『疾走』重松清/角川文庫 | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

重松 清
疾走 上
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引きこもり、家庭内暴力、放火、借金、一家離散……。14歳の少年・シュウジが背負った余りに苛烈な運命。今秋、映画公開が決定した、直木賞作家、畢生の衝撃作、待望の文庫化!


表紙が怖い。そして内容も怖い。引きこもり、家庭内暴力、放火、借金、一家離散と内容紹介されているが、他にもいじめ、死刑囚、差別問題、DVなどなど、現代社会にある厳しいテーマを全て織り込んだような凄まじい内容。この小説は「おまえ」という二人称で書かれているためか、自分が苛酷な人生を歩んでいるようで、自分がボロボロになっていくようで、ひどくつらい。本書を読んでいる間は日常生活にも支障がでるほど厳しかった。


わたしはエリのために祈ります。シュウジのために祈ります。
災いや不幸せをとりのぞくためではなく、二人が、災いや不幸せを背負ったままでも前に進めるように。
いや、前に進む必要すらないかもしれない。立ち止まっていても、うずくまっていても、体を起こす気力すらなく寝そべっていたってかまわない。
ただ絶望しないで欲しい。
わたしが祈るのは、ただそれだけなのです。


絶望の物語だった。主人公のあまりに苛酷な運命。それが乗り越えられることができる苦難の道なら主人公の未来に希望を持てる。挫折する主人公を哀れんだり、応援したりできる。だが、ここまで苛酷な状況が重なると、壊れていく主人公を当然だと受け入れてしまう。正常な精神で耐えられる人生ではない。希望の光を失い、絶望に飲み込まれ黒い穴ぼこのような目になってゆく少年。


この少年の物語に希望を見いだせなかった僕も、穴ぼこのような目をしてページを捲っていたのだろう。