真正面から見るとそうでもない。

でも横顔を見ると、あごから首に続くところに余分な脂肪のだぶつきがある。

 ちょっと顔を引くと問題なしの二重顎が出来上がる。

 まあ、仕方ないけれど。

 年輪にはかなわないわけで。

すっきり出来れば、それに越したことはないけれど、なす術も分からず、時々鏡を見ては

「あぁあ」と確認する。

 

テレビの番組で二重顎を解消する体操というのを見て、

「ほぉぉ」と

思わず立ち上がって、一緒にすることにした。

「両手を背中にまわして持って胸を開き、顎を引く。

次にゆっくりと顔をあげ頭を後ろに引いていく。

頭をあげる動作を7秒かけて行い、3秒静止して、また7秒かけて元に戻る」

(だったと思う)

 それを何回か繰り返す。たぶん10回位。

 (残念、忘れてしまった)

真剣にやっている私の様子を、母はソファに座ってじっと見ていた。

そして、徐にアドバイスをする。

「肩に力が入りすぎちょ。もっと力ば抜かんば」

「うん?」

 思わず母を見て、

 何も言わずに、すっと肩の力を抜く。

 なるほど、肩の力は抜かなきゃいけないと思う。

 肩の力を抜くと、

 すかさず、母は応える。

「うん、よかよ」

 

つい頬を緩めて、体操を続ける。

記憶が留まらなくなった母は、

ほんの少し前の自分の行動さえ、忘れてしまう。

でも、

瞬間的に目の前で起こっている事象は理解できる。

私の肩が力んでいる様子が気になったのだろう。

その瞬間の判断が、嬉しい。