習志野市で繰り返された違法行為。メディアに、たった1枚のFAXで「お知らせ」しただけでもみ消そうとしたが…

習志野市が記者会見も開かず、たった1枚のFAXでメディアに「お知らせ」しただけですまそうとした習志野市の違法行為。「違法行為を繰り返したのに、ほぼ誰もおとがめなし」という、信じられない習志野市の姿勢に「これ、本来なら免職か停職だろう。『ほぼおとがめなし』で組織的な犯罪をもみ消し?」と市民の間に疑問の声が広がっていました。

新聞報道された後も、毎週配信している「市長ニュース」でこの事件に一言もふれない宮本市長に、「習志野市始まって以来の違法行為に、なぜ記者会見もやらないのか、事実を市民に隠してばかりいるのか」という怒りの声が高まっていました。しぶしぶ記者会見を17日に開き(メディアにFAX1枚で知らせた10月25日から1か月近くたってから!)、本日(21日)その内容が詳細に報道されました。

(東京新聞の記事より:ポイントになる個所について、編集部で赤字や青字で強調させていただきました。)

習志野市の下水道課問題 上乗せ発注は19回 市長「違法行為、おわび」

(ネットニュースでも全国に流れました)

 


 千葉県習志野市下水道課の職員が、契約をせずに業者へ発注し、その費用を他の発注業務に上乗せする手法で補塡(ほてん)していたとして3人が懲戒処分になった問題。同市の定例記者会見が今月17日にあり、記者団から質問が相次いだ。

 市側は、補塡のために上乗せ発注したのは計19回だったとし、処分理由となった地方自治法違反などのほか、地方公務員法違反にも当たると認めた。宮本泰介市長は「市民の信頼を損ねる違法行為。深くおわび申し上げる」と陳謝した。(保母哲)

 

 記者団と市側の主なやりとりは次の通り。(文中の「市側」は各部署と企業局の担当者)

 -改めて市長の認識を。下水道課が組織的に行っていたのか。

 

 宮本市長 必要な手続きを省き、市民の信頼を損ねる違法行為であると認識している。市民の皆さんにご心配をおかけし、深くおわび申し上げたい。処分となった3人の管理職が中心となって部下に指示し、職員はそれに従った。組織的に行ったとは思っていない。

 

 -問題となった2018、19年度のうち、下水道課は19年度、市長部局にあった。

 

 宮本市長 責任者として残念な気持ちでいる。職員からすれば(上司の)要請に応えたいという気持ちの中で(不正を)行っていた。基本的に緊急性があるもの、予算措置されていないものをどうにかしようという気持ちでやったようだ。

 

 -不正な業者への発注や補塡の回数は、10月の発表時「数回」としていた。

 

 市側 契約手続きを怠った発注は6回、分割などしてその費用を補塡していたのは19回。

 

 -今回の事案の発覚時、業者への未払い金は残っていたのか。

 

 市側 業者への未納金が121万7千円(消費税別)あった。市と業者双方に(金銭的な)被害は出ておらず、解決金との名目で業者3社へ債務を返済することで合意している。

 

 -2カ年以外で不正はなかったのか。

 

 市側 調査でそれ以外はなかった。

 

 -不正のきっかけになった緊急の発注とは。

 

 市側 業務内容は業者の特定につながる恐れがあり、控えさせていただく。

 

 -職員3人の処分理由は、入札などを行わなかった地方自治法違反、契約を行わなかったなどの市財務規則違反市公営企業会計規程違反の3点。法令順守などを定めた地方公務員法違反にも該当するのでは。

 

 市側 その通りです。

 

 -書面での契約を定めた建設業法の違反可能性は。

 

 市側 市の顧問弁護士に相談したところ、「市の要請に従って行ったことであり、要請した市側が法令の抵触・違反を指摘し、処分するのは難しい」との意見だった。

 

 -(発注で不足した金額を捻出するため、職員が関係書類を作成したのは、刑法の)虚偽公文書作成に当たらないか。

 

 市側 顧問弁護士は「虚偽公文書作成は、実行行為に該当するとしても、可罰的違法性があるとまでは言えない」との意見だった。

 

 -21年11月ごろ内部通報があり、調査を開始したというが、完了までなぜ2年もかかったのか。

 

 市側 調査対象者は市長部局と企業局におり、2回目の聞き取りを行った職員もいる。内部通報者の保護などもあり、十分な時間をかけた。

 

 -(複数の法令に違反しており)処分が減給10分の1(1カ月)などは適切か。

 

 宮本市長 難しい判断だった。横領とか(業者に)利得を促したとかではなく、事務的な不適切行為。いろんな事例を参照し、この処分になった。適切だと考えている。

◆不正事務の概要

 習志野市は、不正の中心となった企業局工務部の副技監(58)と都市環境部の課長(56)を減給10分の1(1カ月)に、企業局工務部の主幹(51)を戒告の懲戒処分にした。処分は10月24日付。

 

 3人は企業局などの下水道課に勤務していた2018~19年度、数回にわたり予算計上や契約を行わずに直接、業者に口頭で発注していた。総額は約350万円。その費用を捻出するため、他の業務を発注した際、業者に依頼して見積書や契約書の金額を水増しさせ、提出させた。下水道課は19年4月、市長部局から企業局に移管されている。

 

この記事を読んだブログ読者からこんなご意見が…

今までの報道で書かれていなかった重大なことが、いくつか出ていますね。

①  組織的に行なったとは思っていない??

「3人の管理職が中心となって部下に指示し、職員はそれに従った」と、「組織的犯行」を認めているのに、「組織的に行なったとは思っていない」と話した宮本市長。どうやら自分の言っていることの意味を理解していないようです。

②   議会の承認を受けずに勝手に「解決金」として支払った!

未決済分を「解決金」として業者に支払う、ということ。解決金と名付けようが、示談金と名付けようが、性質は和解契約ですから議会の専決事項ですよね。議会のOKなしに「解決金として支払う」と言ってのけるだけ、議会軽視もいいところです。

(注)地方自治法第96条は「普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。」として、普通地方公共団体がその当事者である和解(1項12号)と定めている。しかし、すべて議会を通さなければならないとすると大変なので、軽微なものは市長が専決処分して直後の議会で報告すればいいことになっている。

 

「専決処分事項の指定について」(平成5年7月1日議決)は、地方自治法第180条第1項の規定により、市長において専決処分することができる事項を次のとおり指定するとして、「1件170万円以下において法律上市の責務に属する損害賠償の額を定めること。」「市が当事者である和解または調停で、その目的の価格が170万円以下のものに関すること。」と定めている。

 今回の事案で未決済の債務は121万7千円ということなので、市長専決で「解決金」を払えばいいということなのだろうが、事案が事案だから原則どおり事前に議会の議決を仰ぐべきだということも考えられる。

ともあれ、「解決金」を誰に支払うのかは、いずれ決算では明らかにしなければならないことである。

③ これだけいくつもの違法行為をやっているのに「可罰的違法性」がない?

三番目に、告発しないのは「可罰的違法性」がないからだ、という箇所。
「可罰的違法性」というのは、違法は違法だが、国家が刑罰権をふり回してまで処罰しなければならないほどの違法ではない、だから犯罪ではないということ。

その典型として「一厘事件」という古い判例があります。専売局からタバコの栽培を委託されていた農家の親父が、納品する乾燥タバコの葉を一枚失敬して、刻んでキセルで吸ってしまったという事件。その被害額が一厘だったのですが、裁判所は可罰的違法性なしとして無罪としました(ただこれは、被害額が僅少だったから無罪という風に考えると危険です。もしスリが他人の懐中に手を入れたところで捕まった。しかし被害者の懐中には1円玉1枚しかなかったから無罪か、と言えばそうは行きません。一厘事件も、専売局の所有物とはいえ、自分で栽培し乾燥させた葉だったからつい、というところを重視しているわけです)。


350万円 の公金をまんまと業者の口座に振り込ませて「可罰的ではない」と言われて納得できるでしょうか?

④  可罰的違法性があるかないかは、犯人(市)と顧問弁護士で相談して決めることではなく、検事、最終的には裁判官が決めること

それよりも可罰的違法性があるかないかは、犯人(市)と顧問弁護士で相談して決めることではなく、検事、最終的には裁判官が決めることです。市長は、俺は犯人ではなく裁き手(処分庁)だと思っているようですが、自分が裁かれるべき立場だとは思わないんですね。

⑤ 不正の証拠書類を隠すだけでなく、「業者の公表はできない」と言っているが、市は業者と結託して市民をだました犯人なのであって、業者を処分できる立場ではない。国交省の見解を問うべき


 五番目に、業者の公表は出来ないという点。建設業法に照らして、市が業者を処分するのは難しいから、などという理屈を繰り出してきました。ただこれも、建設業法の所管官庁は市役所ではありません。市は業者と結託して市民をだました犯人なのであって、業者を処分できる立場ではない。建設業法の所管官庁は国交省でしょうから、国交省の見解を問う必要がありますね。


市長は「必要な手続きを省いた」「予算措置されていないものをどうにかしようとした」などと、何とか事件を軽く見せようとするようなことを言っていますが、予算がなくてもどうにかしてしまうのはd払い事件で明らかですね。これも議会をナメている証拠です。


ともあれ、もし今回の報道が出ないで終っていたらと思うとゾッとしますね。メディアの力、重要です。