夏になりました。
夏になると、小野不由美の『屍鬼』が読みたくなり、PS2の『白中探検部』がやりたくなり、スピッツの『ホタル』が聴きたくなります。最近よく田舎の夢をみます。のすたるじー。
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・西條奈加『大川契り―善人長屋―』新潮社 (2015/11/20)
・紫野貴李『前夜の航跡』 新潮社 (2010/11)
・平谷美樹『でんでら国』小学館 (2015/1/14)
・山田宗樹『百年法 上・下』角川書店 (2012/7/28)
・山下貴光『屋上ミサイル』 宝島社 (2009/1/10)、『屋上ミサイル~謎のメッセージ』宝島社 (2012/5/11)
・角田光代『八日目の蝉』中央公論新社 (2007/03)
・アベル・ボナール『友情論』中央公論社 (1996/12)
・ガルシア=マルケス『エレンディラ』筑摩書房 (1988/12/1)
・西條奈加『大川契り―善人長屋―』
――スリに詐欺師に美人局、悪党ぞろいの善人長屋に迷い込んだ、人助けが生き甲斐の真の善人・加助。あふれる善意で次々持ち帰る面倒の種に住人たちは辟易。しかも拾った行き倒れが盗賊の一味と判明し、そのとばっちりで差配の母娘が囚われた。長屋の知恵を結集し、二人を無事に救い出せ! 人情ピカレスク時代小説、待望の最新刊。――
シリーズ第三弾。今回はヒロインお縫ちゃんの家族の話が多かった印象。
両親の驚きの過去とか、家族を毛嫌いする姉の、その悲しい理由とかですね。
美人局兄弟の弟・文吉との微妙な距離感も縮まったような気もしないでもない感じです。
その分、加助があんまり活躍しないというか、最初に厄介ごと拾ってきて長屋のみんなが解決して終わりというのが多かった。
前二作で加助の過去の話もしてしまったので、今回はお縫ちゃん一家の話だったということかもしれませんが。
もっとこう、ばれそうになるとか、ひやひやする展開も読みたいですね。
連作短編としては一話一話がまとまっていていい話です。『雁金貸し』の証文のトリックなど感心しました。
長い目で追いたいタイトルですね。
・紫野貴李『前夜の航跡』
――海に喚ばれた魂を、その美しき仏師は浄めるという。永いこと、あなたとの再会を待ちわびていた―。青年将校たちに訪れた奇跡。涙に彩られた異界との邂逅。第22回「日本ファンタジーノベル大賞」大賞受賞作。――
ファンタジーノベル大賞ですが、短編集なんですね、びっくり。
一応連作ですが、語り手も都度変わります。共通して出てくるのが仏師の笠崎亮佑(もしくは彼の彫った何か)。彼の作品には不思議な力が宿り、死者と現世をつなぐ鍵になります。
でもこの作品の味は時代の世界観ですねなんといっても。
昭和初期、帝国海軍、青年将校。いい。
いいけど、個人的には! 第一話の『左手の霊示』のシリーズでもっと読みたかった。なんなら全部このシリーズでよかった。事故で左腕を失った芹川中尉が、笠崎の彫った霊に反応する義手を着け、海軍諜報部第四課(丁種特務班)という幽霊専門の部署で活躍するという話です。上司の支倉のキャラクターもいいし、わくわく感半端なことではなかった。
他の作品も悪くないのですが、結局最後に笠崎の仏像が全部解決してしまうのがわかってしまって、悪くないのですがうーん。
続編あるなら読みたいです! 期待。
・平谷美樹『でんでら国』
――時は幕末、陸奥国八戸藩と南部藩に挟まれた小さな国、外館藩西根通大平村が舞台。大平村には、60歳になると全ての役割を解かれ、御山参りをする習わしがあった。それは食い扶持を減らす為の姥捨ての旅とも囁かれていた。一方、代官所は、どんな飢饉の年でも、きちんと年貢米を納める大平村に不審を抱く。老人の口減らしだけで、重い年貢を納めることができるのか、もしや「隠田」を開墾しているのではないか…。隠田は死罪に当たる時代、真実を暴きたい代官所と村人との攻防戦が始まる。老人達の知恵と勇気が、役人達を翻弄、果たして大平村の運命やいかに…?痛快!幕末老人エンタテインメント。――
すっかり時代劇の人となってしまいましたね、SFはもう書いていないんでしょうか。
舞台は東北。確か作者は岩手出身でしたっけ。方言のまま書いたら読むの大変なんでしょうけど、標準語を喋る田舎のじいちゃんたちはちょっとシュールでした。
細かいところはさておき。
姥捨ての大平村と、老人たちの暮らすでんでら国。それを見つけたい役人の攻防です。
子殺しより姥捨てのほうがいいのか悪いのか、呆けた老人はどうしたらいいのか、考えさせられる内容です。
筋はエンターテイメント寄りなので、元気に山を駆け回る老人たちの躍動感や上手いこと騙される役人の対比がコミカルで面白いです。
でも少し登場人物がスーパーマン過ぎる気がしました。
ただ読んでいると、どうしても現代と比較してしまいます。
でんでら国はよくできた共同体ですが、言っても老老介護です。ひとたび病なんか流行ればえらいことになるでしょうし、体力的な面もあります。
これが現代で起きたらどうでしょう。老人はみんな自給自足で頑張ってね! てことですよ。
うん、やっぱり、そういうわけにはいかんでしょうなあ。
・山田宗樹『百年法 上・下』
――原爆が6発落とされた日本。敗戦の絶望の中、国はアメリカ発の不老技術“HAVI”を導入した。すがりつくように“永遠の若さ”を得た日本国民。しかし、世代交代を促すため、不老処置を受けた者は100年後に死ななければならないという法律“生存制限法”も併せて成立していた。そして、西暦2048年。実際には訪れることはないと思っていた100年目の“死の強制”が、いよいよ間近に迫っていた。経済衰退、少子高齢化、格差社会…国難を迎えるこの国に捧げる、衝撃の問題作。――
知人に勧められて。
これもちょっと『でんでら国』と似ている話ではありますね。あちらが自主的なものだとしたら、こちらは強制的な姥捨て。テイストもだいぶシリアスです。
不老不死となった日本人の、滞った社会を払拭すべく施行される百年法。その成立を巡る攻防や、対象となった人々の心情、政治家と市民の温度差。それらを語り手を変えながら、いろんな人間の角度から見ていく話です。最初は。後半は施行された百年法に対する反対やテロ、逃亡者などが絡み、主人公も定まってきて手に汗握る感じです。
個人的には読みやすい文章ではなかったので結構頑張りました。正直に言えば、面白くなったのは下巻の後半以降です。
登場人物が多く、視点もよく変わり、時代も飛ぶので把握するのが大変でした。
近未来の描写はリアリティがあるものの、服装などはほとんど変わっていないんでしょうかね。スーツの人が多くてよくわかりませんでした。昆虫食はちょっと……。
ビジュアル化したら人気出そうな作品です。不老なのでみんな若いし。実年齢は100歳とかなんですけどね。
でもいくら見た目が若いとはいえ、ジェネレーションギャップくらいありますよね。あと口調が若いです。相応の分別ってつかないものですかね。90歳の女性が「あたし」っていうのはどうも違和感がありました。
書きたいストーリーがあって、登場人物はその通りに動いている印象です。牛島大統領は好きです。
でもその分、世界観はしっかり出来ていて、こんな世界には住みたくないなあと思いました。閉塞感たまらないですね!
最後の方のセリフで、「結局百年法って五十年しかもたなかったんだね」というのが効いていました。
アニメ化してみてほしいです。
・山下貴光『屋上ミサイル』
――大統領がテロ組織に拉致監禁されるという大事件がアメリカで発生していたものの―日本の高校生たちにとって、それは遠い国の出来事だった。それよりも、もっと重要なことがある。例えば、校舎の屋上でスケッチをすることだとか。美術の課題のため、屋上にのぼった高校二年生の辻尾アカネ。そこで、リーゼント頭の不良・国重嘉人や、願掛けのため言葉を封印した沢木淳之介、自殺願望を持つ平原啓太と知り合う。屋上への愛情が共通しているということから、国重の強引な提案で“屋上部”を結成することになった四人。屋上の平和を守るため、通行人を襲う罰神様騒動、陸上部のマドンナ・ストーカー事件、殺し屋との遭遇などに巻き込まれることになる。それらはすべて、ひとつの事件に繋がっていた!『このミステリーがすごい!』大賞第7回大賞受賞作。――
このミスっぽいっちゃあぽい。意外としっかりした本格ものって入賞しないですからね。
ライトノベルに近い作品です。キャラクターはしっかりしているし、会話もテンポがいい。
でも選評でも言うように、ミステリー部分が全部「偶然」じゃ駄目じゃないかな。
屋上部というのも、設定はいいけど活かされていない感じがしてしまうし。いや面白いんですけどね。
舞台も、ミサイルが落とされるかもしれない日本、という非日常感があってよいと思いますし。
いっそ、国重が全部仕組んでたとかだったら納得いくんですよ。最初の強引な屋上部結成とか、いろんな偶然とか。というかもうそうじゃないとおかしいんですよ。
だからこれはそういう話でいいですか。そうですか。
・『屋上ミサイル~謎のメッセージ』
――『このミステリーがすごい! 』大賞・大賞受賞作で、日本テレビ系「超再現! ミステリー」でも話題の『屋上ミサイル』、待望の続編です! 高校の屋上を愛する「屋上部」――デザイン科の辻尾アカネにリーゼント頭の不良・国重嘉人、恋愛に一途な沢木淳之介、自殺願望を持つバンドマン・平原啓太――の間には不穏な空気が流れていた。ボヤ騒ぎや切り裂かれた油彩画、連続暴行事件など、校内で事件が頻発していた。被害者たちは誰もが口を閉ざし、犯人の特徴を口にしない。一連の事件の犯人に国重が疑われ、無実を信じるアカネは、屋上部の面々と真犯人探しを開始することに。しかし、さらに4人目の被害者が出てしまい……。――
ということで続編。いや、面白いんですよ? 納得いかないだけで。
でも今回は前ほどではないです。相変わらずキャラクターはいいんですけど。
前回の非日常はなくなってしまったし、ストーリーの展開上、国重ほとんど活躍しないし、というか口調変わってないですか。「~っつの」を多用していた気がするんだけど気のせいですか。
細かいとこ言えばやっぱり偶然がね、強い世界ですね。前ほど前面には出てこないけども。
解決方法は相変わらず暴力だし。黒幕が微妙だし。殺し屋出てこなかったし。前作の最初で言っていた「別の辻尾さん」は伏線じゃなかったのかな。眼鏡掛けて初めて顔が分かった、とか。絡んでこないのかな。
もういっそ違うレーベルでラノベとして出してくれた方が潔い気がします。
出たら買うから。続きですっきり大逆転してくれることを願っています。
・角田光代『八日目の蝉』
――逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか−−理性をゆるがす愛があり、罪にもそそぐ光があった。家族という枠組みの意味を探る、著者初めての長篇サスペンス。――
知人に勧められて2。
角田光代は2.3作品読んだくらい。日常描写が上手ですよね。
ドラマ化、映画化もした有名な作品です。不倫相手の子供を誘拐して育てた女の話。
逃げ回る性質上、関わった人物たちのその後が不明なのが消化不良感はありつつも、筆力は圧倒的です。
一人称なんですが、悪いのは周りであって自分ではない、という意識をひしひしと感じてしまい、ばれそうになるたびにひやひやしてしまいます。冷静に考えると犯罪なんだけど、そう思わせないです。
エンゼルホームの細かな描写も凄いですが、小豆島の風景描写がもはや懐かしさを感じさせるのには舌を巻きました。
後半、希和子が捕まってからの薫の生活環境の変化が読んでいると苦しいです。
最初からこの家族と暮らしていたら知らなかったのに、幼いころに刻まれてしまった原風景が辛いです。この道を行けば海が見えて、なんて。
長い間苦悩して、やがて自分は特別じゃないことに気づくまでのお話でした。上手です。
ただ個人的には、ちょっとセンチメンタル過ぎて鼻白むところも無きにしも非ずでした。
あんまり女性作家好きじゃないのか……?
・アベル・ボナール『友情論』
――真の友、真の友情とはどんなものか。男女間の友情は可能なのか。可能ならばそれはどんな形を採るのか。友情と恋愛の相違は。――詩人の感性とモラリストの知性に貫かれた珠玉のようなことばを通して知る友情、恋愛、そして人生。随想『子供時代』を併録。――
訳者の大塚幸男に『アドルフ』ではまってしまいました。
内容は結構、選民思想入っているところもありつつ、なるほどと思うところもあり。
同じ境遇で同じ不満を持つ者同士の意気投合は真の友情じゃない、というのはあれですね、学校や職場の友人関係ってことですかね。なるほどまあ確かにそういわれれば。
男女間の友情は存在しないとも言っていますね。行為がないだけの恋愛だと。うーん、言い得て妙です。年の離れた男女間でも、そこにどんな希望も願望も存在しないと言えるのか? と。
この論でいくと、本当に友人なんて生涯に一人巡りあえれば幸運という気がしてきます。
文体は簡潔で詩的で素敵でした。
・ガルシア=マルケス『エレンディラ』
――大人のための残酷物語として書かれたといわれる中・短篇。
「孤独と死」をモチーフに、大著『族長の秋』につらなるマルケスの真価を発揮した作品集。――
『百年の孤独』で有名な小説家です。実はまだ未読です。
これは、訳者の力? 原文? 衝撃走る文体ですねこれ。
もう、表現がいちいち素敵なんです。読んだことないタイプ。比喩なのかなんなのか、理解できないところもありますがそういうところも含めていい。
第一行目からして、「――雨が降り出して三日目、家の中で殺した蟹の山のような死骸の始末に困って、ペラーヨは水びたしの中庭を越え、浜へ捨てに出かけた。――(大きな翼のある、ひどく年取った男)」ですから。どういうこと!? となりますよそりゃあ。
だって人物描写で、堕落した天使にそっくりだった、なんて形容しますか? 恰好良すぎだろお。長い行列を、まるで背骨が人間でできた大蛇のようだった、とかもうね。
短編集なんですけど、微妙に同じ登場人物がちらっと出てきていいです。
吉田篤弘はこの影響を受けているような気配がします。
他のも読みます!
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夏にしたいことが読書とゲームって、とお思いかもしれませんが、大人になると夏ってそんなにやりたいこと出来ないことに気づくんですよね。
夏休み、うらやましいなあ。やりたいことはやれる今のうちにやっておいて損はないです。
ではまた。さようなら。
『お休みの間、悪魔に肉体を乗っ取られぬようお気をつけて・・・・。』