ナショナルジオグラフィック ニュース



 手の温もりで
    人間関係が変わる


 — 相手に好感を持ってもらうためには、
温かいものを飲みながら話をするのが効果的?


John Roach
for National Geographic News
October 23, 2008


初対面の相手に好感を持ってもらうためには、温かいものを飲みながら話をするのが効果的だということが、最新の研究により明らかになった。

   手の温もりで人間関係が変わる
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今回の実験では、温かいコーヒーを数秒間手に持った人の方が、冷たいコーヒーを持った人よりも、相手に対して好印象を持つ度合いが高かった。
また別の実験では、治療用の温熱パッドを短時間手に当てた人の方が、冷却パックを手に当てた人に比べ、その後で自分の欲しいものよりも友人への贈り物を選ぶ傾向が強いという結果が得られた。

コロラド大学ボルダー校でマーケティング論の教授職にあるローレンス・ウィリアムズ氏は、このような実験結果から、人は体が温まると無意識のうちに他者への振る舞いが友好的になるのではないかと考えている。
同氏は「体の世界と心の世界の間には重要なつながりがある」と話す。

ペンシルバニア大学のマーケティング論の准教授ジョナ・バーガー氏によると、今回の研究結果は、人間の振る舞いが無意識のうちに環境の影響を受けているという説を裏付けるものだという。
同氏は以前、投票場所が人々の投票行動に影響を与えるという研究結果を発表したことがある。

バーガー氏は「いわゆる“キャリーオーバー効果”によって、温かいものに手を触れている人は、相手を温かい人物だと認識するのだろう」と話す。
もちろん、体が温かさを感じること以上に重要な要素はあるのだが、「相手に好感を持つようになる最後の一歩を、温かい飲み物などが後押ししてくれるのではないか」とバーガー氏は言う。

研究チームのリーダーを務めたウィリアムズ氏によると、母親に抱かれたときなどに感じる身体的な温もりと、心の広さや優しさなどの性格を「温かい」という言葉で比喩的に表現することの関係性については、これまでの研究で既に明らかにされているが、今回の研究結果はそれを踏まえたものだという。

また最近では、体が温かさを感じる場合と心理的な温かさを感じる場合とでは、どちらも脳の同じ部位で情報が処理されているという研究結果も発表されている。
ウィリアムズ氏は「新たな人間関係を築こうとする際には、こうした事実を心に留めておくとよいだろう」と話している。


Photograph by Taylor S. Kennedy/NGS