焼け跡
電話で呼び出され、家に戻るとそこには焦げた残骸があった。
俺の家が出火元で、何軒かを類焼させる火事だった。
あれは、15歳の年だったろうか。
その夜、俺は家を失った。
長い長い取調べで調書を取られた。
そもそも俺は、友人の家にプチ家出をしていて、火元になりようがなかった。
父の仕事の縁で、社宅に住んだのが5年。
俺は家だけではなく、幼馴染の何人かも失っていたことにその後気付いた。
ある者は敵意を示し、ある者は会話を拒否するようになった。
まぁ仕方がない。
その頃すでに、俺は自分を繕ったり、無理をして気にしないふりをするガキだった。
本当は、深く深く傷ついていた。
救いは、同学年の仲間たちからは、思いやりしか受けなかったことだ。
なぜなら、類焼した家に同学年の家がなかったからだ。
父はあの火事についてどう思っていたのだろう。
少なくとも、母と父で、俺に対する態度はまったく違っていた。
父は、死ぬまで一度もあの火事について口にしなかった。
誰かを責めるどころか、話題にすることを避けていた。
母は、違った。
ことあるごとに、俺が火元なのだとなじった。
そんなことはない、と証明されているはずなのに
頑なに原因が俺だと信じ、責めた。
それがまるで、母のアイデンティティであるかのように。
それだけ多くのものを、あの火が母から奪ったのだ。
母と、俺の間にある溝は、もともと小さくなかったが
あの焼け跡を去ってから、取り返しがつかないほど大きくなっていった。