退職を巡る悩みに日々を費やしていたある時期、妻の口から予期せぬ一言が飛び出した。「あれ、ちょっと
はげていない?」その瞬間、私の心は凍りついた。日々の重圧が、想像もしなかった形で現れてしまったの
だ。鏡に映る自分を見つめ、10円玉大の薄毛を発見。これが「噂の10円ハゲか」と、ある種の諦めと共に、
自分でも気づかぬうちの変化に驚愕した。
美容室へ行った時、「確かに…だけど、気にならない範囲ですよ」と慰められたが、心のどこかで不安が渦
巻いていた。
「どのくらいで治るのか?もう治らないのか?」 不安が大きかった。
私は6週間に一度の美容室に行っていたが、その都度、自分の頭皮の状態を確認した。
初めての治療から数回目の訪問時には、なかなか改善の兆しが見えなかった。治療法には個人差があると言
われていたが、不安が募るばかりであった。
この一連の出来事は、ただの薄毛の治療を超えていた。それは、人生の不確実性と向き合い、時には自分自
身を見失いそうになりながらも、前を向いて歩み続ける勇気を私に与えてくれた。
熊本へ行って、3ヶ月が過ぎた時、美容室に行った。その時、「もう大丈夫だよ。」と言われた時、
ほっと胸を下ろしたのであった。