今頃になって2009年本屋大賞の紹介 | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

遅ればせながら、我が子の熱がやっと下がったので、本屋大賞の紹介を。大賞はご存知の通り『告白』の圧勝で決まりましたが、それぞれ魅力溢れる10作品が揃っていますので、ぜひ気になる作品を読んでみて欲しいと思います。

2009年本屋大賞

1位『告白』湊かなえ/双葉社
告白
双葉社
発売日:2008-08-05

教師による生徒の殺人事件の暴露から物語は始まる。物語は章ごとに主人公が生徒やその母など毎回変わっていき、前章までに描かれていた物語が、次の章を読むことによってまったく違う意味を持つ物語へと書き換えられているところが読みどころ。語りかけてくる相手が変わることにより、人が持っている善悪の判断が、事実ではなく相手との共感によって決められていくということを、身を持って思い知らされる。

2位『のぼうの城』和田竜/小学館
のぼうの城
小学館
発売日:2007-11-28

強烈な個性を持つサムライたちの活躍を、シンプルで読みやすい文体で仕上げた新感覚歴史小説。歴史小説では時代設定など小難しい話が多くなりがちだが、脚本を書いていた著者らしく、テンポのいい会話文と見せ場の多いスピード感のある展開で、一気に読みきることのできるエンターテイメント小説になっている。

3位『ジョーカー・ゲーム』柳広司/角川書店
ジョーカー・ゲーム
角川グループパブリッシング
発売日:2008-08-29

戦前日本の諜報機関を舞台として、超エリート集団が活躍する連作短編集。ミステリー小説としてもスパイ小説としても楽しめる。スパイ養成所”D機関”を設立した結城中佐など、魅力溢れるキャラの活躍する内容は、シリーズ化にも期待が持てる。

4位『テンペスト』池上永一/角川書店
テンペスト  上 若夏の巻
角川グループパブリッシング
発売日:2008-08-28

テンペスト 下 花風の巻
角川グループパブリッシング
発売日:2008-08-28

琉球王朝の末期。中国と薩摩の支配に翻弄されるなか、その強靭な知性によって様々な苦難を切り抜ける男装の麗人が主人公。読みやすい文体と読みどころ満載の派手な展開はコバルト文庫風とか韓流ドラマ風などと評されている。こんなに波乱万丈な人間の人生は読んだことがない。

5位『ボックス!』百田尚樹/太田出版
ボックス!
太田出版
発売日:2008-06-19

勉強は得意だがいじめられていた過去を持つ高校生と、親友の天才ボクサーが互いに影響を受けあいながら成長していく様を描いたボクシング小説。「努力」「友情」「勝利」というジャンプ三大要素がふんだんに盛り込み、直球で王道で正統派の青春小説。

6位『新世界より』貴志祐介/講談社
新世界より 上
講談社
発売日:2008-01-24

新世界より 下
講談社
発売日:2008-01-24

呪術が使える人間が暮らす近未来を描いたSFファンタジー小説。迫りくる「悪鬼」、暴走する「業魔」。多くの仲間を失いながら、主人公たちが戦う敵とは何なのか。数多くの謎を抱えながら、懸命に生き延びるための戦いが繰り広げられる。貴志祐介はどんなジャンルを書いても傑作を生みだすことが、またも証明された。

7位『出星前夜』飯嶋和一/小学館
出星前夜
小学館
発売日:2008-08-01

島原の乱を描いた歴史小説。物語の中心となる村や人物だけでなく、周辺の村の状況まで緻密に説明をして、いかにして島原の乱が起きたのかを描きだす。ひとりひとりの人間の行動が歴史をつくりだす。そして、その歴史の渦にひとりひとりの人間が翻弄されていく。人を描くとは歴史を描くことであり、歴史を描くことは人を描くこと。飯嶋作品のなかでは『始祖鳥記』に並ぶ大傑作。

8位『悼む人』天童荒太/文藝春秋
悼む人
文藝春秋
発売日:2008-11-27

事故や事件などで人が亡くなった地を訪れて「悼む」行為をしつづけている青年は、末期ガンの母親の元にも戻らずに巡礼の旅を続けている。この「悼む人」が「聖者」なのか「偽善者」なのか、その答えはこの本のなかには書かれていない。エンターテイメント小説とは対極にある、読み終えたあとに深く考えさせられる小説だ。

9位『流星の絆』東野圭吾/講談社
流星の絆
講談社
発売日:2008-03-05

ドラマ化もされて既にベストセラーなので、投票する人は少なくてこの位置にいる。けれど、ノミネートされている10作品のなかでは、もっとも幅広い層に楽しんでもらえる内容だと思う。東野圭吾の作品群のなかでは、抜群に面白いというわけではないが、このレベルの小説をさらりと書いてしまう東野圭吾に脱帽する。

10位『モダンタイムス』伊坂幸太郎/講談社 昨年度の姿の見えない敵に対して、いったいどのように戦えばいいのか、という問題にたいするひとつの答えがここにある。著者は昨年度の本屋大賞を受賞したので、今年はいいかと票が集まらなかった模様。といっても本屋大賞が始まって毎回欠かさずノミネートされている作家は伊坂幸太郎だけ。この作品が10位にいるということが、今年の本屋大賞のレベルの高さを証明している。