクトの責任者を務めるクレイグ・トゥーリー氏は、「月の両極周辺については、詳しいことはほとんどわかっていない」と話す。そこで今回、月の両極付近に突入して氷の有無を調査するのがLCROSSである。
月に水が存在する可能性が初めて指摘されたのは1990年代、アメリカ海軍研究所の「クレメンタイン」プロジェクトが月の両極付近で水素を発見した頃にさかのぼる。ただ、その時のデータからは、発見された水素が水に由来するものなのか、炭化水素など水以外の化合物に由来するものなのかを断定するには至らなかった。その後も探査機を月へ突入させて水の有無を調査するミッションが3度行われたが、いずれのミッションでも水の存在を示す証拠は得られなかった。
LCROSSミッションでは、月の両極付近にあるクレーター内部で調査が行われるが、このような調査は今回が初めてである。
LROは打ち上げから4日後に、月の周回軌道に到達する。それから数カ月をかけてLCROSSの最適な衝突地点と突入軌道を算出する。10月初旬には、LCROSSがロケット(LCROSS本体と同程度の大きさ)を月に向けて発射することになっている。その発射と同時にLCROSSもLROから切り離され、ロケットは時速9000キロで月面に衝突する。
この衝突によって月の地表から跳ね飛ばされる物質は220トンに及び、衝突地点から半径50キロの範囲に渡って飛散するとみられる。分離されたLCROSSは、搭載する機器を通じてロケットが衝突する様子を監視し、飛散物質の成分に関するデータを地球に送信する。そのデータを見れば、水が含まれているかどうかがわかるというわけだ。そしてロケット衝突から4分後には、今度はLCROSS自身が飛散物質の中を通過しながら月への突入軌道に入る。
LCROSSの衝突時には、月面に舞い上がる粉塵を観測するため、世界中の望遠鏡が衝突地点に向けられることだろう。小型望遠鏡で観測する場合は、北半球のうちハワイ以東、テキサス州あるいはミシシッピ州以西の範囲が絶好の観測地点になるという。NASAも衝突の瞬間をオンラインで生中継する予定だ。