- 著者: クリストファー・プリースト, 古沢 嘉通
- タイトル: 〈プラチナファンタジイ〉 奇術師
昨年度のランキングでかなり評価が高かった作品。「SFが読みたい!」海外篇2位。「このミステリーがすごい!」海外篇2位。「週刊文春ミステリーベスト10」海外篇5位。そして世界幻想文学大賞受賞作。
20世紀初頭。「瞬間移動」を得意演目とする二人の天才奇術師。生涯のライバルとなった二人の手記。その確執は子孫にまで影響を及ぼしていて、それぞれの孫であるアンドルーとケイトがその手記を読むという構成になっている。
ミステリー系のランキングに入っているがジャンルは幻想文学だろう。謎解きで読ませるというよりは、奇術師としての物語が中心。奇術を愛する二人の若者が技術を磨いていき、いかに成長して当代一の奇術師になっていくか。仇敵として複雑に絡み合い、憎しみあった二人の生涯はそれだけで読み応えがある。だが、それぞれの手記を読まねば全体像は見えてこない。そして、その手記を読む孫達によって、物語の真の姿が現れる。
すでに偽りを書くことなく、わたしは惑わしを開始している。惑わしこそ、わが人生だ。嘘はまさに最初の言葉のなかにさえ、含まれている。このあとにつづくすべてに織り込まれ、明白なところはいっさいない。わたしは真実や客観的記録や行為の目的の話であなたを誤誘導した。両手になにも隠されていないことを示したときに、重要な情報を省いたのである。そしていま、あなたは間違った方向を向いている。
アルフレット・ボーデンの手記より
本書を読み終え、解説の若島正氏の「『記述』とは実は『奇術』なのだ」ということばに深く頷く。
本書は映画『メメント』の監督によって映画化が決まっている。どんな構成になるのか楽しみだ。