時々、母としりとりをする。

 母の脳トレと言いつつ、実は私の脳トレ。

 母はうすうす気づいているかもしれない。

 

言葉を発する機会がめっきり少なくなって、

決まり切った単語しか使わないから、

咄嗟に言葉が出てこない。

もともと大してなかった語彙力はさらに低下している気がする。

日常には使わない言葉の方が圧倒的に多い。

使わない言葉は頭の中で棚上げされてしまい、既にどこにしまったかさえ分からない気がする。引き出すこともままならない。

おまけにスマホという利器は拍車をかけるように、記憶と引き出し機能をはく奪していく気がする。

 

母としりとりを始めると、

うまく思い起こせるだろうかと不安になる。

 こんな事でも負けず嫌いが顔を出す。

 

「まくら」と母は言った。

「ら、ら、ら」

 脳が動かない。考えようとするほどに脳の中が空っぽになる気がする。

 

 母は真面目な顔で

「らくだもあったよね」と助け船を出す。

「ああ、・・まだ言ってなかったっけ」

 動揺を隠しながら、分かっていたようなふりをする。

「じゃ。ラクダね」

 澄まして、応える。

 

「ほくろ」と母は言った。

「ろ、ね。ろ、ろ、・・」浮かばない。

 焦るほどに固まってしまう脳。

「ロシア」すかさず、母は教えてくれる。

 まったくなあ。

 

 困ったもんだと思う。凝り固まった脳は母よりひどい。

 母とのしりとりを早々と止めて、一人でなにげにやってみる。

 特に、ら行は難しい。なかなか浮かばない

 まず、「ラ」で始まる言葉。

 ラッパ、

 ラッコ、

 駱駝、…

 

「り」もむずかりしい。

 リンゴ、

 リヤカー、

 力士、…

   

「ル」は

 ルビー、

 瑠璃、

 ルネッサンス、…

 

「れ」は

 冷蔵庫、

 冷凍庫、

 霊柩車、…

 

「ろ」

 ロボット、

 ロケット、

 論語、

 ろうそく、

 ロシア、…

 

拡がらない脳に呆れて、




広辞苑を読むことにした。

「ら」

ライス、ライター、ランチ、雷鳥、ラード、落語、雷雨「、ライフル、ライム、雷鳴

落書き、ライラック、ライム、 …云々

 

「り」

リキュール、リサイクル、リス、リスト、リトマス紙、リスナー、リズム、リール、陸橋、リップ、利子、 …云々

 

「る」

ルアー、ルージュ、ルーター、ルーム、るつぼ、ルーツ、ルール、…


「れ」

列車、レンガ、レッカー車、れんげ、レーサー、レース、レール、レオタード、霊安室、黎明、冷媒、冷麺、…云々

 

「ろ」

ろば、廊下、牢獄、漏斗、ロープ、ロード、ロース、ロイド、朗読、ろ過、…云々

 

時々、広辞苑を読んでおこうと思う。

そうそう、母に負けるわけにはいかない。