古本屋で105円で買って10年近く積読本だったのを思い立ってついに読破した。初版は昭和51年で当時ベストセラーだったのか、古本屋ではよく見かける書名だ。議論に勝つことは難しいが、議論を「論理のパズル」として楽しみましょう、というゆるいコンセプトで書かれている。僕も圧倒的に「あの時、こう言えば・・・」派なので、このスタンスはとても有難い。
まずは、無理矢理自分の意見を押し通す「強弁」の紹介。論じる前にお互いの力関係ですでに勝敗は決していて、あとは怒鳴り倒すか泣き落とすか、とにかく自分の主張を曲げず相手を認めなければ負けることは無いという恐ろしい力技。そして詭弁もまたこの強弁と組み合わされていて、強弁のなかに相手に妥協を許すような詭弁を織り交ぜて自分の意見を認めさせる。
詭弁の分析としては、複雑な問題を単純な二極化にして決断を迫る「二分法」や、「・・・とも考えられる」「・・・とも思われる」など検証しにくい他の可能性を提示して問題点をかく乱させる「相殺法」。論点をすり替え、主張を置き換え、感情に訴え、部分の問題を全体に当てはめたり、色々な技が紹介されている。
そしてベトナム戦争の時にアメリカで使われたという「ドミノ理論」。「よい人生をおくるために、よい大学に入り、そのためよい高校に入り、そのためによい中学に入り、そのためによい小学校に入り・・・」という論法で、一定の説得力を持ちながらも硬直した思考に陥りやすい。
そして普段の生活でも、討論番組でもよく見かけるのがこれ。
若者たちを悩ませる煙の代表は、「ほんとうの」「絶対的」「本質的」などという、深遠でしかもどこにでも使える言葉であろう。これらがいかに詭弁的であるかは、言葉の意味がぼかされて、結局は「いいように」あしらわれてしまうことからわかる。P71
(この例文として「ほんとうの愛っていうのは、そんなものではない」という言い回しを紹介している)
詭弁のロジックを知るだけでなく、論理学の入門書としても役に立つ本書。討論への心構え、それぞれの詭弁の論法への対処法や、論理パズルの練習問題などもあり実用度は高いけれど、それでも僕の弁論能力だと議論の最中に相手の詭弁の矛盾を突いて反論はできそうもない。だがそんな時は、「健全な常識、健全な判断力」を持ってして、無茶な結論には「あなたの考え方には、ついていけません」とキッパリと言えばいいとのこと。実生活では詭弁よりも健全な常識が大切とはまさに正論。これで105円はお買い得。
