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齋藤孝・明大教授のコミュニケーション論
「雑談力を鍛えれば会話上手になる 」
(2013.12.11)
「会話の基本は、自己表現ではなく“他者実現”です」
◎打ち解けるのに会話力は必要ない
パソコンに向き合っている部下や同僚。軽く挨拶しただけでは返事も返ってこない。
漂うギスギスした空気――。
それを変えたくても、世代の違う部下や上司との日常の会話の糸口すら見つからない。
初対面の相手との商談。相手を何とか頷かせたいのだが、立ち込める重苦しい空気を振り払うことができない。
このように、親密なコミュニケーションの「一歩手前」で足踏みし、ストレスを抱えている人は、少なくないはずだ。
コミュニケーション論の専門家でもある齋藤孝明治大学教授は、この局面を打開するには、「話し上手ではなく、“雑談上手”になることだ」と説く。
「コミュニケーションで最も必要なことは、場の空気 をつかみ、相手との距離を縮めることです。 極端な話、“会話力”は必要ないんですね。例えば、セールストークが上手な営業マンがいるとしましょう。立て板に水で話すスキルがあったとしても、客との関係ができていなければ、話を聞いてもらえません。耳を傾けてもらうには、場を温める必要がある。 それが、雑談なのです。その重要性に気づいてもらうため、あえて“雑談力”と名付けました」
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◎自分の話を聞いてほしいと誰もが思っている
齋藤教授いわく、雑談が苦手な人は、体が固まりがちなのだとか。
「人と会う前は、軽くジャンプをして、体をゆるめておくといいですね。顔をマッサージしておくのもいいでしょう。頭ではなく、体からアプローチするのです」
では実際に面と向かったとする。いったい何から切り出せばいいのだろうか。
「何も、こちらから話題を提供する必要はありません。実は誰もが、『自分の好きなこと』を話したがっているのです。フェイスブックやツイッターが流行っているのも、みんなが好きなことを話したい証拠です。だからそのことを聞いてあげればいい。“話す”のではなく、“聞く”のです。例えば相手がペットを飼っているなら、ペットの話は鉄板です。好きで飼っているのですから。ネクタイやシャツ、目の前の人の服装を褒めるのもいいでしょう」
齋藤教授は「中身」も「結論」もいらない、と言い切る。
「男の人は特にそうなんですが、すぐに抽象的な話に持っていったり、結論を出そうとしたがります。でも、これでは雑談になりません。 雑談の目的はあくまで、その場の “アイドリング” なのです。 場が温まればいいのですから、中身がなくていいのです」
齋藤教授は、日本人が英語を苦手と考える根底に、雑談力のなさがあると感じている。
「英語を話す外国人に引け目を感じ、距離があるから、ちょっとした英会話もできないのです。ならば“雑談力”でその距離を縮めてしまえばいい。雑談の肝は、“共感すること”です。具体的には、相手の話に、『me too』と相槌を打ってしまえばいいのです。これは日本語でも同じですが、『そうそう』と言っているうちに、話が盛り上がっていくのです。実際、『英語での雑談』を大学の授業に取り入れていますが、雑談力を身につけた学生は、英会話力も飛躍的に向上しました」
◎コンビニでの対外試合で雑談力を切磋琢磨する
では、「雑談力」を磨くには、どうしたらいいだろうか。
齋藤教授はインターネット以外のメディア――本、雑誌、テレビ、ラジオなどの既存のメディアを使ってネタを仕入れている。
「ネットというのは、どうしても自分の興味のあるジャンルしか見なくなります。そして、深掘りしてしまうんですね。雑談は深掘りではなく、あちこちに話題を飛ばしていくことです。雑談に必要なのは、会話の糸口になる『フック』です。私は読書や執筆の最中、終始、テレビやラジオを流しています。そこから耳に飛び込んできたネタを、賞味期限が切れないうちに、すぐに口に出す。これで雑談には困りません」
もうひとつは「観察」だ。
「雑談相手をよく見ることです。観察したうえで、質問を繰り出す。苦手な相手ならば、雑談の前に、相手の好きなものをリサーチしておくのもいいでしょう」
齋藤教授は、コンビニでの対外試合を推奨する。
「あまり混んでいない時間帯を見計らって、店員=見も知らぬ他人に話しかけるのです。外国人のバイトならなおいいでしょう。先日も、ウズベキスタンの青年とサッカー談議で盛り上がってしまいました(笑)」
自分が愉しむのではなく、いかに相手を気分よくさせるか。
「コミュニケーションの基本は、自己表現ではなく、他者実現です。それを最も簡単に行なえるのが雑談なのです。実際、評価の高いリーダーほど、雑談力を駆使して、チームの空気を温め、かつ結束を高めているのです」
■齋藤教授の打ち解ける新提案!
齋藤教授が、「会話のシメ or とっかかり」として強く提案するのは、”さわやか握手”。
手順は簡単、
①差し出す
②微笑む
③キュッと握る
の3つだ。
「コミュニケーションは、”言葉”だけでは足りません。体ごと同調していくことが大事です。つまり握手というボディータッチで、一体感を出すのです。ポイントは微笑むこと、そして『ギュッ』ではなく『キュッ』と軽く握ることです」
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齋藤 孝 教授
1960年生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程などを経て、明治大学文学部教授。専門は、教育、コミュニケーション、身体論。