スタートレックの
磁気シールド
実現か!?
Richard A. Lovett
for National Geographic News
for National Geographic News
November 4, 2008
最新の研究によると、強力な磁気シールドを利用すれば、太陽(恒星)からの有害な放射線や高エネルギー粒子など太陽放射をはね返して、月やさまざまな惑星を旅する宇宙飛行士を守ることができる可能性があるという。
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研究チームのリーダーで、イギリス にあるラザフォードアップルトン研究所(RAL)のプラズマ物理学者ルース・バンフォード氏は、「最新の室内実験により、磁石で安全に放射をそらすことが可能だと判明した。
今回の発見は、“スタートレック”の実現に向けて大きな前進となる」と語る。
地球上では、人間は大気によってある程度太陽放射から守られている。しかし、有害な粒子の多くは、磁気圏と呼ばれる地球の磁場によって、地球に到達する前にはじかれている。
「防御の第一線である磁場がなければ、地球上で生命が存在することはできないだろう。火星へ旅する場合、太陽放射が最も困難な問題となる。そこで、磁気圏を身に付けて持って行ったらどうだろうかと考えた」
とバンフォード氏は話す。
磁場を太陽放射シールドとして使用するアイデアが最初に登場したのは1960年代のことであるが、宇宙開発競争がしぼむ中、この発想も注目を失っていった。しかし近年、月や火星に向けた有人宇宙飛行への関心が復活し、新たに脚光を浴びることとなった。
宇宙飛行士が将来直面する危険の中で、太陽放射は最も危険な要素となり得るものである。太陽放射のほとんどは、太陽を包む大気から生じる粒子の流れである太陽風に乗って太陽からもたらされる。また、太陽大気の爆発現象である太陽フレアも地球の生命にとって致命的な影響を持つことがあり、微量であっても長くさらされればガンの原因となる場合がある。
近年まで、宇宙船をシールドで守る場合、幅100キロ以上の磁気圏を生み出すほどの非現実的な巨大磁石が必要だと考えられてきた。
「しかし、ちょっと待って欲しい。守るべき人間はずっと小さいのだから、太陽風に小さな穴を作るだけで良いはずだ」
とバンフォード氏は語る。
この考えを試すために、バンフォード氏が率いる研究チームは、磁石を使用するプロセスが含まれる核融合実験装置を借りて実験を行った。研究チームは、“宇宙船”を模した小さな物質を磁化して、荷電粒子で構成される超音速プラズマ流の中に配置した。
「うまくいかないという予想もあったが、実験は見事に成功した」。
今回の最新研究は、11月4日発行の
「Plasma Physics and Controlled Fusion」
誌に掲載されている。
アメリカ のワシントン州シアトルにあるワシントン大学の宇宙物理学者エリカ・ハーネット氏は今回の研究を受けて、「磁気シールドがうまく作用したのは驚くことではない」と話す。
数年前に、ハーネット氏の所属する研究チームは「ミニ磁気圏プラズマ推進(M2P2)」と名付けた新しい宇宙船推進システムを研究しており、今回の研究と同様の結果を得ていたという。
M2P2はバブル状の磁場を生成し、それをプラズマで満たす仕組みになっている。
宇宙空間では、バブル状の磁場が宇宙飛行士に危害を及ぼす太陽放射粒子を受け止め、太陽風とは逆向きに押される。
「宇宙飛行士を太陽放射から防ぐだけでなく、実用的な推進力を生み出すものだと考えている。ただし、このアイデアは実験室内のごく小さな規模でテストされた段階にすぎない」
とハーネット氏は話す。
バンフォード氏らの最新研究も実験室内のものであり、実際の宇宙飛行に適用する場合、いかにして宇宙飛行士を磁場にさらさないようにするかという点が大きな問題となる。
ニューヨーク州イサカに滞在する物理学者でSF作家のカール・フレデリック氏は、「魅力的なアイデアだが、磁場が宇宙船自体の内部に侵入しないようにしなければならない」と話す。
バンフォード氏も、乗組員を磁力から保護する手段を講じなければならない点は認めている。
「それでも、注意深く設計を行えば解決可能だと考えている。例えば、宇宙船の内部に釣り合うように対抗磁場を生成すれば、船外磁場の影響を打ち消すことができるだろう。あるいは、2基の宇宙船が編隊を組んで飛行し、宇宙飛行士はその一方で生活して、他方で磁場を生成するという方法も考えられる」。
Illustration courtesy Steele Hill/NASA