元横綱稀勢の里が率いる新二所ノ関部屋が、相撲界に波紋を起こしそうです。
先日、茨城県阿見町(あみまち)に完成した二所ノ関部屋の部屋開きが行われました。
敷地は1800平方メートル、土俵は2面あり、トレーニング室を備え、風呂も一度に10人は入れるという大きさ。さらにはバスケットボールのコートまで備えているそうです。
地価の高い東京都内ではなかなかこうはいきませんが、大変な規模と施設です。従来の相撲部屋のイメージをガラっと変えそうです。
弟子たちが「力士第一に考えられた環境と稽古ができる部屋」と語っているのも、決してオーバーではないようです。
以前、このブログでも書きましたが(3月17日付)、2面の土俵を備えた相撲部屋というのは、これまで見たことがありません。
相撲部屋は、1面の土俵を中心に、土俵に上がらない力士は、その周りで四股を踏んだりテッポウ柱を突き、すり足など基礎的な運動に取り組みます。
しかし土俵周りのスペースは意外に狭い。しかも相撲界は稽古も番付順ですから、土俵に上がっての稽古は、冬であろうが、自分の出番がくるまでじっと見守るしかありません。
四股もテッポウもすり足も、相撲には欠かせない稽古です。ただ、相撲は相手あっての競技です。もう少し実践的な稽古が必要ではないのか。部屋を訪ねるたびに感じてきました。
二所ノ関部屋の弟子たちが「効率的な稽古ができる」と喜んでいるのを聞くと、彼らも同じようなことを感じていたんだなと思います。
この一つだけとっても、他の相撲部屋、親方にはかなりの刺激、衝撃になっていることは確かで、今後大きな論議を巻き起こすかもしれません。
二所ノ関部屋は、相撲界ではいわゆる名門部屋。横綱大鵬をはじめ、多くの関取を輩出してきました。かつてプロレスで活躍した力道山も、二所ノ関部屋の力士でした。
故玉ノ海梅吉さん(最高位関脇)は戦前、親方の急死で、26歳の若さで現役力士のまま二所ノ関部屋の親方(二枚鑑札)となり、戦前、戦中に部屋を運営してきました。
玉ノ海さんが入門したころは、部屋に稽古場はなく、両国の左官屋の物置の二階で三人の力士と生活。夜明け前に立浪部屋に稽古に出かけ、「こんなに早く来たら電気代がもったいない!」と怒鳴られたといいます。
しかし「何と言われようと、そうしなければ、私たち他所の若者は、十分な稽古を重ねることが出来ないのだ」(『これが大相撲だ』)と歯を食いしばって稽古に励み、今日の隆盛の土台を築いてきました。
その玉ノ海さんに、新二所ノ関部屋の感想を聞いてみたい気もします。
新部屋の親方、力士には、新しい歴史をつくりだしていく大きな責任が生まれてきました。
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