僕の読解力が不足しているためかもしれないが、経済学に詳しい人でないと細かい検証の部分はついていけなさそうだ。水野和夫の主張は今月発売された『日本の論点2008』にあるので、それを読めば基本的な部分は分かる。素人の僕が理解できないのに無理して読まなくてもよかった気がする。
本書の要点は前書きにまとめられている。
本書では、グローバリゼーション下で生じている大きな構造変化として、次の三つのことを指摘している。
(1)帝国の台頭と国民国家の退場=帝国化
資本が容易に国境を越えるグローバリゼーションの時代には必然的に「帝国」と親密性を有する。十六世紀には資本は主権国家と結婚したが、二十一世紀には資本は帝国をパートナーに選んだのである。経済的な「国境」が限りなく低くなり、国境内に権力を及ぼす「国民国家」の力が衰退する一方、金融帝国と化した米国や、中国・インド・ロシアなど旧帝国の台頭が著しい。
(2)金融経済の実物経済に対する圧倒的な優位性=金融化
グローバリゼーション下では「資本の反革命」によって先進国の賃金が抑制される、ないし低下するから、先進国ではディスインフレ、ないしデフレが定着する。金融政策は緩和基調となり、実物経済に比してマネーが膨張するから、資産価格が上昇しやすくなり、先進国経済は資産価格依存症候群に陥ることになる。
いわば金融経済(尻尾)が実物経済(頭)を振り回す時代になったのだ。そして近い将来、金融経済が頭になり、実物経済、すなわち雇用や生産活動が尻尾になる可能性が高い。雇用が尻尾になるということは「中産階級の没落」が始まったことを意味する。
(3)均質性の消滅と拡大する格差=二極化
近代は国民に均質であることを要求したが、グローバル経済の時代には国家単位の均質性は消滅する運命にある。日本に即していえば「一億総中流意識」の崩壊であり、格差拡大の時代の到来である。
格差は構造的問題となり、景気回復では解決できない。だから、政策で成長を目指せば目指すほど時代の流れから取り残される人が増え、人々の将来の不安が高まる。その結果、将来に備えることよりも毎日の生活の充実を優先する刹那主義が蔓延し、いっそう少子化が進むことになる。
九〇年代から現在に至るまで、政策の基本には「インフレ(成長)がすべての怪我を治す」(近代の基本原理)という発想があった。皮肉にもこの成長主義が、戦後最長の景気回復下で国民の閉塞感を強めている大きな理由である。この原理は、近代化ブームに沸くBRICsでは通用するが、ポスト近代に移行した先進国では弊害ばかりが大きくなる。二一世紀の最大の勝者は、国境を越える巨額の資本や「超国家企業」であり、敗者は用意に国境を越えることができない先進国のドメスティック経済圏企業や中流階級である。視点を変えれば、近代の仕組みに拘泥する超低金利国が敗者となり、近代と決別できた国が高金利国となって勝者となるのだ。
読みながら帝国の定義がよくわからなかったのだが、『日本の論点2008』によると「帝国」とは外交も内政にも口を出す国という意味らしい。この引用文の内容が問題なく理解できて、もっと詳しく知りたいと思った人にはお薦め。詳細なデータと世界経済の理論的な分析によって、これらの内容がより詳しく書かれている。だが、僕みたいなこの文章だけでは何を言ってるかよく分からないという人は、本文はもっと複雑になるので、もう少し世界経済の基礎知識を増やしてから読むほうがいいかも知れない。

