『世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す』ジョセフ・スティグリッツ/徳間書店 | 砂場

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世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す
徳間書店
ジョセフ・E. スティグリッツ(著)Joseph E. Stiglitz(原著)楡井 浩一(翻訳)
発売日:2006-11
おすすめ度:5.0



欧州の牛は一日平均二ドルの補助金を受けている。いっぽう途上国の過半数の人々は、一日二ドル以下での生活を余儀なくされている。つまり、途上国で貧者として暮らすより、欧州で牛として暮らすほうが、豊かな生活を送れるわけだ。


ノーベル賞経済学者であり、クリントン政権では米国大統領経済諮問委員会の委員長に就任。その後、世界銀行で上級副総裁、主席経済学者を経て、現在はコロンビア大学教授という、輝かしい経歴の持ち主によるグローバリズム経済、新自由主義経済への批判という内容。

グローバル化はそもそも、すべての国、すべての人に、未曾有の恩恵をもたらすはずだった。ところが、どういうわけか、先進国、発展途上国、両方の側から烈々たる怨嗟のの声を浴びるに至っている。欧米諸国の目に映るのは、アウトソーシングの脅威であり、第三世界の目に映るのは、グローバル経済の一方的な枠組みを押しつけようとする先進工業国の横暴だ。いずれの視線も、企業利益が他の価値観を犠牲にする形で追求される現状に、いらだちを感じている。本書で、わたしはそういう批判がすこぶる示唆に富むものであることを、ただし、それはあくまで現行のグローバル化にたいする批判であることを指摘してきた。そしてグローバル化を本来あるべき姿に近づけるために、どう再創造していけばよいかを、具体的に示そうとしてきた。

現在のグローバリズムでは格差が広がっていくため、政府や国際機関による介入が不可欠だという主張。どういった介入が必要かと幅広く細部まで検証している。専門用語などは少なく、平易な言葉で書かれてはいるのものの、世界規模の経済政策という複雑に入り組んだ政策論は、特に経済に詳しいわけでもない僕にはついていくのにやっとだ。

また、労働者にたいして、現在の賃金下落や雇用不安を受け入れ、耐えしのぎさえすれば、グローバル化がいずれ全員の暮らしむきをよくしてくれると説く楽観論も、今や説得力を持たない。たとえ、グローバル化がGDPの成長を加速するという建て前を受け入れたとしても、それが自分たちの所得や福利厚生全般の向上につながるという保証はどこにもないのだ。政治家は経済学の曖昧な学説をもちだして、選挙民を安心させようとするが、標準的な経済理論と豊富なデータのいずれもが、労働者たちの直観の正しさを裏づけている。政府が強力な再分配政策をとらないかぎり、非熟練労働者の暮らしむきは悪くなる公算が高いのだ。

聞いたことがある主張…。だけど、何でも保護政策がいいと本書は主張しているわけではない。適切な国際組織&政府の介入という、この「適切」がどういったものか。

先進国の利益のためだけに動く国際機関は見直さなければいけない。そのまま市場を開放すれば先進国が有利になり、強い企業が勝つのは当然であり、それでは競争により経済全体を活性化させるというのが本来のグローバリズムの目的と反することになる。そのための市場をコントロールする「適切」な政策をこそ本書では主張している。すごくもっともな意見だなと思う。