彼の名前は「ナイーブ刑事」。
捜査課のボスがそう呼び始めた。
「おい、ナイーブ、久しぶりの実家はどうだった?」

そう、ナイーブ刑事は久しぶりに実家に帰った。
といっても、疲れていたので、ずっと寝てしまい、
親孝行もできなかった。

父親のひとことが印象的だった。
父親は新聞の朝刊を見ながら、

「浅田真央、5位か・・・」

ナイーブ刑事は「そうか、真央ちゃん5位だったのか・・・」と思ったが、
あとで新聞を見ると「真央ちゃん、V」とあった。

お父さん。。。

彼の名前は「ナイーブ」刑事。
彼の名前は「ナイーブ刑事」。
捜査課のボスがそう呼び始めた。
「おい、ナイーブ、その携帯電話、型、ふるすぎやしないか」

確かにナイーブ刑事の携帯は大きい。
型も古い。
でも機種変更なんて面倒だな。

そんな彼も請求書を見ておどろく。
「パケット代」というものがあり、その分通話しないと
損になってしまうのだ。

しかし電話の相手がいない。
だからナイーブ刑事は何度も「天気予報」にかけている。

彼の名前は「ナイーブ」刑事。
彼の名前は「ナイーブ刑事」。
捜査課のボスがそう呼び始めた。
「おい、ナイーブ、お前身だしなみなんとかしろよ
ちゃんと鏡見ているのか」
「見ているんですけど」

身だしなみ?
ちゃんと毎日、スーツを着ているぞ。
僕に落ち度はないはずだ。
何をボスは僕に伝えようとしているのか。

捜査課をでて廊下を歩くと、マドンナ刑事とすれちがった。
「あら、ナイーブじゃない」
「あ、お久しぶりです、マドンナさん」
「あなた、胸に星が輝いているよ」
「え?」

トイレに行って、胸元を鏡で見た。
そこには

ごはんつぶが北斗七星の形についていた。

胸に星のある男。。。

彼の名前は「ナイーブ」刑事。
彼の名前は「ナイーブ刑事」。
捜査課のボスがそう呼び始めた。
「おい、ナイーブ、またメモをとっているのか。
あきないやつだな。そのメモを見せろ」
「いやです。本当にいやです」

ボスは無理やり「ナイーブ」刑事のメモ帖を奪った。
そこにはこんなメモがあった。

~寂しさをうめる方法~

ソープランドにいき、ソープ嬢に
「寂しいから抱きしめてほしい」と頼み、
本番もしないでそのままダンディーに帰ってくる。


と、書いてあった。

ボスはメモ帖を無言で返した。

彼の名前は「ナイーブ」刑事。


の名前は「ナイーブ刑事」。
捜査課のボスがそう呼び始めた。
「おい、ナイーブ、ねぐせついているぞ
どんな夢みたんだ?」

確かにナイーブ刑事は昨夜夢をみた。
初恋の相手がでてきた。
まだ中学生でそれは実話だった。

はじめてのキスの場面でナイーブ刑事は、
たまらない気持ちになった。
キスを待っている彼女が目を閉じたときだった。
とつぜん、

「頬に噛み付きたくなった」のだ。

ああ、キスより噛みたい。
僕は噛みたい。

噛みたい。
噛みたい。
噛みたい。
ええい、噛んじゃえ。

彼女の右の頬に噛み付いたまま、ナイーブ刑事はしばらく離れなかった。

彼女との交際はそれから一週間後に終わった。


彼の名前は「ナイーブ」刑事。
彼の名前は「ナイーブ刑事」。
捜査課のボスがそう呼び始めた。
「おい、ナイーブ、R-35というCDコンピレーション知っているか?」
「知っています。宣伝コピーが、もう一度妻を口説こう、ですよね?」
「そうだ」
「それがどうかしましたか?」
「いや・・・」

事件が起こった。
ナイーブ刑事はボスとともにコートをはおり、捜査課をでた。
パトカーのなかでまだナイーブ刑事は首をひねっている。

「どうした? ナイーブ」
「いや、ボスはR-35を買ったんですか?」
「いや、俺には必要ない」
「どうして?」

「毎秒妻を口説いているからだ」

「ナイーブ刑事」は浮かんでくる涙をハンカチで押さえた。

「ボス、あなたについていきます」

彼の名前は「ナイーブ」刑事。
彼の名前は「ナイーブ刑事」。
捜査課のボスがそう呼び始めた。
「おい、ナイーブ、遅刻してくるなんてめずらしいな」

ナイーブ刑事はめったに遅刻はしない。
けれどその朝はちがった。
テレビで「名探偵コナン」がやっていたのだ。
夏休みなので、朝から子供向けアニメの特集なのだ。
ナイーブ刑事はひそかに「コナン少年」にライバル心をいだいている。

「コナンくん、またあざやかに犯人をみつけるのかな」

と、思っていると、どうも苦戦しているらしく、めずらしい展開。
と、中途半端に放送が終わる。
なんだ「前編か」とナイーブ刑事は思う。

もう出勤の時間だけど、どうするか?
すると、続きがはじまり、またまた犯人はわからない。
いよいよコナン少年が犯人を言い当てる場面がみれる。

と思うと、その回も中途半端に終わった。
それは「中篇」だった。

中篇? じゃあ、「後編」で解決か、と待ち構えていると、
「後編は明日放送」とでた。

そんなわけでめずらしく彼は遅刻をした。

彼の名前は「ナイーブ」刑事。
彼の名前は「ナイーブ刑事」。
捜査課のボスがそう呼び始めた。
「おい、ナイーブ、ちょっと俺は外いってくる。
俺のメモ帖とか見るなよ」

ボスはそのままコートをはおり、でかけていった。
デスクにはメモ帖が残されている。

「ボスがああ言うってことは逆にメモ帖を見ろってことかも」

「ナイーブ刑事」はそう思い、デスクの上のボスのメモ帖を手に取った。
ページを開いてみる。

そこには

「不安の大きさは夢の大きさのことです」

と、書いてあった。

「ナイーブ刑事」は浮かんでくる涙をハンカチで押さえた。

「ボス、あなたについていきます」

彼の名前は「ナイーブ」刑事。
彼の名前は「ナイーブ刑事」。
捜査課のボスがそう呼び始めた。
「おい、ナイーブ、またくつのひもがほどけてるぞ。
いつもくつのひもがほどけているな」

そうかもしれない。
なぜか僕の靴のひもはほどけているのだ。
「ナイーブ刑事」は思う。

そう言えば、こんなことがあった。
高校生のとき、クラスでいじめられている女生徒がいた。
いつもいじめられている女生徒はクラスのはしにいた。

なぜか放課後で「ナイーブ刑事」とふたりきりになったことがある。
女生徒は彼に近づいてきて、ポケットのなかから「キャンディー」を差し出した。
「ナイーブ刑事」はそれを断って教室をでた。
思えばこの「キャンディー」が彼女の「SOS」だったのかもと思う。
次の日から彼女は登校拒否を続けるようになった。

今でもその「キャンディー」のことを思い出す。
確かに美人ではなかったし、べつにこれといって花のある子じゃなかった。

「でも今の僕なら君のよさを見つけだせるよ」

「ナイーブ刑事」自分のくつのひもを結び終えてつぶやく。
ボスが言う。
「何ひとりごと言ってるんだ」
「すいません」
「ほんとに小さなことでダメなやつだな」
「すいません」

彼の名前は「ナイーブ」刑事。
彼の名前は「ナイーブ刑事」。
捜査課のボスがそう呼び始めた。
「おい、ナイーブ、お前の誕生日過ぎちゃったな。
気がつかなくて悪かった」
「いいんですよ、別に」

誕生日の日、「ナイーブ」刑事がしたこと。
それは「鍵屋」にいったこと。

なぜ「鍵屋」?

それは「この世にひとつしかない鍵」をつくってもらいに行ったのだ。
つまり鍵屋のおじさんに「このギザギザのところを適当に切ってもらうことできませんかね? つまりどこの鍵穴にもあわないように、、、」とたずねた。
「そんな注文はじめてだな。変わっているね、兄ちゃん」
「いや、どこの鍵穴にもあわない鍵って素敵だな、と思って」
「そうか。ほらできた」

すぐにどこにも合わない鍵は完成した。
それが自分への誕生日プレゼント。

「ナイーブ刑事」は今日もその鍵を仕事前に見ようと思ってポケットから財布をとりだした。
財布の小銭入れに鍵はあるはずだ。

しかしそこには鍵がなかった。。。。
どうやらその鍵を落としたらしい。
「ナイーブ刑事」はため息を深くついた。

「俺って、、、だめだなあ」

今頃、どこの鍵穴にもあわない鍵はどこかの路上に落ちているんだろう。
誰かに拾われているか、それとも雑踏に踏まれているか。

それこそが自分の「心の鍵」のような気がしてきた。


心を開く鍵よ、どこへ???


彼の名前は「ナイーブ」刑事。