映画:マイケル・ジャクソン THIS IS IT
ぐっときた。
エンドロールが終わり、どこからともなく観客から拍手が湧き起こったのだ。
これまでも良い映画ではそういうことがあった。
ただ、今回それはとても沢山で、結構長かった。
私も、もちろん賛同した。
ライブで送るように一生懸命に響かせて。
もう彼には届かないが。
1曲目の『スタート・サムシング』から思わず体が反応してしまう。映画館でなければ踊りたかった。
この曲はライブスタートの曲としてツアーでも良く使われていた。
ここでのマイケルは痩せてはいるが、動きはとても50歳には見えない。
ピタ、ピタッとリズムを合わせる。
この場所に指を置いて、と言ったら、そこに100発100中で置くぐらい寸分の違いも無く。
バンドメンバーにも厳しくリズムを合わせさせる。
全ての音もリズムもマイケルが把握している。オリジナルの音に合わさせる。
いや、それはマイケルの記憶に合わせるだけなのかもしれない。
だが踊り続けるマイケルにとっては体内のリズム、音と合わないのは致命的なのだろう。
『JAM』も同様。
あれだけ激しいダンスをダンサーとシンクロさせながら、ある瞬間ピタッとストップさせる。
心臓への負担を考えれば、危険この上ない。彼が30代の頃と同じ演出を使う。
映像ではリハーサルだから当然100パーセントの力ではやらない。
だが、後半にはいつの間にかフルに近い長さをやったりしている。
『ヒューマン・ネイチャー』はバラードの中でも、とても好きな曲だ。流麗で繊細な表現が素晴らしい。
ここでの声を聴いていてもマイケルが衰えているとは感じない。
『スムーズ・クリミナル』は映画「ムーンウォーカー」でも有名な曲だ。
東方神起が3rdアルバムのオープニングに使った『TRICK』に一部引用されていると思われる部分がある(それを知ったとき凄く嬉しかった!)。
今回用に新しく映像を準備していた。ここの特殊効果は秀逸だが、見る人の楽しみの為にしゃべらないでおく。
『ザ・ウェイ・ユー・メイク・ミー・フィール』はグラミー賞でもパフォーマンスした曲。
この曲は静から動へ移行する曲で、動に移行する瞬間がとってもかっこいい。マイケルはしきりにタイミング、間を気にしていた。
『キャント・ストップ・ラヴィング・ユー』で組むのはアジア人。
この女性も含めギタリストも女性だが、女性と絡むマイケルは異様に楽しそう。当たり前かもしれないが、これほどまでに無邪気に彼が楽しそうにしているのが、とても微笑ましく思える。
あまりに盛り上がってついにフルで歌ってしまう。
「ウオームアップしてるんだから」とマイケルは怒るが、あれだけ良い雰囲気を見せられたら止めにくい。
『スリラー』も今回用にMVを用意していた。但しマイケルは参加してないように見える。これもどこからマイケルが飛び出すかは実際見てほしい。
『今夜はビート・イット』『ブラック・オア・ホワイト』でも女性ギタリストと絡む。とにかく技術的には厳しいマイケルだが、アドバイスはとてもあたたかい。
『マン・イン・ザ・ミラー』もとても好きな曲だ。優しさと力強さを兼ね備えた曲で、ここでも彼の若々しい声がよくわかる。
はっきり言ってこの公演を50回もこなせるようには見えない。とても卓越したスピードと元気さだが、これだけ凄いステージを続けたらツアー途中で倒れてしまうと思う。
しかし年齢が半分位のダンサーとシンクロし、30代の頃と変わらない高く美しい響きを聴かせるマイケルは、まだまだキングと呼ぶに相応しいエンターテイナーであったということは間違いない。
完全なるステージではないこの映画を見せることに、ジャネットは「マイケルは嫌がると思う」と言った。
しかしマイケルが完全を求める姿は、確実に観客に伝わったのではないだろうか。
映画が終わりロビーに出ると、親子連れやカップルが思い思いに看板やポスターの前で記念撮影していた。
これは記録映画というより、ライブだったのだろう。

