奇跡のツイン | 読書日記

読書日記

神郡が読んだ本の感想や、諸雑記を書いていくブログ。
知り合いには見せられないなあ。

お笑い芸人以外で、成人しているのに同じ服を着ている双子を初めて見ました。





・新井素子『窓のあちら側』出版芸術社 (2007/02)
・山崎ナオコーラ『可愛い世の中』講談社 (2015/5/20)
・今村友紀『クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰』河出書房新社 (2011/11/11)
・サド『短篇集 恋の罪』岩波書店 (1996/3/18)

柴田勝家『ニルヤの島』は読了ならず。後半が面白いという事だったのですが行きつきませんでした。また余裕がある時にチャレンジしましょう。



・新井素子『窓のあちら側』

――山で迷子になった少年・信彦は、ピアノの音に誘われて入った館で、吸い込まれるような深い緑の髪をした少女に出会う。やがて青年になった信彦と、彼が愛した女性・明日香を襲う哀しく切ない運命とは?八十一年度星雲賞受賞「グリーン・レクイエム」。未来都市に流れ着いた少女を巡る壮大な物語「ネプチューン」、名シリーズ「星へ行く船」の第二作「雨の降る星 遠い夢」等、日本SFを語る上で欠かせない名作+単行本未収録三編。――


時々読みたくなる作家です。話し言葉の文体が妙にテンポ良く、内容もエンタメ一辺倒ではなく読み終わった後なにか考えさせるところを持った小説。でも読んでいると80年代くらいの少女漫画タッチで再生されます。
「日本SFを語る上で欠かせない」のかどうかは詳しくないのでわかりませんが、『グリーンレクイエム』は一度読んでみたいと思っていた作品。

うん、異星人と地球人の悲恋、ですね。必ずしも侵略者ではないが、地球にとっては甚大な害となる存在との三者三様の接し方。敵対、憐憫、愛情の入り混じるサイエンスフィクション、かな。
普通に出てきますよね、宇宙人。

他に『ネプチューン』『雨の降る星 遠い夢』『季節のお話 一月―雪、八月―蝉、十二月―夜』『眠い、ねむうい由紀子』『影絵の街にて』『大きなくすの木の下で』所収。
色をテーマにした短編集ということで、イメージしやすい話が多かったです。

個人的には『大きなくすの木の下で』という短編が好きでした。
くすの木の下には悪魔(本人は否定するが)がいて、少女の願いを叶えてくれる。代償は本人が必要ないと感じたものでいいし、やめたくなったらまたやり直しも出来る。
そんな一見いいとこどりに見える悪魔の目的は……。
自分だったらまんまとはまってしまうだろうなと思いつつ。最後少しぞっとしました。



・山崎ナオコーラ『可愛い世の中』

――芳香剤のメーカーで働く地味な会社員、豆子は、自身の結婚式を機に、金銭感覚が人生と共に変化していくことの面白さを発見する。決して「モテ」を追求することなく、社会人としての魅力をアップしていきたい。退職して、「香りのビジネス」を友人と起こそうと画策する。香水に、セクシーではなく、経済力という魅力を!――


あらすじほど前向きな作品ではないことにまず驚きます。世相を反映した社会的な話でもあります。サクセスストーリーでもたぶんない。痛いところついています。

主人公の豆子(まめこ)は四人姉妹の二女で、派遣社員の長女花、ニートの三女草子、主婦の四女星がいます。それぞれ人生の価値観が違っていて、豆子の考えも人とは違う。

豆子は頑固というかこだわりが強すぎて周囲と相容れない点があります。男性が働き女性が家庭を守るという風潮への疑念とか、女性的魅力のない女性の社会での立ち位置とか、一般論と個人の見解の落とし所が下手だったりとか、見ていてはらはらする。

正社員で安定した収入のある豆子は、ただ「愛する」ために夫がいることに満足しているけれど、周囲は妻より収入の低い夫を持って可哀相とか、結婚式の費用も豆子が出したいから全額出したのにやっぱり可哀相とか甲斐性なしとか言われてしまい釈然としない。

四女の星は高給取りの夫がいて、いわゆる「勝ち組」という生活で三女の草子に自立しなと常々言っている。(これで星が実は草子大好きというフォローがなかったら星すごく嫌なキャラに見えるな)
でも主婦は自立しているのかとか、ニートとはいえ両親の面倒を見るのは草子で、それは主婦とそんなに違わないんじゃないかとか、うーんと考えてしまう場面も多いです。

それでいろいろ考えた挙句、女性が相手の為ではなく自分を高める為に付ける香水を作ろう、というような話でした。

現時代的な話ですねー。



・今村友紀『クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰』

――「閃光と轟音とともに、“それ”は始まった―」。外部と遮断された渋谷の女子高、俳徊する化物、…そして、矛盾し始めた少女の世界。第48回文藝賞受賞作。――


選考委員が高橋源一郎、角田光代、齋藤美奈子、田中康雄という、推して知るべしな内容。
舞城王太郎に似ているらしいですが舞城王太郎一回しか読んだことがないので似ているかどうかはわかりません。これから読む気もちょっとない。
読点が一切ない、擬音が地の文で頻出するなど特徴的な文体です。

ある日の午後、授業中の女子高を突如閃光と轟音が襲い、謎の戦闘機と人食いの化け物が出現する。主人公のマユミは友人のカナと一緒に化け物から逃げている時に、パソコンのディスプレイに映る違う世界を発見する。
カナがいる世界、母親がいる世界、自分の鞄がある世界、友人が死んでいない世界、足に怪我をしなかった世界……いくつものパターンが入り混じる現実を、ずっと灰が降りしきる中何の解決策もないままに彷徨う。
おわり。

え、おわり!? と思いました。後半これ収拾できるのかなと思いはじめ、やっぱりそうなりました。
途中までは不条理さ全開でわくわくしたのですが、読者としては読後感良くないです。
描写は丁寧で、水道局のくだりは妙に納得してしまいました。

だいぶ以前に文芸同人誌のイベントで会ったことがある人だと気付いて、今回読んでみました。
同じイベントで又吉も見掛けましたが、『火花』はまだ読んでいません。増刷待ち。



・サド『短篇集 恋の罪』

――近親相姦、親殺しといったドラマの中に、肥大化する想像上の悪と現実の犠牲者の嘆きのコントラストを描いた悲壮小説集。――


あの有名なマルキ・ド・サドの短篇集です。
内容はまあ酷いものが多い。大抵は美しく純粋で非の打ちどころのない娘か若者がいて、同じく非の打ちどころのない恋人がいます。でも母親か父親が嫉妬して、搦め手からの残酷で陰湿な方法で二人を引き離した挙句結局どちらも死んでしまう、というような。

でもテーマは悪徳の栄えではなく、美徳の誉れです。作者は美徳を尊いものと信じているからこそ、あえて酷い物語の中でそれが際立つようにしたと見えました。
でなきゃガチの変態です。

特に『フロルヴィルとクールヴァル、または宿命』なんてオイディプス王も真っ青の業の深さでした。
クールヴァルという中年の男やもめがいます。壮健で何不自由ない生活。しかし淫蕩な妻とは別れ、ごく幼いうちに娘を亡くし、放蕩な息子は出ていき、一人の生活。そこで知人に再婚したいので女性を紹介してくれと頼みます。
それで出会ったのがフロルヴィルという女性。その美しさにすぐにでも結婚を申し込むクールヴァル氏。しかしフロルヴィルはまずは自分の罪深さを知ってもらいたいと言う。その話を聞いたらきっとそんな気も起きなくなりますから、と。

フロルヴィルは孤児で、名門のサン=プラ氏の家に拾われた。品行方正に育てられたが、年頃になると育ててくれたサン=プラ氏の妹のヴェルカン夫人の家で養育されることになった。その家は淫蕩や悪徳がはびこっており、フロルヴィルはセヌヴァルという青年の子どもを身籠る。
セヌヴァルはフロルヴィルを捨てて去っていき、生まれた子どももどこかへ引き取られてしまう。
フロルヴィルは敬虔なレランス夫人の元へ身を寄せ平穏な17年あまりの日々を送るが、ある日一人の青年がレランス夫人の元へやってくる。
サン=タンジュという青年は熱烈にフロルヴィルを恋し、力づくでものにしようとする。抵抗したフロルヴィルは脅しのつもりでハサミを振りかざすと、それは青年の心臓を刺し貫いてしまう。
失意のフロルヴィルだったが、たまたま泊まったホテルでとある50歳くらいの婦人が恋敵を刺し殺す場面に出くわす。フロルヴィルの証言で女性は死刑になる。

そのような話をするが、クールヴァル氏はフロルヴィルには何の罪もないと結婚を申し込む。承諾したフロルヴィルは一時を幸せの内に過ごし、子どもも出来たようだったが。

ある晩、追放したはずのクールヴァル氏の息子が訊ねてくる。
勘当された後連隊に入り、ヴェルカン夫人の家でとある娘と恋をした。しかし自分は彼女を捨てて、子どもを引き取った。
敬虔なレランス夫人という人に息子を預けたが、息子は恋のもつれでハサミで心臓を貫かれて死んでしまった。
失意の中、母親が恋敵を刺殺した罪で牢獄に入れられたことを聞きつけ会いに行く。そこで母親は、実はお前には行き別れの妹がおり、財産が愛する息子にいかないのが心配で娘は捨てさせたという。
捨てたのは、サン=プラ氏の家の門だった、と。

自分は生き別れの妹の消息を求めてやってきましたという息子に、フロルヴィルは「セヌヴァル、私はあなたの妹であり、あなたに誘惑された娘であり、あなたの息子を殺めた女であり、あなたの父の妻であり、あなたの母親を刑場へ送った女です」と言って自殺する。
遺された親子は生涯隠棲して暮らしました。

というこれでもかというくらいの不幸の詰め合わせ。もう読んでて面白くなりました。

他の話だと、やっぱり啖呵を切る御婦人はかっこいいですね。
「――……愛がかなわぬものならば、せめて恨みからでもよい、私のものになるがいい。――」
「刺すのだ、さあ、私の胸はここにある。お前をわがものにする望みが永久に奪われながら、私が命に執着していると思うのか! ――中略――……臆病者! 侮辱がまだ足りないのか。……いったい、なぜ怒りをこらえるのか。お前の手で流させたその血の中で復讐の松明に火をともすのだ、お前に憎まれながらお前を愛さずにはいられない女に、もはや手加減などいるものか。」
サンセール夫人かっけえぇ。





歳の頃30代くらいの男性の双子でした。一種異様な雰囲気があり、周囲の人が引いていました。
でも珍しいもの見たなあ。珍獣扱いして申し訳ないですが。


というわけで、また。
さようなら。


『アプドゥ! ハッ』