ささらさや 加納朋子 ★★☆
事故で夫を失ったサヤは赤ん坊のユウ坊と佐佐良の街へ移住する。そこでは不思議な事件が次々に起こる。けれど、その度に亡き夫が他人の姿を借りて助けに来るのだ。そんなサヤに、義姉がユウ坊を養子にしたいと圧力をかけてくる。そしてユウ坊が誘拐された!ゴーストの夫とサヤが永遠の別れを迎えるまでの愛しく切ない日々。連作ミステリ小説。
連作短編集ではあるが、ミステリとはちょっと違うような。
ミステリと期待して読むと肩透かしを食らうと思う。
どちらかというと、オカルトめいた感じも無くはないが、
基本的にはハートウォーミングな話なので、
暖かい話をさくっと読みたい時にはぴったりじゃないかと。
デミ・ムーアの出世作「ゴースト~ニューヨークの幻~」のような話で、
新しさはないけれど、
いらいらするくらい弱弱しい主人公の強くなっていく様や、
主人公を取り巻く個性的な人々がいい味出してる感じ。
ヤンママとサヤの友情は「下妻物語」の
ロリータちゃんとヤンキーちゃんを彷彿とさせるものもあるし、
おばあちゃんたちのキャラ設定もいい。
川上弘美の「センセイの鞄」のような、
淡々と流れるけれど暖かい話。
難点は、連作短編にしたこと。
そのまま長編にしてくれれば、先が気になって読み進めれるものを、
各章の終わり方が中途半端なせいで、
とまらないほどはまれなくって、
一編読んだだけで満足してしまう。
それと、主人公のキャラと、
心でどう思ってどう感じたかの説明が
噛みあってなくって、
サヤってこんなキャラだっけ?と
いちいち引いてしまうので、
ちょっと勿体無いかなぁと思った。
まぁそれでも、軽く読めるわりには、
ほろりと、くすりと、できる話なので、
通勤や、家事の合間なんかに息抜きとして読むにはいいかもしれない。