AORの代表的シンガー、Boz Scaggsの80年の作品。


この作品は、74年の“Silk Degrees”、76年の“Down Two Then Left”と

並べられBoz ScaggsのAOR三部作と呼ばれているそうな。


全二作と変わらず、David Hungate,Jeff Porcaro,David PaichといったTOTOの面々の

バックアップを受けながらも、やはり4年も経つと時代も変わり求められる音が変わるのか、

サウンドは他の二作とはかなり変わってしまっています。

70年代のBozが好きな僕にとっては、残念なことです。


曲のクオリティーに若干のばらつきはありつつも

サウンドの統一感からか、アルバムを通して何度でも聴ける全二作とは異なり、

この“Middle Man”は、80年代という時代のせいなのか、

キラキラしたシンセサイザーとハードなエッジのギターがしんどいアレンジの曲が何曲もあり、

若干後ろめたさを覚えつつもスキップボタンに手が伸びてしまう、そんなアルバムです。

Bozが時折見せる、彼のルーツとも思える泥臭いヴォーカルアプローチが取られた曲も

所謂“ロマンティック・ハードネス”なサウンドとは相性が悪いように思われてなりません。


とまぁ、ボロクソにけなしているようですが、

このアルバム、嫌いかと言われれば、全くそんなことはなく

むしろ最近はこのアルバムばかり聴いていたりします。


それは何故かといえば、

アルバム一曲目の“Jojo”と三曲目の“Simone”が、あまりにも名曲だから。


この二曲、とにかく良く出来ています。

メロウかつグルーヴィ、それだけでAORファンを唸らせられそうですが、

キーボード、特にピアノの、全二作では聴かなかったきらびやかな音色、

そして、David Fosterが参加してるためもあるのでしょうか、

要所要所に見られる、派手かつ効果的なキメによって見事に構築されている世界観は

それまでの作品では決して見られなかったものです。

この二曲によってBoz ScaggsのAORな側面が完成を迎えているように思われます。

録音技術の進歩によるものもあるのでしょうか、

とてもスッキリした仕上がりで非常に聴き心地が良いです。


全曲通して安心して聴ける「名盤」とはいきませんが、

2曲の大傑作を収録した「重要作品」であることは間違えありません。


“Jojo”と“Simone”の二曲の為だけに購入したとしても

決して高い買い物ではありませんよ。

是非是非、聴いてみてください!