疫病が流行する村に取り残された、感化院の少年たちの数日間。理不尽なまでに自由を奪われていた少年たちが、大人に見捨てられることによって自由を得る。
幸福と不幸の激しい落差。強者と弱者の圧倒的な対比。本能的に選び取られる友情と裏切り。薄皮一枚で隣り合った生と死。ここには大人と子供の狭間に位置する少年ゆえの喜びと苦しみがあり、少年ゆえの無邪気さと純粋さ、そして無力さが切実に描かれる。
印象的なのが、それらにまとわりついてくる、泥、汗、血、涙、そのぬるりとした感触が本を持つ手から伝わってくる。身体的にも感情的にも極限にまで追い詰められていく主人公。その生々しい人間の姿を徹底的に描きつつ、そのどこかフィクショナルな状況は、同時に寓話的な世界観をつくりあげていく。
最近はヌルイ小説ばかり読んでいたので、久しぶりに小説というものが真剣勝負だと思い知らされた。気を抜くと、物語に飲み込まれてしまいそうで。読み終えてひどく疲れている自分に気づいた。けれど、また大江健三郎の本を読みたいと思う。
