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苦境のマック、なぜ主要客・ファミリー層の“心”は離れた?
客数減の理由を店舗から考える


Business Journal 1月2日(木)7時7分配信

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苦境のマック、なぜ主要客・ファミリー層の“心”は離れた?客数減の理由を店舗から考える

東京都内のマクドナルドの店舗(「Wikipedia」より)


 日本マクドナルド(以下、マクドナルド)の業績不振が際立ってきている。

 2013年12月期の経常利益は、前年同期比58%減の100億円となった。低迷を続けるマクドナルドだが、なぜここまで不調を極めているのだろうか。

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 筆者はマーケティングコンサルタントを名乗っているのだが、データだけでなく現場を見ることをデータ以上に大事にしている。データは過去を映し出す鏡だが、現場は今と未来を映し出す鏡だからだ。

 マクドナルドの不調も、現場を見れば一目瞭然だ。

 決算発表や数値データで読めば、マクドナルド不調の主要因は、高級バーガーの販売不振と客数減ということがわかる。実際に店舗へ行き感じるのは、子どもの姿の消えたマクドナルドの姿だ。その代わり増えたのは、ビジネスパーソンと高齢者だ。

 約10年前、390円のサンキューセット(ハンバーガー、フライドポテト、ドリンク)を原動力にマクドナルドは増収増益の快進撃を始めた。当時の競合は、ロッテリアをはじめ同価格帯のハンバーガーチェーンだったが、これらを圧倒してきた。

 その後、モスバーガーやフレッシュネスバーガーといった高級志向のハンバーガーチェーンが台頭し、さらに東京都心では1個1000円もするような高級ハンバーガーショップが次々にオープンした。また、ハンバーガーチェーン店の高級化だけでなく、スターバックスコーヒーを筆頭に街中にはカフェが増え、こうした流れの中で、低価格帯で圧倒的な力を持っていたマクドナルドは、脱低価格帯路線に舵を切ったのだ。

 その象徴は、「マックカフェ」と新しいコンセプトの店舗だ。

 マックカフェにしたことで、店頭からメニュー表がなくなり、店員が一つ一つの注文をさばく時間が長くなった。店員は他のカフェのように注文をゆっくりとさばくようになり、雰囲気としては「スマイル」ではなく「オシャレ感」を醸し出すようになった。

料理を出すまでのスピードは遅くなり、その現状を打開するため、今年1月には「ENJOY! 60秒サービス」と銘打たれた、注文から60秒で商品を提供できなければハンバーガー無料券をお客にプレセントするキャンペーンを実施。社内の意識改革、お客さんへのイメージ改革の意味を込めて実施したものだが、現場を見る限り、効果が発揮されたとは思えなかった。

確かに、以前より大きく客層は2分されていて、大人が主流であるOL・ビジネスマンからは、子供たちが周囲で騒いでいて騒々しい店内で落ち着いてハンバーガーを食べたいとは思わないという意見と、子供連れファミリー層の楽しくワイワイと!という意見が対立していた。
マクドナルドがどちらへ趣きを置くか、地域の客層や利用者の目的に店舗を合わせられる経営が出来るかで流れが大きく変わる。何も、店舗が統一される必要なないと考える。
良い例が、中華レストラン?“餃子の王将”ではないだろうか。各店舗によってメニューも違い、店舗独自のメニューも認めている。これを実現しているのは、店舗にて実際に調理をしているからこそ出来ることなのだが、さて工場で一括生産をしているマクドナルドは如何なのか。
ここはマクドナルド本部の舵取りと真の力量が試されるところだろう。


●離れたファミリー層

 マックカフェにした結果、マクドナルドのメイン顧客であったファミリー層にとって、みんなで楽しく食事をできる場所ではなくなってしまった。カフェにしたことで、店は以前よりも静かになった。AC電源も設けたことで増えたパソコンで仕事をするビジネスパーソンや高齢者が、ゆっくりくつろいで長居ができる場所になってしまった。

 その結果、店舗に行っても空いている席数は少なくなり、活気が減り落ち着いてしまった店内の雰囲気、メニューもなく注文しづらい状況に、ファミリー層は愛想を尽かしてしまったのだ。

 当然、客数は減るし、コーヒー一杯で仕事をしたり、寄り合いをする客が増えれば、おのずと商品販売数量は減り、売り上げは下がる。これがマクドナルド不振の根本原因だ。


 筆者が店頭での定点観測をしている感触としては、ファミリー層は以前より50%減くらいの印象を受ける。それだけでなく店頭に来たものの、空いた席がなく帰ってしまう客も多いのだ。店を見渡せば、2人席、4人席に1人で座りパソコンをしていたり、寝ている客もいる。

 ファミリー層で気軽に入れること、子どもがワイワイガヤガヤ気兼ねなく楽しめることは、味以上にマクドナルドの価値だったのだが、同社は自らその価値を手放してしまった。
そして同社を離れたファミリー層は、増加傾向にあるガストやサイゼリヤなど低価格帯ファミリーレストランや飲食メニューの充実著しいコンビニ食に流出していったのだ。


●低迷は長引くと考える理由

 子どもの消えたマクドナルドは、今後、苦境も続くことが予想される。なぜなら、同社のマーケティングは幼児期からの味の刷り込みにもあるからだ。
これは大手外食チェーンにおける暗黙の法則だ。

同社やコカ・コーラなどは、子どもの頃からその味を覚えさせることによって、自社商品を口にするという行動を習慣としても刷り込んでいくのだ。

ファミリー層の断絶を招いた日本におけるマクドナルドの失策の影響は、数年~十数年にわたって及んでいくことになる。

 そして、マクドナルドに活気が少なくなったことが報道されればされるほど、人々の心は離れていく。人は人気のない店には行きにくいものだ。真偽のほどはともかく、同社の商品に関するさまざまな健康への悪影響を示唆する情報が流れる中で、同社の商品を積極的に子どもに食べさせたいと思う親は少ない。
今まで気にならなかった悪い部分が、徐々に気になっていくものだ。このあたりも同社にはボディブローのように響いていく。

 新しいカサノバCEO体制のもと、ハッピーセットのCMを流すなどファミリー層の再誘客に躍起になっているが、マクドナルドの苦戦はまだまだ続くだろう。


新井庸志/株式会社ホワイトナイト代表、マーケティングコンサルタント




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  最終更新:1月2日(木)8時3分

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