「おなたのお父さんはステージ3の胃ガンです。」

医者からそう告げられた時、目の前が真っ白になった。



2025年12月25日。

本当なら今日は家族みんなでチキンやケーキを並べて、キリスト教徒でもないのに「メリークリスマース!」とか言って、ご馳走を食べるはずだった。



どうして、こんなことに…。

頭の中は、ただ、それだけだった。



私はただ、淡々と、先生の話を聞くことしかできなかった。

先生のパソコンを見せてもらうと、かなりグロい物が写し出されていた。

事前に聞かされていた4センチの腫瘍とは思えない程、父のガンは、大きくて、胃の中で出血していた。



私は泣くのをこらえるしかできなかった。


先生は、来年のカレンダーに指をさして、

「入院は、来年の1月15日の金曜日で、手術は1月19日の月曜日に行いましょう。」

本当なら、今すぐにでも、入院させてもらって、明日にでも手術をして欲しいくらいなのに、他にも手術を待っている患者さんがいる為か、かなり先の予定になり、私の心はがく然とした。



しなかったけど、本当は先生の白衣にしがみつきながらすがりたかったくらいだ。

「どうか、先生!すぐにでも…!」って。



でもそんなことはせず、長い先生の話を聞き終わって診察室を出ると、私の娘がニンテンドースイッチを持ちながら、

「長かったね?」

と不思議そうに私に問いかけた。


私は

「遅くなってごめんね」

しか言えなかった。



そして父は、これからの入院の為に、広い広い病院の中を歩き回り、色々と説明を聞くのだった。



今日は朝早くから、私と娘は父の病院の付き添いに来ていて、もうかれこれ5~6時間は経っていた。

父が私たちを気遣って、

「説明聞いてくるから、どこかでお昼食べな。」

と言ってくれた。

娘も「お腹が空いた」と言ったので、お言葉に甘えて、病院の中のファミマで、おにぎりなどを買った。



娘が、

「ママ、私あれ食べたい。」

そう言ったのは、ファミマのファミチキだった。



そうか。

今日はクリスマスだったんだ。

「いいよ」

私はおにぎりやサンドイッチや飲み物などを買って、

病院内のイスで娘と買ったものを食べた。

食欲が湧かなかった。

普段なら私は食いしん坊なのに。



その横で娘は買ってもらったファミチキとおにぎりを食べている。

私は人生でこんなクリスマスを迎えることを一度も予想したことはなかった。



昔、お笑い芸人が、

「人生には3つの坂がある。上り坂、下り坂、そして、まさか」

って言っていたけど、本当にまさかだった。



まさか、父が胃ガンになってしまうなんて。



上を向いて、涙が溢れないようにしたけど、今は父が入院の為の説明を聞きに別室にいるせいか、気が緩んで、大量の涙が溢れてしまった。

それを見た娘が

「ママ、泣いてもいいんだよ。」

と抱き締めてくれた。



私はこのクリスマスを、一生忘れないだろう。



きっとこれからの人生で、何回もクリスマスを過ごすことになっても、きっとこの日のことは忘れないなと思った。