彼の名前は「ナイーブ刑事」。
捜査課のボスがそう呼び始めた。
「おい、ナイーブ、お前一人暮らし長いな
彼女もいないのか」

余計なお世話だ。
「ナイーブ」刑事は町へ出て何気なく、本屋で立ち読みをしていた。

そしたら皮ジャンのそでから何やら「黄色いもの」がでてきた。

ぽろりと。

なんだと思ったら・・・それは靴下だった。

黄色い靴下は女性セブンの上にぽとりと落ちた。

あわててそれを拾ってポケットにしまう。

誰にも見られていないかきょろきょろ確かめたら、

隣の女の子と目があった。

はずかしかった。

ナイーブ刑事は皮ジャンのそでから「黄色い靴下」を生んでしまったのだ。

原色の靴下なんて、履いている自分も怖い。

女の子が不思議そうな顔をして、それから吹き出して笑った。

あー、独身生活。

あー、洗濯物はどこに旅をしているのやら。

そして皮ジャンのそでから「黄色い靴下」を生んでしまう。

彼の名前は「ナイーブ」刑事。
彼の名前は「ナイーブ刑事」。
捜査課のボスがそう呼び始めた。
「おい、ナイーブ、お前、京王線で通勤しているのか?」

その通り、ナイーブ刑事は京王線で通勤している。
電車のなかでも職業柄なのか、まわりのことが気になる。
痴漢はいないか。
スリはいないか。

ナイーブ刑事はふとドアの隅にもたれるようにして
本を読んでいる女性に目がとまった。
読んでいるのは、、、荒木スミシの「グッバイ・チョコレート・ヘヴン」だ。
しかも08年に再販されたものじゃなくて、
01年に幻冬舎文庫より発売されたもう絶版になっているものだ。


駅は調布駅につくと、二人は同じ駅で降りた。
彼女が後ろからの乗客に押されて転んだ。
投げ出される文庫本・・・。
その文庫本をナイーブ刑事は拾って渡した。

「はい、これ落としましたよ」
「じゃなくて、あたし、転んでいるんだからあたしを起こしてよ」
「ごめんよ」
「でもありがとう」
「僕もこの本好きだよ。家に持っている」
「そう。私はあんまり好きじゃない。退屈しのぎ。でもありがとう。
私、これから専門学校だから」
「いってらっしゃい」

彼女はふとナイーブ刑事の前に手を差し出した。
握手かと思ってナイーブ刑事は手を握ろうとした。
「違う。あたしは握手はしないの」
????
彼女は小指を出して、ナイーブ刑事の小指とからめた。
「はい。指きり」
「どうして指きり?」
「またあなたと会いたいから」
「え?」
彼女はさらりと長い髪をひるがえして、去っていってしまう。

不思議とナイーブ刑事は彼女とはもう会えないような気がしてしまう。

彼の名前は「ナイーブ」刑事。
彼の名前は「ナイーブ刑事」。
捜査課のボスがそう呼び始めた。
「おい、ナイーブ、携帯にでるだけで
息を整えるのはやめろよ」

今日は「ナイーブ刑事」の休日だ。
昼間、何をするでもなくアパートで寛いでいたときに
玄関のベルが鳴った。
ドアを開けると女の子(大学生くらいの)が二人立っていた。
ひとりは背がちイさくてメガネ。
ひとりはぽっちゃりとしたオトナしそうな感じ。
メガネの女の子が言った。
「日本肩もみ協会です」
「肩もみきょうかい?????」
「はい。肩はこってらっしゃいませんか?」
「えっと、確かに凝っていますが・・・・」
「是非、肩を揉ませてください」
「ちょっと待ってください。事情がわかりません。だから
知らない人に肩をもんでもらうことはできません」
「ただの肩もみですよ」
「でもお断りします」
「気持ちいいですよ」
確かにそんな気がしたけど、彼は丁重にお引取りいただいた。
ドアを閉めてしまって気になったのは、メガネの女の子ばかりが
喋っていて、ぽっちゃりした女の子は恥ずかしげにうつむいていたことだだ。
彼にはどうもわけがわからなかった。
だいいち、「日本肩もみ協会」ってなんだ?
そう思いながら、煙草に火をつけてため息をついた。

OKしていたらどうなったのか、ということを
彼は今日もドキドキ考えながら職務についている。

そう彼の名前は「ナイーブ刑事」。
彼の名前は「ナイーブ刑事」。
捜査課のボスがそう呼び始めた。
「おい、ナイーブ、尾行をきちんとできるように
なって一人前だぞ」

「ナイーブ刑事」は尾行している。
相手は殺人容疑のヤクザだ。
ヤクザはパチンコ屋に入る。
「ナイーブ刑事」も続く。
彼は思う。
ヤクザめ、パチンコするなんて余裕だな。
ヤクザと離れた台でそれとなく様子をうかがう。
やっぱりこれは自分もパチンコをするべきだろう。
そのほうが自然だ。
隣の席にはおばあさん。
事は進展しない。
「ナイーブ刑事」はオレンジジュースを買う。
それを飲みながらパチンコ。
事は進展しない。
隣のおばあさんが「ナイーブ刑事」のパチンコに口をだす。
「兄ちゃん、それじゃ当たりはこないよ」
当たりなんてこないでいいのだ。
僕の目的は尾行だ。
するとおばあさんが「ナイーブ刑事」のオレンジジュースを
のみはじめる。
それをとめられない。
心の中で「おばあちゃん、それ僕のジュースだ」とつぶやく。
「ちょっとジュースもらったよ、お兄ちゃん」
「どうぞ」
さて問題はおばあさんが口をつけたジュースを飲むべきか
どうかだ。
「ナイーブ刑事」が悩んでいる間にヤクザの姿は消えていた。

彼の名前は「ナイーブ」刑事。
彼の名前は「ナイーブ刑事」。
捜査課のボスがそう呼び始めた。
「おい、ナイーブ、髪が伸びているぞ。
身だしなみも任務のひとつだぜ」

街に出て美容室を探して、散髪を申し込む。
でも「ナイーブ」刑事は散髪が苦手だ。
とくに女性に髪を触られて、シャンプーされる時など、もう困ってしまう。

ああ、どうか、美容師さんが男性でありますように。

席に案内され、鏡越しに美容師さんが背後に立った。
・・・女性だ。
困ったな、チェンジしてもらおうかな・・・。

「今日はどうされますか???」
「・・・そっとしてください」
「そっと?」
「・・・できるだけ、そっとしてください」

美容師の女性は本当にそっと髪を切ってくれた。
髪はつまむようにして、そっと髪を切ってくれた。

こんな注文でごめん、美容師さん。

彼の名前は「ナイーブ」刑事。
彼の名前は「ナイーブ刑事」。
捜査課のボスがそう呼び始めた。
「おい、ナイーブ、またうかない顔をしているな」
「歯が痛いんです」
「そりぁお気の毒に。今日はクリスマス・イヴなのにな」

街に出て歯医者を探して、診察を申し込む。
待合室はけっこういっぱいだ。
・・・クリスマス・イヴに歯が痛くなる人たち・・・。
「ナイーブ」刑事はため息をついた。
キーンという治療器具の不協和音が響いている。
ああ、僕の虫歯もうずく。。。
その時、声が聞こえる。
女性がハンカチで頬をひやしながら、携帯電話で話しているのだ。
「そうなの。ごめん。クリスマス・イヴなのに、歯が急に痛くなるなんて」
女性はこれからデートなのか、とてもオシャレなワンピースを着ている。
指にはマニキュア、化粧も万全。
しかし残念なことに歯が突然に痛いのだ。
世の中にはタイミングが悪さがあり、そういうタイミングに見放された星の下に生まれたかのような人がいる。
そう思うと、彼女がたまらなくかわいく見えた。
「XXさん」
受付から彼女が呼ばれて、治療室に入っていく。

(・・・ファイト)

ココロのなかでナイーブ刑事は彼女に声をかける。

それにしても自分も歯が痛い。
クリスマス・イヴに約束もないけれど。

彼の名前は「ナイーブ」刑事。
彼の名前は「ナイーブ刑事」。
捜査課のボスがそう呼び始めた。
「おい、ナイーブ、仕事に疲れたときは
街にでも出てきたらどうだ?」

街に出てデパートのエスカレーターに乗る。
降りようとすると一番上の段にクマの小さなぬいぐるみが落ちていて
カクンカクンとなっている。
それを「ナイーブ」刑事は拾い上げ、保護する。
誰のかばんについていたものだろう?
または携帯の飾りか?
ぐるぐると繁華街を回っていて、その調子でいろんな
ところに落ちている小さなクマを保護する「ナイーブ」刑事。
自分の携帯にクマたちをとりつける。

今日は4匹保護した。


彼の名前は「ナイーブ」刑事。
彼の名前は「ナイーブ刑事」。
捜査課のボスがそう呼び始めた。
「おい、ナイーブ、取調べのときに
お前が泣くのはやめろよ」

今回の事件は、放火魔。
被害者の女性は言う。
「ぜったいにあの人を捕まえてください。
放火魔なんです」
「いったい何を放火したんですか?」
「私の心に火をつけたんです」
被害者の女性は頬が赤くなる。
「どうやってあなたの心に火をつけたんです?」
「それは言葉巧みに」
「なるほど」
「時として強引に」
「なるほど。手馴れたやつだな」
ナイーブ刑事はため息をついた。
「強引ってどれくらい強引なんです?」
「恥ずかしくて言えないわ」
「僕も恥ずかしくて聞けない」
「恥ずかしがる刑事さんには、もっと恥ずかしくて言えないわ」
「それは困ったな。恥ずかしがらない刑事にかわります」
「すいませんが、そうしてください」
彼は取調室を出ると、長椅子に座って何本もタバコを吸う。
そう、彼の名前は、ナイーブ刑事。

きっと今夜もどこかで火事がある。
新人刑事がやってきた。
ボスは彼を「ナイーブ刑事」と呼び始め、みんなも
そう呼んだ。
「おい、ナイーブ。ちょっともう前の事件で落ち込むのは
やめろよ」

そんな時、ナイーブ刑事は、バーで女性と同席する。
話に花が咲き、きがつくと、もう終電の時間。
ふたりで店を後にする。
すると駅までの道で、大雨が降ってくる。
二人は新幹線の高架の下に雨宿り。
「もう終電なくなっちゃった」
「そうだね」
「雨もひどいし、タクシーも通らない」
「そうだね」
「でもなんだか楽しいの」
二人で服が乾くまで、新幹線の高架下にいた。
一時間ほどで雨はあがった。
彼女をタクシーに乗せる時、ちょっと心が動揺する。
「今日は、ありがとう。でも・・・」
女性は、なんでもない、と首を振り、去っていく。
彼はポケットに手を入れて、歩き始める。

そう、彼の名前は、ナイーブ刑事。

バーの片隅から送られる手紙のような男、
真夜中の狼、真中ケイです。
さて今日は友達からこんなメイルをもらいました。
「ダンディーな僕としてはCDデビューすることがあったら、
舘ひろしの名曲「泣かないで」、この路線でいきたい。
タイトルは「泣かないぞ」でいこうかな。
君ならどうする?」

ふむ。
そこで少し考えてみました。

ぜひ「泣かないで」を超えるダンディーの名曲を歌いたいものです。


●泣くもんか
●泣くぞ
●泣きたいときは泣くにまかせる
●いいよ、泣いちゃえよ。お前、がんばってきたよ。抱きしめてあげるから。いいよ。泣いちゃえよ
●泣くぞ、コラ
●泣こうかな
●泣いたら、お前、どうする?
●泣くんです
●マジで泣くまで5秒前
●泣くなんて
●泣きまくり
●君は泣くことが出来るか
●ママでも泣き
●谷でも泣き
●田村でも泣き
●ごめん電話切るね、今から泣くから
●なぜ私はあの時泣いたのだろう? 泣くつもりもなかったのに、涙が自然と頬を
●先にお前が泣くなよ、俺が泣きづらくなるだろ
●あなた泣いてたでしょ、知ってるわよ、泣いてないふりしてたけど
●本当に泣くのは勝ってから
●今は泣くべき時よ、本当に泣くべき時に泣かないと、生き方がつらくなるわ
●あの人が泣いているのなんて見たことないわ、でもあの時、後姿だけだけど肩が震えていた、そんな姿あの時くらい
●こいつもうすぐ泣くぞ、泣きそうだぞ、泣くってぜったい、ほら泣いた、ハハハ、泣いてやんの
●気持ちよすぎて泣いちゃった、ごめんね
●泣いたぞ。親にぶたれても泣いたことないのに

きりがないですね。
みなさま、「泣かないで」を超える名曲はうまれるでしょうか。


ではでは。