父の最期 | 線路沿いの道

父の最期

漂白したように白い壁。

実際、漂白しているのだろうか。

病院の壁。


父の肌は、土色と黄色の混ざった

肝臓をやられた人間に特有の

切ないほどに干からびた

死相を濃く見せる色に、変わっていた。


情けないねぇ。


父は、そう云った。

やつれて、こけた頬。

リネンの下で丸めた、子供のように細い足。


すでに自分で歩くことはできず

間もなく、麻酔で眠った父。


あのとき、父は

自分でなにもできなくなったことを

「情けない」と愚痴たのだろう。


父はあれから、2週間で逝った。

俺はまだ、生きている。


情けないのは、俺のほうだ。