夢でもし会えたら、ステキな事ね。
あなたに会えるまで眠り続けたい。
そんな歌があった。
学生時代に好きたった人。
絵が上手くて、県の美術展で何度も入賞していた。本当はそういうことを生業にしたかったらしいけれど、そうはならなかった。理由も聞いたかもしれないけれど覚えていない。
それでも、ある雑誌の表紙を描くアルバイトをしていて、一度だけスケッチにつきあわされた。
無理やりついて行ったのかもしれない。何処かの海辺。平戸辺りだったろうか。
私はスケッチする彼を見ているだけで幸せだった。彼の描くスケッチはどうでもよくて、というかよく分からなくて、おざなりに見ていたと思う。
でも、後日業界誌の表紙になったその風景画を見せてもらって、ほんとに上手いんだと驚いた事を覚えている。
卒業前には会うこともなくなっていた。
あれから数十年が経つ。思いだすことなど殆なかったのに、突然に夢に出てきた。
彼だ、と感覚的に意識したけれど、顔は確認できただろうか。
最近描いた私の絵があちこちに置かれている。明らかに私の家なのに、夢の中でそこは部室らしい。彼は姿を見せてすぐに何処かへ行った。顔はよくわからないけれど、彼だと確信した私はウキウキと楽しい気分になって、彼の後を追いかける。
いつの間にか学校の中を探していた。
彼と話すことができるなんて何年ぶりだろう。私の絵を見たら何と言うだろう。
言いようのない幸福感に満ちて、私は歩いていた。もうすぐ、彼に会える。
で、
その意識のままに目が覚めた。
え?
会えないんだ。
それはとても、不本意な現実に思えた。
彼に会えそうだったのに。
あなたに会えるまで眠り続けたい。
そこまで眠っていたかったなぁ。
でも、彼の名前を思い出すのに数秒かかってしまった。
