
コロナで美容院に行きそびれてしまった母の髪を切ってあげよう、と思ったら、
なんか楽しい企てのような気がしてワクワクしてきた。
髪を切ったこともないのに、不思議と上手に切れる気がした。
「髪を切ってあげるね」と私。
「ありがと」と母。
「伸びてあちこちはねている後ろ髪の
あそこんとこをチョンチョンと切ればいい」
などとイメージは万全。
次の日に、早速すきバサミを買って来た。
縁側に新聞紙を広げて椅子を置き、
いいよと言った筈の母をなだめすかして、座らせる。
「大丈夫。きれいに切れるはずだから」
結構な自信だった。
ゴミ袋の真ん中を切って、ケープ(?)を作り、母の肩にかける。
いざ。
切りたいと思うところの髪を少し持って、ちょっとねじり、すきバサミでチョキチョキ。
と、テレビでやっていた通りに再現してみる。
でも 、なかなかどうして、
迷いが生じる。
ん?
切るべき所がよくわからない。
適当に少し取って切ればいいか、と少しやってみるけれど、だんだんと自信喪失気味。
始めたからには止められない。
「大丈夫よ。このはさみはあんまり切れないから失敗はしない」
母とも、自分にともつかない言い訳をしつつ、
不安がふつふつ。
しかもすきバサミの小さい穴が親指を絞めてきて、痛い。
僅か、5,6分で終了。
新聞紙に落ちた髪は気持ちほど。
「まだ、少ししか切れてないから、明日、また切ろうね」と私。
「明日も切っとね」
「うん。少しずつ切ろう」
結果をちょっと先送り。
次の日。
今度は髪をそぐカッターを買って来た。
同じ手間をかけて母を座らせ、おそるおそる横をそぐ。
「やっぱり、まだ少し長いかなあ」
とその次の日には、
普通のはさみで後下を1センチほど、バッサリ。
まずまずじゃない。
気になる所は収まってきたような。
さらに次の日。
左が気になる。
「ここんとこ、もう少しそいだ方がいいかな」と独り言のように言う私に、
「そして、またこっちやろ。そしてこっち。どんどん切っていくとやろ」
母がちょっと不満を漏らし始めた。
気持ちは分かる。
ここら辺で納得するしかないかなあ。
でも結構様になった気はする。
というか、あんまりかわっていない?
ほとぼりが冷めたら、また切ってあげよう。
