元大関高安、念願の初優勝に手が届くか。
終盤、大きな関心を集める中、13日目は霧馬山(きりばやま)と対戦しました。 4対3と、対戦成績こそ上回っているものの、このところ3連敗。高安が西前頭4枚目に対して、霧馬山は小結。簡単な相手ではありません。
立ち合い、高安は右からガツーンとあたって突き、右からさっと突き落とし。これが一瞬にして決まり、霧馬山はなにもできませんでした。
これで3敗を守り、優勝争いは最終盤の緊迫した時間に突入しました。
ここまでくれば、あとは自分の持てる力、技、経験などすべてを出し切れるかどうか、だけです。
高安はこれまで何度も優勝争いに加わり、悔しい思いを味わっています。悔やまれるのが、今年3月の春場所。優勝決定戦で若隆景を追い込みながら、土俵際で逆転されました。
本人は敗れた後「力が足りなかった」と、淡々と語りましたが、その心中(しんちゅう)は、いかばかりだったか。
すごいと思ったのは、あのとき「まだまだ稽古が足りない」と語ったことを、高安はそのあと真剣に追及してきたこと。
35歳という、引退も考えられる年齢ながら、若隆景の部屋、さらに横綱照ノ富士の胸を借りるために出げいこへ。
先場所は部屋にコロナ感染者が出て休場を余儀なくされながらも、黙々と稽古を積んできました。
努力するのは、プロの力士として当たり前ですが、高安のそれは群を抜いています。
得意技は、突っ張り、押し相撲。左四つになって力を発揮するものの、決して器用な力士ではありません。
それでも、入門した当時の鳴戸部屋で、兄弟子稀勢の里(元横綱。現二所ノ関親方)らの胸を借りて鍛えてきました。稀勢の里との、汗飛び散る激しい稽古、巡業先で、重いタイヤを黙々と引いていた姿が、今も目に焼き付いています。
入門直後、稽古がつらくて何度も部屋を脱走した高安。そういう力士に、最高優勝のカップを、ぜひ、抱かせてやりたい。
浪花節調です、本日は…。